レジーナ・アルファン

 火あぶりの刑に処される事になった、シスターアルフィリーナ。


「ちょ、ちょっと待ってください! なんで私が火あぶりにされないといけないんですか! 熱いどころじゃないです、そんな事されたら死にますよ! やめてええええ!」


 そんなシスターを、笑いながらノリで足元に火をつけようとする兵士達に、足でシッシッ! とやるシスター。


 しかし、処刑台に縛りつけられている姿も美しく、可愛らしかった。


「黙れ! 回復魔法が使えない偽物め! 貴様、隣国りんごくのスパイであろう!」


「違いますってばぁ!」


 今朝方けさがた、村の先にあるお城の王様が、修道院に使いの者をよこし、気がつくと流れで処刑台にしばられたという感じだった。


 現在、王様は不在で、変わりに王女様が立ち合いをしているのだが、近くの兵士達がやれ『偽物』だのと、いろいろ言ってきて非常にうるさい。


「王女様なんかより、シスター様の方が数倍美しいぞ! 離してやれよ!」

「そうだそうだ! 王女様なんかより、シスター様の方が数倍可愛らしいぞ!」


「黙れ! 愚民ぐみんどもがぁぁあああ!」


 王女がキレた。


「燃やせ!」

「やめてぇ!」

「やめろ!」


 ずっとこんな感じで茶番が続いていた。


「コホン……国民達よ」


「さっきは愚民ぐみんじゃなかったか?」

「そうだそうだ! ひどいぞ王女様!」


「黙れ! ……シスターアルフィリーナよ、貴様の罪状ざいじょうを告げる」


 王女様は部下より巻物を受け取り、威厳いげんを持った声で読み上げた。


なんじアルフィリーナは、シスターとして赴任ふにんして来たが、実戦の最中さなか、回復魔法が使えない偽物である事が発覚。また、オーク軍団の襲撃しゅうげきに対し、秘密裏ひみつりに手引きを行った可能性がある為、隣国りんごくのスパイとして容疑がかかっているわけだ」


「私はシスターですけど頑張っても回復魔法が使えないだけなんです! 襲撃しゅうげきしてきたオークキングだって倒したじゃないですかぁ! わあああああん!」


「ふむ、たしかにオークキングを素手で殴り殺したという話も聞いている。到底とうてい信じられる話ではないが、まぁとどめを刺しただけの可能性もあるし信じるとしよう」


「ほっ……」


「しかしだ、私は回復魔法が使えないシスターなど聞いた事がない! どんな者でも神聖魔法の儀式を行えば使えるようになるし、儀式を行わなければその修道衣しゅうどういは手に入らない、見ればだぶだぶでサイズすらあっておらんではないか! 偽物だと思われてもしょうがなかろう!」


「違いますっ! これは体形の問題で、サイズに合うのがなかったんです! 回復魔法だって儀式を行ったのに何も起こらないし……えぐえぐ」


 すがるように見つめるアルフィリーナは、しくしくと上目遣うわめづかいで王女に訴えかける。その姿はとにかく可愛らしかった。


「ああ! もぅ! 分かったから!」


 泣き出すアルフィリーナがあまりにも可愛らしいので、なんか可哀想かわいそうになってきた王女様は、あきれた顔で部下に解放の合図を送る。


「私とて悪魔ではない、人を見る目はある方だしそなたの目はうそを言っていないのが分かる。私はただ父上が言っていた話だけを信じて行動していたのだ! 悪かったな!」


「王女様……」


「ただし、この村に滞在たいざいするにあたって、きちんと冒険者ギルドに登録をし、毎月税金をおさめる義務だけはしっかりと果たしてもらうからな! ふんっ!」


 この王女、ツンデレである。


 開放されたアルフィリーナは、ギルドホールに運ばれ、数人の兵士にペイッと投げ捨てられる事となった。


「イタタタタ……」


「シスターアルフィリーナ! レジーナアルファン第一王女の許しにより、村の滞在は許可するが、早急に神職のクエストを達成し、報告しにくるように!さもないと火あぶりはまぬかれんからな!」


「は、はいっ!」


 帰って行く兵士たちを見送ると、あかんべーをするアルフィリーナ。

 ずれた丸眼鏡をかけ直すと、勇気を振り絞ってギルドホールに入ったのだった。



――リファールアルグレオ村ギルドホール



 早速入ったギルドホール内では、わいわいとにぎやかな雰囲気がただよう。

 戦士達の間で戦闘が行われていたり、それが賭け事の対象になっていたり、周りにはお酒を浴びるように飲む人たちでにぎわっていたりする。


 建物自体、武闘場を中心にテーブルが集まり、酒場と直結しているため、クエストのついでに飲み食いをし、娯楽を楽しむ事ができる造りになっているようだ。


「うわー! 木刀と言っても怪我人けがにんとかでちゃいますよ……それになんかみなさん怖そう……」


 冒険者はいつでも血気盛けっきさかんなのである。


 受け付け担当のお姉さん達も暇なのか、試合を見ながら盛り上がっていた。


「あ、あのー、この村に赴任ふにんしてきたのですが、手続きをお願いしても良いですか?」


「あら、可愛らしいお嬢ちゃんね、シスターさんかな? 『神職しんしょく』で登録しちゃっても良いのかしら?」


 『聖職者せいしょくしゃ』という職業は、冒険者の間では『神職しんしょく』という名称になる珍しい職業だ。


「はい、お願いします、回復魔法が使えないので『神職しんしょく』と言っていいのか分かりませんけど……」


「なるほど、回復魔法が使えないシスターちゃんかぁ……それで、特出している能力とか得意なスキルとかはないの?」


「薬の調合ができます! あとは、えっとえっと……」


 炊事、洗濯など、思いつく限りの特技を上げていった


「それはすごいわね、登録しておいたから、頑張ってね!」


「はいっ! ありがとうございます!」


 アルフィリーナは、魔法で撮影された顔写真入りの、可愛い証明書を受け取った。


「これで、晴れて私もこの村の一員ですね!」


「ふふふ、それはどうかしらね? まだギルドに登録しただけでクエストも受けてないでしょう? 聞いたよー、なんでもクエストをクリアーしないと火あぶりにされちゃうとか」


「そ! そうなんですよ! 何か簡単なクエストはないですか?」


「うーん、神職で単発のクエスト自体が少ないからねー、大体どこかの冒険者に混ざって回復魔法をかけるのが前提だから、受けられるクエストもダンジョンに潜るのばっかりね」


「そうなんですか……私、怖いのは嫌です」


 アルフィリーナには勇者としての力が備わっているのだが、残念ながら性格は至って臆病おくびょう。以前夜中に現れたスケルトンが、素手で殴り倒しても復活してきて、泣きながら粉々に粉砕ふんさいしたのがトラウマだったりする。


「うーん、どのみち回復魔法が使えないとなると、神職しんしょくのクエストは達成出来ないわよ、なまけないように『何回パーティーを補佐した』って言う項目があるし……」


 これはさすがにんだか? ……


 (ん? 補佐した?)


「例えば私が敵を倒しても、補佐した事になるんですか?」


「あはは、そうね補佐に入るわよ、でも神職しんしょくさんに敵は倒せないわよ、ダンジョンの敵は強いのよ?」


「でも、私回復魔法が使えないし……火あぶりにされちゃうの嫌ですよぉ」


「そうかぁ、じゃあ簡単なクエストを用意するからマッチングするまでテーブルに掛けて待っててね」


 言われたとおりテーブルに腰を掛けて待つ、周りの冒険者達はどんどんクエストに出ていくが、自分だけ呼ばれない。


 名前:アルフィリーナ

 職業:神職

(ただし回復魔法は使えません)

 

「こんな募集じゃ誰も来ないよぅ」


 いよいよ待合室には誰もいなくなってしまった。

 結局待ち続けたあげく、本日の受け付け終了時間が来てしまったのだった。


 受け付けのお姉さんは、目の前にジュースを置くと。


「まぁ、気を落とさないで、明日があるんだから頑張って!」


 と、なぐさめるような態度で接してくれた。



――翌日



「あの子まだいるよ、なんか可哀想かわいそうじゃない? パーティーに入れてあげようよ!」

「ダメだよ、ただでさえ報酬も経験値も少ないのに、人を増やしたら配分がさらにキツくなる、ましてや回復魔法が使えない神職しんしょくだぜ? いらないよ!」

「しっ! 聞こえるって!」


 はい、聞こえてます……


 昨日より気にかける人は増えて、中には声を掛けてくれる人もいたが、その全てがただのナンパだった。


「約束の日まで後一日だよ、私、火あぶりは嫌だよぅ……」


 全てに絶望していた時だった。


 バンッ!


 メイド服をきて仮面をした女性が勢いよく入ってきた。腰には小太刀が二刀、ものすごく長い日本刀が一本、サラサラの黒い長髪が床に届かんばかり、ものすごく綺麗きれいな人だった。


「緊急でドラゴンのクエストが入ったというのは本当か!」


 やたら急いでクエスト受注をすませていた。


「ドラゴンというか、少し凶暴なベビードラゴンですね。一体が群れから、はぐれたらしくてそこの山に現れたらしいんです、そんなに慌てるほどでは……むぐ!」


 女性は受け付け嬢の口を慌ててふさぐ。


「そうなのか! あー大変だ、困った! ドラゴンなんて私一人で倒せるものだろうか! いや、きっと無理だろうな! こんな時、誰でもいいから補佐してくれるような『神職しんしょく』様はいないだろうか、やたら強い気が狂ったようなハードパンチャーでもかまわんぞ?」


(それはもはや神職しんしょくじゃなくても良いのでは……)


「あの……」


「おお、神職様がいるではないか!」


(あ、しまった……思わず声をかけちゃった……)


「でも私、回復魔法が使えないんです……やっ! やっぱりいいです! すいませんでしたっ!」


 女性はキッとアルフィリーナをにらみつける。


「そなたはドラゴンの恐ろしさを知らんのか! 村中の者が死んでしまうかもしれんのだぞ! 回復魔法が使えない程度であっさりと諦めてしまうのか! そなたは神に仕え厳しい修行を耐え抜き、今まで頑張ってきた『聖職者せいしょくしゃ』様なのではないのか?」


うやまう意味の強い『聖職者せいしょくしゃ』という言葉が耳に痛い……)


「だって……私、私わぁ……」


 アルフィリーナは自分の存在が恥ずかしくなり、涙が止まらない。


(だって私は、神にすら見捨てられた存在……)


「くっ……!」


(このシスターは、この私がこれだけのチャンスを与えてやっているというのに、クエストをこなさず火あぶりを選ぶ愚か者なのか! 強者つわものとしてのプライドはないのか! 私は兵士に聞いたのだ……このアルフィリーナというシスターは、回復魔法こそ使えないが、光り輝くなにかを! 村の皆を薬で救いオークキングまで片腕でふっとばすほどのなにかを! そんな素晴らしいなにかを持つ『聖職者せいしょくしゃ』だと言うことを! そんな者が何をそんなにおびえているのだ!)


 我慢がまんの出来なくなった女性は仮面をはずす、そこには想像通り、第一王女レジーナアルファンの姿があった。


「第一貴様は、何をいつもオドオドしているのだ! オークキングを倒した程の者が、初期のクエストも完遂かんすい出来ないわけがなかろう! 私は貴様が一人ででもクエストにいどみ、いつ私に報告しに来るのかと楽しみに待っていたというのに、見損みそこなったぞ!」


「でも……でもぉ……」


 思わずアルフィリーナは泣き出してしまう


(私回復魔法なんて使えない……それは今まで何度も何度も何度も絶望した事実)


「私はどうしたら……良いんですか?…… 初心者のパーティーにだって入れてもらえない、誰にも必要とされない存在で……それは今までずっと言われ続けていて……それでもずっとここで耐え抜いて……回復魔法も使えないのに、いきなりドラゴン討伐の上級クエストに参加させてくださいなんて……そんな都合の良い事が出会ったばかりの人に言えるわけがないじゃないですかぁ!」


 レジーナはさっした。

神職しんしょくとしてクエストを全うしなければ』という所にとらわれているアルフィリーナ。

 それに対し『お前は強いんだから敵を倒せ』という事を前提ぜんていに話をしていたレジーナ。


 別にオークキングを倒した時のように、モンスター討伐をすれば良いと勝手に思っていたレジーナは、自分の想像だけでこの可愛いシスターを絶望の闇に追いやってしまっていたのだ。


 良かれと思って軽率けいそつな行動を取ったが、私のせいで、この可愛いシスターを窮地きゅうちに追い込み泣かせてしまった、それが何よりも許せない。自分が意図いとせずこの子をいじめていた事に今やっと気づいたのだった。


 レジーナはアルフィリーナを抱きしめ、泣きながら頭をでる。


「私のせいで、寂しい思いをさせてしまったか……すまぬな、私はただそなた程の者が才能を隠し『回復魔法が使えないんですー』とか言っている姿を見ていられなかっただけなのだ! 嫌ならクエストは受けなくて良い、報告もいらん! ただ貴様にめられた力の一端いったんを少しでも良いから見てみたかっただけなのだ、許してくれっ!……本当にすまぬっ!」


「王女様……」


 アルファン国第一王女レジーナ・アルファンは震えていた、嗚咽おえつすらしていた。アルフィリーナに対する期待はそれほど大きなものだったのだ。


「邪魔して悪かったな、私も少しだけ普通の女の子として、友達が欲しかっただけなのかもしれない。まぁ、私と遊んでくれるような物好きも、よく考えたらいるわけもないだろうしな……そんな馬鹿王女の我が儘わがままに付き合わせて悪かった」


 レジーナは単純にアルフィリーナに興味を持ち、どんな強い子なんだろう、友達になってくれないかなと、わくわくしていただけなのだ。


 アルフィリーナは嬉しかった。


 今までこんなにストレートに自分の気持ちをぶつけてくれる人と会った事がない。ましてや友達だなんて言われて喜ばずにいられるわけがない。


 ずっと『いらない子』としてしいたげられていた寂しい孤独の人生だったから。


「……やります……私やります! 正直……何が出来るかは分かりませんけど 王女様の期待に応えられるかは分かりませんけど……でもっ! 王女様は初めて私に優しい言葉を掛けてくれた! さげすまれて育った私の初めてのお友達だからっ!」


「私を……友と呼んでくれるのか? あれだけひどいことをしたというのに……」


 二人はひしと抱き合った。


 二人の泣きわめく声がギルドホールにこだまする、美しい友情の芽生めばえであった。


「あのー、早く行かないとクエスト時間終了しちゃいますよ?」


 受け付け嬢は、抱き合って泣いている二人を、恥ずかしそうにいさめるのであった。



――アルファン王国領山岳地帯



 神速で走り抜ける二人の影。


「職業暗殺者の私に、なかなかぴったりとついてくるではないか、見直したぞ?」


「暗殺者が王女様をやっているなんてすごいですね……」


 この村大丈夫なのか? と不安になった。


「まぁ……昔色々あってな……それより、この先モンスターが多数いて、私一人ではきびしいのだが、準備はいいか?」


「はいっ!」


 二人はモンスターの群れに突っ込む。


「我が宝刀武御雷たけみかづちは、二本で一対の神殺し! 貴様きさまらまとめて切りきざんでくれるわ!」


 小太刀を二刀逆手に構えると、レジーナは走る速度を落とすことなく、舞うようにモンスターを殲滅させていく、その速さ疾風しっぷうごとし。


「えっと、えっと! ロケットぱーんち!」


 レジーナに負けじと適当に付けた名称ながらも、アルフィリーナはモンスターを一体、二人の進行方向へ吹っ飛ばし、モーゼの十戒じゅっかいごとく道を開ける、吹っ飛んだモンスターが高速でレジーナの横を通り抜けて行ったのをみてレジーナは鳥肌がたった。


「ははははは! やるではないか、アルフィリーナ! さぁ、もうすぐドラゴンに到着するぞ!」


「はいっ! めちゃくちゃにやっつけちゃいましょう!」


 二人はベビードラゴンの元へたどり着き、じわじわとその間合いを詰めていった。



…………



――リファールアルグレオ村ギルドホール内



 戦いを終えた二人は、ギルドホール内のテーブルに豪華料理を並べ、乾杯していた。


「あっはっは! まさかあそこで本物のドラゴンが現れるとは思わなかったぞ! 私一人ではやられていたかもしれんな! あっはっは!」


「鋼鉄のような硬さのドラゴンの皮膚ひふを、なますのように切り刻んでいましたよ?

 レジーナさんもすごいですけどその刀もすごいですねー!」


「いやー! そなたの強さも見てて鳥肌ものだったぞ! さすがに尻尾をつかんでり回していた時は私も近寄れなかったしな!」


 ギルドホールでは二人の美しい冒険者がドラゴン討伐とうばつをやってのけたと話題になっていた。


「さて、面白い趣向しゅこうだった、私はまたしばらく王女として国政こくせいまかされる事になるが、今日のことは決して忘れないであろう」


 レジーナは膝を付き、アルフィリーナにこうべをたれた。


「改めて、ようこそアルファン王国並びにリファールアルグレオへ『聖職者せいしょくしゃ』いや『勇者』アルフィリーナ殿よ」


「へっ? 『勇者』?」


「今後もこの王国にとどまり、平和に一役ひとやく買っていただけるとありがたい、なぁに、そなたの強さは私だけの中にとどめておくとしよう、まさかシスターが『伝説の勇者』だったなんて、誰も信じないだろうけどな! あっはっは!」


「ちょ! ちょっと待ってください! 私が勇者って!」


「……そうか自覚じかくはないのだな、そなたのオーラは青白い、それはかつて伝説の勇者がまとっていたオーラの色だ。私は金色のオーラまでが限界だったからわかる、そなたは強かったよ」


 アルフィリーナはよく分からずに、きょとんとしていた。


「ふっ、いつかそなた自身でわかる時が来るであろう、それまでは『回復魔法が使えないシスター様』で良いのではないかな?」


「……そうですね」


「ではひとまずさらばだ、達者たっしゃで暮らすが良い、が友アルフィリーナ」


 バイバイと手をると、レジーナはお城へ去っていった。


「レジーナさん、いろいろとありがとうございます……」


 今までこんなに楽しく、こんなに充実じゅうじつした一日があっただろうか……新しい友達レジーナアルファン、しかも王女様である彼女とドラゴンを倒して喜びのハイタッチまでできた。


 思えばレジーナ姫も、王族がゆえに孤独。

 アルフィリーナと一緒の寂しい気持ちだったのではないか? 子供のようにはしゃぐレジーナ姫の姿が思い返される。


「ありがとうございます、レジーナさん」


 アルフィリーナは綺麗きれいに輝く夜空の星を見つめ、夜の静寂せいじゃくの中、この出会いを神に感謝した。



 次の日。



 アルフィリーナは火あぶりの刑に処される事になった。


「ちょ! ちょ! 待ってください!」


「黙れ、回復魔法の使えないシスター!」


 今日は国王陛下が直接指揮を取っていた。


 横でレジーナはクスクスとおなかをかかえて笑っている。


「あはははは! ねぇ、王様、もう許してあげましょうよ? ねっ?」


「そうか? しょうがないなあ、レジーナちゃんが言うなら王様許しちゃおう」


 かくして、アルフィリーナは無事に難を逃れ、村の一員として認められたのであった。


「火あぶりなんて、納得できませーーん!わあああああん!」


 何も知らないアルフィリーナの声が、ただただ空に響いていたのであった。

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