第6話 模擬戦─八坂氷継VS峯乘優奈
輝夜達の模擬戦から数時間後。ボロボロになった会場と変換想置の修理、二人の回復などが終わり、次で最後の試合となった。他にも一年生はいるが戦闘の激しさを見て若干気後れしてしまい、今日は遠慮すると申し出ていた。
最後の試合は
「こうやってお互いに剣を向け合うのは何年ぶりだっけ?」
「そうだな……大体十年ぶりくらいじゃないか?」
───さっきの戦闘で回路にかかってた鍵自体は外れているが、俺の手の内は全てバレてるも同然なんだよな……
「俺とお前の差がどれくらいなのか見るいい機会だ」
「悪いけど、負けるつもりはないよ」
右手に握られた黒剣、【
彼が最上位一神級貴族───天皇の息子である証拠だろう。
「【
「っちょ、それ恥ずかしいんだから思い出さないでくれよ〜」
「両者、構え!!」
「同じ構えなのね、あの二人」
観客席にいる
「これここ壊れちゃうんじゃない?」
「───始めぇえ!」
開始の合図を聞き届け、二人は全身にエーテルを巡らせ式を展開する。
「「【
同時に式を起動し両者共に突進攻撃を行う。彗星の如く星躔を描き、やがて衝突して紅い閃光が爆発し火花が飛び散る。観客席にまで凄まじい爆風が襲い、全員が思わず顔を腕で覆って風を防ごうとする。
「───ック!」
歯を喰い縛り、上から振り下ろされた刃に黒剣でガードし、左手で障壁の式を造りギリギリで防ぐ。腕等の体の一部に式を書き込んで置くことで、式を唱える必要が無く、エーテルまたは魔力を流すことで素早く展開させることができる。
───くっそ、緊急用の仕込みをもう使っちまった……
「───ッグハ!?」
パラパラと壁の破片が床に落ち、続いてドサッと
「……その顔は変わんねぇんだな。昔ッからその顔だけは怖かったぜ」
「……君には言われたくないけどね。その顔になった時だけは絶対に止められない、暴走車両みたいで怖かったよ」
「想いを司す不滅の誓いよ、汝の歩みの為の脚となれ───【
右足、左足それぞれに緑色の円型の陣が現れ、腰まで登り脚力が強化される。
次第に距離を縮めていき、その間刀身を左手でなぞり、式を構成する。一瞬、黒剣に技の予兆、稲妻が走ったことで、
「
「
「んな!?」
予想が外れ
【
【
自身を雷とし、上下左右、四方八方から
「あがぁ!?───っくそがぁ!!」
彼が
「───!!」
そして上段から振り下ろされた黒剣によって、咄嗟に双振りの剣で防御の姿勢を取れはしたが、激しく荒々しい力によって地面に叩きつけられる。バゴォォォンと大きく音を立て、床を大きく凹み煙が立ち込める。
エーテルによって顕現された雷の鎧が消え去り、
「───っまずい!?」
しかし、そこに彼の姿はなかった。
「───
あの時、防御を取り地面に叩きつけられるほんの僅かの所で、彼が持つ異能力を使いその場から
【
「はあぁぁぁあ!!」
「ッあがぁ!?」
その6撃を背中にもろに受け、大きく吹き飛び観客席に張られた障壁へと激突する。障壁は
「ッがは!」
そのまま重力に逆らえもせずに落下し、地面に叩きつけられる。両手両膝を地面に付き思わず咳き込む。口内から吐き出されたのは真っ赤な液体。それを眼にした
───くっそ。変換想置が壊れたか……?ヤバイな…………血が…………
地面に付着した血から眼を反らして体を起こし、呼吸と整えつつ
変換想置に不具合が生じたことでアラームが作動し、場内に響き渡る。
「コヒュー……コヒュー……ハァ………スゥゥゥゥ……ハァァァ。知らねぇ業だな……それ…………」
「コヒュー……コヒュー……あ、ははは……奥の手だったんだけどねぇ…………これで気絶でもしてくれれば───良かったのに!!!」
「───ック!」
が、その音は二人の耳には届かず、試合を続行してしまった。
「ちょっとちょっと、二人共!止まってよ!」
「…………いい加減に──────しなさい!!天河流律刀術、刀技式【
刀の刀身に霧が纏わり付き世界と同化し隠される。素早くも静かな足取りで二人の間に入った。二人の世界に急に現れた
振るわれた刃は二人の
「二人共、もう終了の合図は出しましたよ」
「…………はい」
短く返して鞘に黒剣を納める。
「…………ごめんなさい」
謝罪を述べて双振りの剣を鞘に納める。
「今回は何も起きなかったからよかったですが、あのままいけば、どちらか死んでいましたよ」
「大体ねぇ想置が壊れ─────」
───ああ、これ長くなるやつだ
───長くなりそうだなあ……
数分に渡るお説教。それに終止符を打ったのは学院に設置された警報アラームだった。
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