第76話

「あー、早く終わらせて遊びてぇー!」

「集中して描けば終わるだろ。ってか、遊びにきたわけじゃねぇ」

「真面目かよ〜」

今日は“絵を描く会”というかわいらしい名前の行事です。学校周辺で自分の好きなところを描くのですが、早く終わったら帰宅していいので遊ぶ人が多いのです。


「あれ? ふーくんだ!」

描き始めて少ししたときにさくらが声をかけてきた。

「お、さくら。ここで描くのか?」

「うーん。ゆみりんと良さげなとこ探して歩いてた〜」

「お疲れ〜、史人くんと智くんはここで描くことに決めたのー?」

河川敷で描く俺たちの元に2人が近づいてきた。

「そう、智が早く描こうってうるさくて。まぁここ綺麗だし」

「皆、真面目かよ〜。俺は遊びたいんだよ!」

「私は飾られるときに恥ずかしくないくらいには描きたいかな〜」

「んー。史人くんとさくら真面目〜。私も智くんの気持ちちょっとわかるなぁ」

「だよな! よっしゃ、早く描こう」

俺は話しながら描くのも楽しいから、むしろ早く描きあげる智が真面目に思える…。ってか、そういえば…たくはどこだ?

「あれ、ゆみさん。たくは?」

「あー、たくはめっちゃ絵得意なんだよねぇ。入賞するために本気で描くから別々で描こうってなったの〜」

「へぇー、たくすげぇな!」

「たくくん絵うまいもんね、楽しみだなぁ」

「ん? さくらは見たことあるのか?」

「美術部見に行かせてもらったことあるの〜」

「え! たく美術部!?」

「知らなかったの〜? たくくんかわいそ…」

「いや、俺らはな。うん。あれだよ。そんなこと知らなくても仲良し!」

そういえば、たくのことあんまり知らないよなぁ。

「まぁね、たくはあんまり自分のこと話すタイプじゃないから」

「さすが、ゆみちゃんはわかってるねぇ〜!」

「ま、まぁね」

お、ゆみさん照れてる。

\おーい、そこー! 喋ってばっかいないで絵完成させろよー!/

見回りの先生が遠くから叫んでいる。

「やっべ、早く終わらせねぇと!」

「うふふ。さくら、私たちもここで描かない?」

「そうだね、時間もないし!」

「4人とも同じ画角だとたく嫉妬しちゃうぞ」

「あはは、ふーくん面白い!」

「いいわねぇ、余計ここで描こ〜!!」

\おーい、お前ら聞いてるかー!/


\はーい! ちゃんと描きまーす!/

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