第160話 恨みつらみと自制心の狭間

 俺は骸骨兵スケルトンウォリアーの視覚情報をカットして、自分の視界を取り戻し目を開くと、目の前にいる王国の第三王位継承権者に向かって告げた。


「というわけで俺は少し席を外す。ここで待っていてくれ。誰の目があるかもわからないからな」

「はい。わかりました」

「話の続きはあとでしよう。基本的には依頼を受ける方向で考えている」


 ほっとした表情のエリザヴェートとは裏腹に、ノヴァはしかめっ面だった。帝国兵に対する嫌悪感、いや、憎悪かこれは。負の感情がひしひしと伝わってくる。


「ユーマ殿! 私を連れて行ってくれないか――」

「ノヴァ、お前も待機だ。お前がエリザヴェートの傍を離れてどうすんだ」

「……っ」

「いいか? 今ここに王族がいるという事実を気取られないことが最優先だ。だから赤の勇者お前は自制してくれ」


 ノヴァは血が流れる程に拳を握り込んでいた。肩をわななかせ唇を噛む姿を見ると、無理を強いているな、とは思う。


「……承知した」


 ノヴァは低く抑えた声で頷いた。

 彼女の過去を考えるとよく聞き分けてくれたと思う。

 

「アイはここから骸骨兵の統制をしてくれ。殺さないように十分気を付けてな」

「かしこまりました、ユーマ様。どうかお気をつけて」

「大丈夫。戦闘する気はないよ。俺は平和主義者だからな」

「……」

「……」

「……」


 なんだお前ら、その変な顔は。

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