第184話 可愛らしい客引きと腹立たしいそれ
声をかけられた方を見れば、視界の下の方に小さな頭が。
十歳くらいの少女だった。
こちらを見上げて、頬を赤くしてわたわたしている。
おや可愛いらしい。
宿の客引きはあまり得意じゃないのかもしれない。
「まだ決まってないよ」
ちょっとした共感もあり、ついうっかり答えてしまった。俺も
ちなみに完全に余談だが、
「そうですか! 良かったらうちの宿はいかがで――痛っ!?」
少女は最後まで言葉を紡げなかった。
ガタイのいい、ガラの悪い若者が突き飛ばしたからだ。
「おっとぉ、悪いねオチビちゃん。小さすぎて視界に入らなかったわ」
「……っ」
「で、アンタは? 何か用か?」
「イカしたカッコの兄さんに宿の紹介さ」
イカしたカッコときた。
俺的にはまっとうな服装なのだが、スーツ&スーツケースは
「女の子を突き飛ばしてまで?」
「いやいや、視界に入らなかっただけで悪気はないんだぜ、兄さん」
誰がお前のお兄さんだ。
こいつの紹介する宿には泊まりたくな――いや待てよ?
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