宇宙船が不時着したのは、ファンタジーな星でした!

タハノア

序章

第1話 セントリーガン、ファイア!

「待って待って! わたしが悪かったって! ウヒィ!」


 ここは人が寄り付かないドラゴンの巣と呼ばれる山の麓。


 ある女性がドラゴンに追われている。


 所々に立っている白い壁の影に入りブレスを回避しながら走っている。彼女は驚くことに空を飛ぶドラゴンとほぼ同じスピードで地面を走り逃げていく。


 そのスピードの秘密は、彼女が着込んでいる[メカニックスーツ]と呼ばれる作業員用のスーツだ。


 頭部は二つあるカメラレンズが目のよう見えるフルフェイス。ガントレットとブーツは大きめで、デフォルメキャラのようだ。胸部はカップに沿った女性らしさを全面に押し出したアーマー。その他の腰、お尻、太ももはラインがわかるピッチリとした素材で、可愛らしさの中にもセクシーさがある。色はピンクをベースに白のワンポイント。


 しかし筒型のヒップバックだけ違和感がある。オレンジ色をベースに黄色と黒の縞模様がありまるで工事現場のようなデザインだ。


「ホラホラこっちだよ!」


 どうやら彼女はただ逃げているだけではなくどこかに誘導しているようだ。その誘導先は森を切り開いた広場だ。彼女は広場を走り抜け奥にある石造りのドームに逃げ込んだ。


「ミカニ選手、いま一着でゴールしました!」


 ドラゴンを誘導し終えたこのメカニックスーツ姿の少女の名はミカニ。


『マスターよくできました。セントリーガン、オンライン! 射程圏内に捉えました』


 ミカニの声とは違う女性の声が聞こえてきた。


 その声の正体は、サポートAIであるティエルだ。クラゲのような姿の機械でフヨフヨと空中に浮いている。体の部分は球を一部切り取ったような形で足の部分は接続用のコードがプラプラとしている。


 どうやら彼女は石のドームの中で待機していたようだ。


「セントリーガン、ファイア!」


 ミカニの掛け声で待機していたセントリーガン四機が唸り声を上げ始める。


 ドルルルルルルル! という独特な音を出しながら弾丸をばらまき始めた。


 銃身が四本あるガトリングタイプのセントリーガンは毎分三千発の弾丸を発射する。銃身から飛び出した弾丸はミニカを追いかけていたドラゴンに命中する。照準はオートで行われ四機でドラゴンの体にまんべんなく撃ち込んでいる。


 グルウアアアア!


 銃弾を受けたドラゴンはその圧力に思わず身をよじる。硬い鱗は貫けていないが、体の内部にかなりのダメージを与えているようだ。


「ありゃ~、貫通しなかったか~」

『やはり石の弾丸では威力不足ですね』


 金属が足りなかったので現在撃ち込んでいるのは石で作った弾丸だ。

 

 なぜ金属が足りないのかというと……。


 ミカニはこの星に不時着した”宇宙人”だからであった。

 

 事は、ドラゴンと銃撃戦を繰り広げる一日前に遡る……。

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