人ごみが嫌いなら「人がゴミのようだ」と思えばいいじゃない

平中なごん

Ⅰ 人ごみ恐怖症

 僕は人ごみが嫌いだ。


 通勤通学の電車、ラッシュ時のターミナル駅、休日の観光地、スクランブル交差点……すべてが近寄り難い最悪の場所である。


 普段は極力近寄ることすら避けているが、やむなく足を向けねばならない時はあまりの人ごみに、まるで悪酒にでも酔ったかのように強い目眩がしてその場に倒れてしまいそうになる。


 そこまで人ごみが嫌い…というより、一種、アレルギー的な症状すら持っている僕であるが、ある日、突然にも大転換期を迎えることとなった。


 それは、大袈裟ではなく、まさに仏陀が悟りを開いたような、あるいは預言者が天啓を受けたかのような衝撃的瞬間であった。


 ことの始まりは、某金曜日夜のロードショーで、某天空に浮かぶ伝説の城を少年少女が探しに行くアニメーション映画をなんとはなしに見ていた時のことである――。

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