もう一人の少女(2)
その日の夜になると、話は例の件で持ちきりになった。
ある者は戦場での集団幻覚と主張し、またある者は敵の化学兵器のせいだと言い、はたまた本物の魔女であると言い張る者もいた。
ただアレンは真実を知っていた。戦場に現れた銀髪の少女の正体は____
「おそらくアリウムの姉か妹と言ったところだろうな」
アレンが思ったことを先に少佐が言った。
「先ほどティム・レイ兵長が帰還し、例の少女の情報を持ち帰ったそうだ。これから明らかになるが私たちの想像と大差ないだろう」
彼は懐から煙草を一本取り出し、吸い始めた。
「やっかいなことになったな」
「ええ。しかし何で相手の軍にそんな少女が……」
「さあな。ただ一つ言えるのは奴らが彼女たちに大きく関わっているといったところだな」
煙草はすぐに灰となって消えた。
「まあなんにせよ、君は彼女の近くにいてやってくれ。あれからバタバタしてしまったし、それに彼女は君を一番信用しているだろうしさ」
「そうですかね……」
アレンは自信なさげに答えた。
「間違いねえさ」
そう言い、少佐は二本目の煙草を取り出す。
「俺はこれからまた会議がある。何か分かったら君にまた伝えるとするよ。それじゃ」
彼はそう言って煙を吹きながら何処かへ向かっていった。
アレンが自室に戻るとアリウムがいた。
「待たせてすまない」
彼女は少佐の部屋から持ち出したであろう本を読んでいた。
「おかえりなさい」
「それ、何の本を読んでいるんだ?」
「これ?暇だったから読んでるけどデタラメばっかだったわ」
「そんなにデタラメなのか?」
「そりゃ実際に目撃した私に反論なんかできるはずがないわ。まさに生き証人だからね」
「そうか」
アレンは軽く笑った。魔女の話、まだ完全には信じられたわけではないが、少しづつだが状況を飲み込みつつある。
「君の話、とんでもないって思うはずの内容なのに何故か信じてしまうよ」
「確かに。あなた少し変よ?疑ったりしないの?」
「さあね。だが疑ってしまったら面白くないだろう?」
「やっぱり変ね」
呆れ顔でそう言うと、彼女はまた本を読み始めた。
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