第70話

「おはよ、史人」

「おぅ、たく。おはよー」

今日もいつも通り学校が始まります、頑張るかぁ。

「たくくん、たくくん!」

「…?」

おっと、珍しい。さくらがたくの元に駆け寄ってきました。たくを呼びながら、小声で。どうしたんだ?

「ゆみりんとケンカしたの?」

「まぁ、ちょっと…」

「え、まじ? ゆみさんとたくケンカとか珍しくない?」

「ちょっとふーくん! 声大きい!」

「さくらちゃんも大きいけどね」

「あ、ごめん!」

「いいんだ。俺が悪い。帰りまでには仲直りするから、さくらちゃんゆみのことよろしく」

「…ほんとに? うーん。わかった、頑張ってね」

大丈夫かなぁ。2人仲良いのになぁ、何でケンカしたんだ…?


「あ、さくら。ちょっといい?」

「ん? ふーくんどうしたの?」

「何であいつら…ケンカしてんだ?」

「あー、実は…」

今日はゆみさんの誕生日で、朝“今日何の日〜?”と聞いたゆみさんにたくが“んー、いい天気の日”と言ったことからケンカが始まったようです。たく…大好きな彼女の誕生日くらい覚えておけよー。

「それたくに…」

「言っちゃダメ! 自分で思い出すことに意味があるでしょ! たくくんが思い出さないとゆみりんも嬉しくないと思うんだ…」

なるほど、そういうもんか。

「わかった、応援だけしとくわ」

「ありがと、ふーくん。またね」

「おぅ」

頑張れ、たく。絶対思い出せよ!


2人が仲直りすることなく放課後に…。

「さくらー、帰るかー」

「えっとー」

「ごめん、史人くん。今日、さくら借りてもいい?」

あー、そうか。ゆみさんたくと帰らないんだよな。

「お、了解。じゃ、先帰るわ」

「いや、ゆみは俺と帰る」

たく…無理矢理言っても許されないと思うぞ。

「今日は私さくらと帰るから!」

あー、ほらゆみさん怒ってるよ。誕生日おめでとうって言えよ、たく。さくら困ってるわー。

「さくらちゃん、ゆみ連れてっていいかな?」

「私…はどちらでもー」

おぉ、さくら逃げたいのか。奇遇だな、俺もだ。

「1日くらい一緒に帰らなくてもいいじゃない!」

ゆみさん結構怒ってるなぁ。まぁ、乙女が誕生日忘れられるのは…きついよな。

「だめだ」

たく…重いって捨てられるぞ。

「なんでよ!」

ほら、毎日放課後を縛るなんて重すぎ…あれ? 別にたくとゆみさんっていつも一緒に帰ってないような…。

「今日は行くとこあるからだめ」

「え…?」

「食べたいって言ってたでしょ、ワッフル。隣の駅のとこ。一緒にお祝いしよ?」

「え、え?? お祝いって…」

「ゆみ、誕生日おめでとう。俺が忘れると思ったの?」

「…う、うるさい! 忘れてると思って悲しかったの!」

「ふふ、ほら行くよ。史人、さくらちゃんごめんね、ありがとう。また明日」

「さくらー! グダグダ言ってごめんー!」

「ふふふ、私はいいよ〜。頼られて嬉しかったー! 今度お祝いさせて、お幸せに〜」

「また明日な」

「ばいばーい!」

「さくら、よかったな。俺達も帰るか」

「うん! 帰ろ〜」

いやぁ、たくってめんどくさいけど…結局イケメンなんだよなぁ。ゆみさんが好きな理由もわかるわぁ。


うん。ゆみさん誕生日おめでとう!

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