第5話 全裸の隷従、現場の制服
獣の群れは撃退した、というか撃退してもらった。
とりあえず血塗れのアイにシャワーでもと思ったが水はどうなんだ? 流石に水道管は
だがまあいい。当面は足りなくなることもないだろう。幸い傍に川も流れていることだし水の問題はおいおい考えるとしよう。
俺は事務所の隣の休憩室のそのまた向こうにある当直仮眠室にアイを連れて行った。そこには小さな、本当に小さなシャワーブースがあるのだ。
「アイ、ちょっとそこでシャワーを浴びて血を落とせ。冷たいけど我慢しろよ」
「承知しました、ユーマ様。アイはシャワーを浴びます」
「ん」
「ところでシャワーとはなんですか、ユーマ様」
おっと、そこからか。
「ええとだなあ」
シャワーブースにアイを放り込み蛇口をひねるときちんと水が出た。よしよし。
「髪と体を洗うんだ。返り血を落として綺麗になれ」
「承知しました、ユーマ様。アイは綺麗になります」
「おう」
シャワーブースの戸を締めて、俺はそのまま更衣室に移動する。
アイに着せる服を見つけるためだ。
制服しかないのだが、この際仕方あるまい。
だが、5号の制服でもまだデカい。
アイの身長は140センチ程度。各部位の寸法もまあアレだ。
(ユーマの好みの体型に合う服は無いのか。残念じゃのう)
お前ちょっと黙ってろほんとに。
仕方ないので5号の制服を着せるしかない。シャツとベストを着せればいいだろう。ジャケットは無しだ。余った袖はアームバンドで詰めることに決めた。スラックスは絶対に裾上げをしなくてはいけないが、まあそれくらいのことは俺でもできる。
そんなことよりも問題は、
「下着がないんだよなあ」
(下着無しに服だけとか、ユーマもとんだ変態じゃな)
「だからホントに黙っててくれないか!?」
俺は耳まで赤くして「ヤツ」を怒鳴りつけた。
幸いバスタオルは山ほどあるので、制服と一緒にシャワーブースまで持っていく。
「アイ、そろそろいいか。あー、そのまま出てくるな。まずこのタオルで体を拭くんだ」
「承知しました、ユーマ様」
「そしたら体にタオルを巻き付けてから出てこい」
「承知しました、ユーマ様」
「じゃあ、コレを着てくれ。下着は今はない。そのうち用意するから我慢してくれ」
「承知しました、ユーマ様」
俺はアイの返事を聞いてくるりと背を向けた。「ヤツ」が作り出したモノだとは言え、女の子には変わりない。全裸着替えを観覧するわけにはいかない。
(自身の所有する疑似生命相手になんとも義理堅いことじゃな、ユーマよ。見たいくせに。このこの)
やかましいわ! こいつは今後おはようからおやすみまずっと余計なことを言ってくるんだろうか……。
「着衣完了しました。ユーマ様」
「ん。いいんじゃないか。裾上げはしてやるから」
ひとまずこれで目の遣り場に困ることはなくなったな。
――異世界生活初日、俺は従順なフロントスタッフを採用できた。
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