Ⅰ お楽しみの始まり始まり~

『百鬼夜行警報発令!直ちに建物の中に避難して下さい!繰り返します!百鬼夜行警報発令!』

 人々が速報を聞くとともに、我先にと近くのビルやマンション、ショッピングモールなどの大型施設、他人の家にまで入り込む。


 鬼達が通る。

 素通りしていく。


 間に合わなかった人は、死を待つ。


 皮膚を引き裂かれ、骨は折れ、肉は剥き出し、血は周囲に飛び散る。


 悲鳴を上げながら。


 見ている者も、悲鳴を上げようとする。

 息を呑む。

 泣く。


 しかし、この状況を覆すものは、この世界にはどこにも居ない。


 50年前までは。


 街道並木に、鬼が戯れる。

 そこに、一人の凛々しい雰囲気をまとった男性。

 手には白く光っている一本の剣。血が微かに付着していた。


 不特定多数の鬼が男性に襲い掛かる。


「遅い」


 男性はそれだけ言うと、全ての鬼を処刑した。


 首と胴体がコンクリートの地面に落ちる。


 観衆みかたから、歓声が上がった。


 そんな姿を、私は虚無むひょうじょうで見つめた。




 あれから11年。


 私は捜査官しょけいにんになった。

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