第276話 商人は検証し、検討する

 帝国軍の使ってる銃。

 代価はたったの銀貨3枚。

 これはどういうことだ?


 ちらり、とジイさんの顔色を窺うが何も分からない。

 深く皺の刻まれた顔は笑っているような、全く笑っていないような。


 ただひとつは分かっているのは、アタシが――商人としての技量を試されているということだけだった。


「……手に取って見せてもらっても?」

「勿論かまわんよ」


 ジイさんは気軽に銃を渡してくれた。

 両手で受け取ってもズシリと重い。

 帝国兵はこんなものを持たされてるのか。

 女性兵士もいるらしいけど、アタシなら絶対ごめんだ。


 見様見真似で構えてみる。


 こいつから鉄だか鉛だかを火薬を使って撃ち出して、剣や槍じゃあどうしようもないような間合いから一方的に攻撃する。


「……数が無いと意味ないよな、この武器」

「ほう。何丁か買っていくかね?」

「そういう意味で言ったんじゃあねえよ!」


 長射程の攻撃は確かに有効だと思う。

 けれど、二発目を撃つにはどれだけかかる?

 一対一サシの勝負なら必中の間合いまで引き付ければ済むかもしれないけど、複数が相手だったらたとえ一人をたおしても次の奴が弾を込めてる間に接近してしまう。敵の武器の間合いまで詰められたら終わりだ。


「……ん? 弾込め?」

「どうかしたデスカ?」

「ああ、ちょっとな」


 アタシは半眼になってジイさんを睨みつけた。


「なあジイさん、この銃ちゃんと使いモンになるのか? ぶっ壊れた払い下げ品じゃあねえだろうな?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る