第21話 質問、回答、ついでに真相

 俺はナターシャに尋問、もとい質問をはじめた。


「まずはふもとの集落の規模について教えてくれ」


 ナターシャは少し考えてから、


「定住しているのはだいたい千人くらいですね。それ以外に行商人や冒険者がかなり頻繁に出入りしています」


 む? 村と思ったがちょっと規模がデカいか。 


「主な産業は?」

「農業、だと思います。後は商業」

「商業? 言っちゃ悪いがこんな辺鄙そうな田舎でか?」

「交通の要衝なんです。あの場所は、ちょうど三ヵ国の国境に隣接してるんですよね。おかげで冒険者向けの依頼も多いんです」

「成程ね。なかなか楽しそうな集落じゃないか」


 人の流れが多いということは宿泊需要も必ずあるはずだ。ウチが食い込む余地はありそうに思える。問題は競合だが――


「宿屋の数と質について把握してたら教えてくれ」

「数は四、五軒はあると思いますよ。質は、ええと、普通です」


 そのが分からんのだよなあ。

 異世界こっちの普通が俺は知りたい。


「普通の宿屋ってどんな感じだ? 部屋の広さは? ベッドは? 風呂は?」

「えっとですね……」


 たどたどしいナターシャの説明によると、部屋は狭い、ベッドは硬い、風呂は無い、ということらしい。なるほど、風呂は無いのか。それは明確な優位性アドバンテージだ。


「最後に、当ホテルウチの評判はどうかな? 何か聞いたことはあるか?」

骸骨スケルトンだらけの鬼畜ダンジョン、って言われてますよ。中に入るより前に骸骨に身ぐるみ剥がされて川に落とされるって評判です」

「うーん……」


 鬼畜ダンジョンか。

 最悪な評価だな。

 大体あってのが辛いところではあるけども。

 ――しかし噂が広まるのが早くないか?


「なんでもしばらく前に山に登っていく骸骨の大群をみた冒険者がいて、あとを追跡つけたらこの塔ダンジョンを見つけたっていう」


 骸骨の大群? ちょっと待てい。それって――


(おやまあ、アレを見られておったか。てへっ)


 ――やっぱりお前のせいか! てへ、じゃあないんだよ。まいったな。

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