色欲
たいき
第1話 色
何時からだったろうか、何も視えなくなったのは。
実際に目が視えなくなった訳じゃない。物や輪郭、風景等は見ることができる。視力検査では、今まで2.0以上をマークしており、眼鏡の世話になったことは無い。
しかし、人間にとって大事なあるものが視えなくなった。
――色だ。
自分は白黒テレビを毎日見ているのに対し、他の人は毎日カラーテレビを見ている。自分が鉛筆でデッサンしているのに対し、他の人は絵の具でデッサンをしている。
色とはとても重要な役割をしている。明るい、暗い......
感覚を推し量るにも重要なものである。冷たそう、温かそう......
感情でさえ色を使って表したりできる。
また、自分の世界を色で例えることもある。自分の大切な人やもののことを。
色があることによって、人は広がりをみせる。
それは、白黒テレビからカラーになり、人がよりテレビに夢中になったように。絵に色を付け足すことでより、繊細で美しいものになったように。
それだけ色というものは人にとって様々な用途があり、人にとって欠かせないものである。
それがある日突然、見えなくなったらどうなるのか――
カラーテレビが白黒になったとき、絵に色を塗る道具が無くなったとき、それを耐えることはできるのか。色という世界を知っていただけに、色という世界が消えてしまった場合に、人はそれに耐えられるのか。
欲を捨てようと修行をするお坊さんや、もし仮に仙人なるものがいるならば、耐えることはできるのかもしれない。しかし、世間一般の人がそれに耐えられるのかと問われれば否、と答えるだろう。
これはある時、色を奪われ、色を失った人物の物語である。
色を失った人物ははたしてどのようなことを感じ、考え、行動するのか――
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