第29話 二千と二十五年の付き合い
フラムたちは、陽介の話を黙って聞いていた。アリエッタは時折慰めるように背中を撫で、リベルタは漏れ出る涙と鼻水を拭いてやった。
「そうそう、フラムチャンに聞いておきたいことがあったのよね」
陽介が落ちついた頃、リベルタが言った。
「精霊も、魔王の側近も認知出来ないのに、なんでフラムチャンだけがエルメスが世界を書き換えたって知ってるわけ?」
「ああ、そうだ、陽介には以前話していたのだがな……」
フラムはすっかり忘れていたと二人に説明した。
「なるほど、そういうことね。発動の瞬間を見たフラムチャンには効果がなかったってわけね」
「あの時、私が追っていれば……」
「過ぎたこと言っても変わらないわ。っていうか、言ってくれればよかったのに」
アリエッタは複雑そうな顔をしていたが、リベルタの言葉に同意を示す。
「君、忘れてると思うが、ステータスの数値がどうのと自慢したことがあったからな?」
と言われ、リベルタはギクッとした。こうなる前は鍛えぬいた体を自慢する趣味があったからだ。
「それで、私以外の精霊たちも認知できないなら、仕方がないと諦めてしまったのだ。すまない」
フラムは詫びるように頭を垂れた。
「あー、ビックリした。てっきりフラムチャンがアイツの仲間になってた時期があったのかと思ってたわ」
アリエッタはコクコクと頷き、二人は顔を見合わせてフフッと笑った。
「はは、そう思われても仕方がないな……」
「なーにしょげてんのよ! アタシたち世界が出来てから二千と二十五年の付き合いでしょ!」
リベルタは三人まとめてぎゅむぎゅむと抱きしめ、皆苦しそうにしている。陽介が必死にべしべし叩いて、ようやく解放された。
「さ、陽介チャンも見つかったし、フラムチャンの懺悔も聞いた。あとはもう進むっきゃないわよ!」
一行は、森を抜け町に戻っていった。ぶかぶかの服から元の服に着替え、武器と防具も装備して、やっと本当に人間に戻れたのだと安心する陽介だった。
ぶち破った窓の修復や壊れた町の復興も手伝わされ、数日間滞在した後、一行はいよいよ最後の大陸、土の大陸を目指して出発するのだった。
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