桜舞うあの道でもう一度
松葉あずさ
プロローグ
春の柔らかな日差しが降り注ぎ心地好い位に吹く風が俺の背中を押している。
高校の入学式が終わり家に帰る途中、
俺は通い慣れた桜が並ぶ川沿いの道を歩いている。
普通なら入学式の後は親睦会等をするのだろうが、俺は何故か声すら掛けられなかった。
そう、俺は暇なのだ。
まぁ、それ事態はいつも通りなのだが、
今日はすこし違う、普段なら人っ子一人いない俺のお気に入りの散歩道に少女が一人
俺の前を歩いているのだ。
しかも、俺と同じ学校の生徒のようだ。
と、その瞬間いきなり強い風が吹く、
桜の花弁が舞い散り前を歩く清楚で儚げな黒髪の少女と合わさり景色を彩るのだ。
そして、その瞬間何かを思い出させられるような気がした。
「綺麗だ」
余りにも幻想的な景色に、
その場に立ち尽くしていると少女が振り返り、此方にやって来る。
「貴方、じろじろと私の事を見ないでくれる?」
どうやら、彼女は機嫌が悪いらしい、
しかも、よく見ると彼女は二年生、先輩だ。
「すいませんでした、別にじろじろ見ていた訳ではないのですが…」
まぁ、見ていた事は否めんが面倒だし適当に返して逃げよう。
「そうかしら?私は貴方からの視線に恐怖を感じたわ背筋が凍るくらいにね」
なんだこの女は、よくも初対面の相手にここまで言えた物だ。
「お言葉ですが、先輩は僕の前にいるのですから、僕の視界に入るのは仕方がないですよね?」
「貴方、生意気ね気持ち悪い」
「生意気なのは認めますけど、気持ち悪いは余計では?」
そう返すと彼女は
「ところで貴方…私と会った事ある?」
無視かよ!!と思ったが心に秘めておくことにした。
「無いと思いますよ」
すると、彼女は更に質問する。
「そう、名前は?」
「和泉奏太ですけどなにか?」
質問に答えると彼女は
「そう」
と言ってニヤニヤしている。
「私は美優、斎条美優、斎藤一の斎に条約の条、美しく優しいで、斎条美優よ!」
何故か、自己紹介を自信満々にする彼女に困惑していると。
「貴方、地元の人間よね?」
と聞かれる、確かにそうだが何故解った!?
「そ、そうですけど…」
我ながらキョドってしまった、確かに気持ち悪いな。
「実は私、昨日こっちに引っ越して来たばかりなの、前までは都内から通っていたのだけど、面倒だし引っ越すことにしてね」
そして、彼女は続けてこう言う。
「それで、貴方にこの町の案内をして欲しいのやって貰えるかしら?」
さて、どうしたものか…予定が有るわけでは無いが、とてつもなく面倒くさい。
まぁ、暇潰し程度にはなるか。
「別に、予定が有るわけではないので構いませんよ」
そう言うと。
「ありがとう!」
と、彼女は笑う
綺麗な笑顔だ…よく見ると肌も髪も綺麗で目鼻立ちも整っている、
いわゆる美人と言う奴なのだろう。
かくして俺は、高校入学初日に、
この面倒くさい美少女と出逢ってしまったのだ。
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