第327話 約束と秘密

「はい、というわけで」

「あの、エリザヴェート殿下」

「なんですか?」

「何故、私はここに居るのでしょうか」

「哲学的な質問ですわね」

「いえそうではなく」


 わたくしとノヴァは、今、私の居室にいるのでした。

 人払いはしており、部屋の中にはふたりきり。


「忘れたとは言わせませんよ、ノヴァ」

「は?」

「私が貴女から1本取ることができたら一緒におでかけ、でしたわよね」

「……え、ええと」

「未来永劫不可能とかなんとか」


 私、根に持つ方なのです。


「あの、しかし」

「まあノヴァは無理に来なくても構いません。私ひとりで行きますから」

「そっ、そういうわけには」

「心配してくださるのですか?」

「……一応は」

「ふふ、ありがとうございます。――ではまいりましょう」


 私は居室の抜け道へ繋がる壁をぐい、と押したのでした。王家の秘密なんですけれど、コレ。

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