第500話 地獄
俺が手当たり次第に指揮官を殺戮している傍ら、俺の裡に巣食う「ヤツ」ことミラベル・アンクヤードと言う名の
(死霊術師は頑張るユーマを応援しよう)
何かのキャッチコピーのような台詞を吐きつつ「ヤツ」がやったのはいつも通りに、いや、いつも以上にタチの悪い所業だった。
俺の投擲している骨刀は言うまでもなくミラベル・アンクヤードの所有物だ。俺は借り受けているに過ぎない。だから「ヤツ」がその骨刀に何を仕掛けようとも止めることはできないのだ。
(刃に毒を塗布してやったぞ)
楽しげに言う。
毒。それも死霊術師の使う毒だ。
(死者をゾンビ化する毒よ。さあ、楽しいダンスの時間よな。踊れ、踊れ)
「……」
面倒なことに「ヤツ」は良かれと思ってやっている。俺に、王国側に利する行為をしてやっているつもりなのだ。
指揮官が突然死に、そいつがゾンビになり元・部下たちに襲い掛かり――
「あ。やっぱり感染するのか。ゾンビ化」
(それはそうじゃろ。醍醐味じゃからな)
――感染した兵士たちが来た道を引き返し、新たな犠牲者を求める。
もとより戦場は地獄みたいなものだが、その内側に更なる地獄が創り出されていた。
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