第15話 楽するための苦労その名は”自動化”

 ガムちゃんとの情報交換を終えた私は、ライン構築に戻ることにした。家から出て採掘機があるところまで歩いて行く。


 そういえば、ガムちゃんの能力強化はスーツを着ている私には影響がなかった。初めて私が手に取ったときに、わめき散らしてたのは強化の魔力を受け付けなくて驚いていたからだった。


 魔法を受けそこねていたと思うとちょっぴり残念だけど、わけのわからないものが体に入るとか怖すぎるのでやめておこう。もしかしたら魔力に麻薬のような作用があり私が狂ってしまったら、殺戮の限りを尽くしたり貴金属を生成するためにプラネットバスターで星を爆発させてしまうかもしれない。


 最悪の想像に身震いしていたら採掘機の前にたどり着いていた。


 さてさて、またライン構築ですよ。まずは採掘機とリファイナリーの間に仕分け機能を追加するよ!


 仕分けをするのはルーターと呼ばれる装置です。この機械は白い四角柱で搬入面にコンベア接続口が縦に4つあり逆側には搬出口が4つある。今回は石資源、土資源、金属資源とかなり大雑把に分けるので搬出に3面、搬入1面の計4面しか使わないけどね。


 採掘機の方に搬入面を向けて配置する。ビルダーでホログラムを出して決定ボタンを押す。


「ん? ああそうだったね」


 《資源が足りません》と音声案内が流れ、昨日アセンブラを作ったときに鉄を使い切っていたのを思い出した。

 金属資源をリファイナリーに通して精錬し鉄を増やさないとコンベアすら引けないや。


 弾丸を作ったときと同じようにコンテナに赤茶色の鉱石を出してリファイナリーに入れていく。石とは違いインゴット一本分が貯まるまで保留として内部の圧縮コンテナに備蓄している。


「やっぱり鉄が多いね。他は銅が少量に亜鉛が微量か……」


 アルミニウムが欲しかったけど、うまくは行かないねぇ……。でも銅と亜鉛が出たからもしかしたら熱水鉱床が近くあるのかも? このまま採掘していれば金や銀もあるかもしれないね。

 とにかく一番使うのは鉄なのでとりあえずは良しとしよう。出来上がったインゴットをバックパックに収納する。インゴットなので資源を直接分解しながら収納するよりナノドローンの消費がかなり少なくて済んだ。


「ナノドローンが無くなる前に生産機をどうにかしないとなぁ」


 緑色の眩しいキューブを思い浮かべながら、ゴブリンが撃退できてもまだ安心するには早かったと気合を入れ直す。


 精錬作業を続けながら待ち時間に建設の準備をしておく。ビルダーにはブループリントモードというものが搭載されていて、ホログラムで必要な機械を複数仮配置できる機能です。それを使い必要な施設を仮設置していく。


 採掘機からルーターをコンベアでつなぎ、そこから3面の排出先に圧縮コンテナを設置する。下から金属資源、石資源、土資源に振り分けた。本当はコンベアを無駄にはさみ、搬入されたものが移動するところを見たいけど、資材不足で泣く泣く諦めて、直接搬入できるように隙間なく配置した。

 ルーターは角柱に立方体が3個くっついたような形になった。最上段は今の所使う予定がないのでそのままにしておく。


 本来なら全て処理したいところだが今は資材が足りないので、いまは金属だけを処理して後は貯めておくことにする。金属の入ったコンテナからリファイナリーにコンベアを設置し、リファイナリーの後ろに精錬済み金属用のコンテナを設置したらとりあえず金属生産ラインは完成です。


 しばらく人力で輸送作業をしたら資材が集まったので金属生産ラインを自動化した。作業が楽になった!と思ったんだけど土資源コンテナがすぐに一杯になりそうなので、残土処理の方法も考えなくてはいけない。


 あっ油断してたら発電用の木材も少なくなってきた! あーもう!次から次へとToDoリストが増えていくよ!


 愚痴ったところで、出来ることからやっていくしか無いので次は弾丸生産ラインの自動化に着手する。ビルダーのブループリント機能でリファイナリーをもう一段追加した。リファイナリーは、積み重なるように設計してあるので安定性も抜群だね。後は弾丸製造用のアセンブラとコンベアで繋いで終わりだね。


 製造が終わった弾丸はコンベアをルーターで4分岐させて各セントリーガンへと接続する……。


「私はなんで家の上なんてところにセントリーガンを配置したんだ……」


 昨日は焦っていて気にならなかったけど、位置を変更する必要がありそうね……。とりあえず今回は不格好だけど家の壁をコンベアの足場にして無理やり接続した。設置し終わったらToDoリストにセントリーガンの配置し直しを追加した。


 ブループリント設置が終わったので、後は適当に木を運びながら資材が貯まるのを待つだけだ。



 ドラゴンが押し倒した倒木をほとんど集めきった頃にようやく資材が溜まった。すっかり夜になってしまった。弾丸製造の自動化ライン構築に必要な資材をバックパックに入れていざ建設!

 ビルダーのトリーガーを引くとナノドローンがバックパックから素材を掴んで飛び立ち下部から構築していく。一度に大量の施設を設置したので結構時間がかかった。


「よーし!弾丸製造ラインの自動化完了! これで襲撃が来ても安心だね!」


 両腕を上げて背筋を伸ばしながら喜びを表現した。問題は山積みだけど、始めの難関は過ぎたかな?


「さてと!ちょっと休もうかな~」


 動き始めたラインをぼーっと眺めることにする。


 黒いカニのような姿の採掘ドローンが地面の穴からひょっこりと現れる。そして黒い六角柱の採掘機の中に入り荷物をおろして、また穴へと戻っていく。

 降ろした荷物はベルトコンベアに乗って白い角柱のルータへと吸い込まれていく。残念ながら中は見えないが、隣に積み重なった立方体の圧縮コンテナへ仕分けされ格納されていく。

 一番下のコンテナからは時々ベルトコンベアに赤茶色い鉱石が流れていき、その上の段では石が常に流れている。未だに採掘物は金属が少なく石だらけのようだ。

 コンテナから送り出された資源は白い平べったい円柱のリファイナリーを通り精錬されていく。2段めのコンベアにブロック状の石材が絶え間なく流れる。そのコンベアは金属資源コンテナの上を通り過ぎると緩やかに下り、地面にあるガラスのドームがあるアセンブラへと吸い込まれていく。

 アセンブラの内部ではロボットアームがせわしなく動き弾丸を下部から組み上げていく。

 あっという間に製造された弾薬箱はコンベアに乗りルータに入り4つのセントリーガン行のコンベアラインに均等に振り分けられる。

 今回は家の屋根の上に続くコンベアラインにいったようだ。それを目で追っていくと何の問題もなくセントリーガンへと供給された。


 しばらく眺めて弾薬箱が均等に供給されているのを確認した。


「どうやら問題なさそうね」


 構築したラインが正常稼働しているので、次になにをすべきかToDoリストを眺めることにした。


---ToDoリスト---

・ナノドローン生産機のベース基地作成

・木材採取の自動化

・魔石採取の自動化

・採掘機のドローン増員

・残土処理

・セントリーガンの再配置


 リストを見ていた私は、ハッとした! ナノドローンのベースも大事だけどナノドローンの材料も必要だった!


 ナノドローンの材料になるのは[フローティングパウダー」という物質です。FPフローティングパウダーとは、重力を無効化する働きがある物質で、ナノドローンはもちろん宇宙船の船体を軽くする[FP装甲]などに使われるもので、とにかくいろいろなところで使用する物質なんだ。


そしてフローティングパウダーの材料になるのが……。


「ゴールド……すなわち金なんだよねぇ……。これは企業製品のアンロックなんて夢のまた夢だね……」


 まとまった金を手に入れる手段が思い浮かばなかった私は、ティエルに相談しに家の中へと帰っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る