第503話 攻防


 第一塹壕線――水壕はほとんど突破されていた。

 落雷で一部損壊した壕に木板で即席の橋を架けるのは帝国の工兵だろうか。バネッサによる水の魔剣の妨害は無く、作業は短時間で完了し、歩兵部隊が進軍を開始していた。


 王国軍はその殆どを第二塹壕線まで退いているため、一度突破を許してしまうと手の施しようがない。バネッサを含める一部突出していた部隊が大慌てで下がっていく。そのための時間稼ぎは……、通りかかった俺がやるしかないようだ。


「うわぁ、遮蔽物のない見晴らし抜群の状況で帝国兵と相対するとか」


 心臓に悪いな。

 水壕を渡った部隊が次々と散開していく。


「行かせるかっ」


 俺が骨刀を投擲して指揮官クラスを潰してみせると、連中の注意は一気に俺に向いた。それはそうだろうなあ。足を止めて射撃姿勢。照準。


 だが、遅い。


「ヤツ」が俺の身体を操り、大量の骸骨兵スケルトンウォリアーを創り出して壁にした。銃弾は全て骨が受けてくれる。不死の兵はそのまま帝国兵に突撃した。

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