第64話

「ドーナツ食べたい」

帰り道突然さくらが言い出した。

「ドーナツ? 急にどうした」

「向こうの通りにドーナツ屋さんができたんだって! ゆみりんが食べたって言ってて、行きたいなぁと思って〜」

なるほど、そういえば母さんもドーナツ屋の話をしていたような…。女子はそんなにドーナツだの、パンケーキだの甘いものが好きなのか。

「ふーん、ドーナツ。買いに行くか?」

「え! いいの! あ、ふーくんも甘いもの好きだもんね〜、行こー!」

はい、女子の皆様すみません。俺も甘いもの大好きです。


「うわぁ、並んでる〜…」

「思ってたよりいるな。どうする、並ぶか?」

俺はドーナツ食べてみたいから並んでもいい。そして、さくらといられるならむしろ並びたい!!

「うーん…。長いよねぇ」

おっと…? 諦めるのか、さくら! こんなの行列でもなんでもないさ!

「俺は時間あるし、並んでもいいぞ」

「うーん。じゃあ並ぼうかなー!」

よっしゃ、並びます。


「もうすぐだね! あ、メニューある。何にしようかな〜」

「おー、うまそう。持ち帰り?」

「うん! お母さんも食べたがってたし〜」

「俺も母さんに買って帰ろう」

「3つ…太る…。2つかなぁ」

さくら…太ってないだろ。ちょっとふっくらしたってかわいいだけだ! 好きなもの食え食え。

「別に好きなもん、食えよ」

「痩せ痩せ男子くんにはわかりませんよー!」

…怒られた。食べても太らないっていうか、筋肉がないの気にしてるんだからね!?

「はいはい、すみませんね」

「これとこれにしよ〜っと。お母さんは〜」

機嫌直るの早すぎだよなぁ…。あ、俺も選ぼう。


「ありがとうございました〜」

無事買えました。

「美味しそ〜! 早く食べたい!」

「帰ったらすぐ食うな、これは」

「さすが甘党のふーくんだね」

「甘いもんが好きな男なんてゴロゴロいるわ」

「あはは、別にけなしてないよ〜! ゴロゴロいるかはわかんないけど、かわいくていいじゃーん!」

「男子にかわいいは褒め言葉じゃありません」

「私は褒め言葉として言ったからいいんですー!」

「はいはい、ありがとうございますー」

「はいはい、どういたしましてー」

「はぁ、早く帰るぞ」

「うん、急げー!」

「走るなって、危ないから」

「はーい」


うん。仲良し幼なじみの立ち位置も悪くない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る