第463話 戦争の先行きは不透明


 退くことが許されない(であろう)帝国軍だったが、こちらの大水計に直撃されてついにというかようやくというか、その動きを止めた。


 最初の塹壕線をどうにか奪った矢先に横っ面をぶん殴られたのだから無理もない。塹壕線を押さえた兵力は壊滅し、塹壕そのものは水が満ちてそれこそほりのようになっている。


「帝国はこの後どう出ると考える?」


 完全に様変さまがわりした戦域を眺めるイグナイトの質疑に、


「足は止まると思ってましたが……、どうですかね。幾つか想定はありますけど」


 曖昧な回答をする。俺もこの先のリアクションは正確に予想できていないのだ。二発目の水攻めを嫌ってバネッサを潰しに行くか、塹壕線というか水壕の突破を優先するか、それとも他に策を講じるのか。


「どちらにせよ今日はもうこれで手仕舞いだと思いますよ。士気も下がり切ってるでしょうし。今のうちにバネッサさんを収容しましょう。第二塹壕線の防御を固めて待機でよろしいかと」

「受け身だな」

「陣に拠って戦う以上は受け身にならざるを得ませんよ」

「それはそうだが」

「主導権を渡さなければいいんですよ、イグナイト殿下」


 ビジネスも戦争も一緒だな、と思った。

 主導権を取った方が優位に立てる。

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