第18話 逢坂探検隊 初仕事

「では、逢坂君、今井君、花染さん、小森さん、水瀬さんはあとで職員室へ来るように」


 神社の近くの蔵で幼女を保護した次の日、僕達は朝のホームルームで呼び出しをくらった。




「渚、俺たちは何の理由でよびだされたんだ?」

「分かんない……というか、昨日梓の家に行ってからの記憶がないんだが……」

「あぁ、俺もだ。皆でご飯食べてゲームを始めたとこまでは覚えてるんだが……」


 記憶を呼び起こすことは出来なかったが、出来ないということは何か嫌な事があったのだろう。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「君達、昨日神社の近くの蔵へ行かなかったかい?」


 僕達は職員室に入り、校長先生に連れられるなり、そんなことを言われた。


 しかし、並んでいるのは僕と咲斗だけ。

 小森さんと水瀬さんは逃げ出して、梓は校長先生のお咎め無しになったらしい。


 これだから現実ってやつは……


「渚、やっぱり みよちゃんのことか?」


 咲斗は小声で僕に話し掛ける。


「いやいや、だとしてもどうして知ってるんだよ」

「あそこは監視カメラ沢山あるんだよ」

「そういう事は先に言ってよ。元はと言えば咲斗が……」

「なっ、お前も乗り気だっだだろうに!」


 小声で僕達は罪のなすりつけあいをしていた。

 誰だって犯罪者にはなりたくない。

 しかも、罪状が幼女誘拐と来た。


「それで、蔵へ入ったのは君達でいいのかね?」


 校長が話を戻す。


「いや、まぁ、その。確かに入りましたけど……別に、幼女誘拐とかそういうのじゃ……」


 咲斗は歯に着せぬ言い方をしつつ、昨日の件を肯定する。

 罪人はいつだって嘘つきらしいが、誠実な犯罪者だっているんだ!


 しかし、校長はそんな誠実な僕達に向かって罪の宣告を……


「昨日、蔵から祭りの神輿が消えたらしいんだ」


 とは、ならなかった。


「「へ?」」


 僕と咲斗の声が重なった。


「それでね。昨日蔵にいた君達が犯人……とまでは言わんが、何か知ってるのではと思ってね」


「渚!」

「咲斗!」


 僕と咲斗は互いの手を握りあって、喜びを二人で感じた。


「何だね君達、まるで10年ぶりに再開した兄弟みたいなテンションだが……」


「気にしないでください」


 僕は冷静に戻る。


「まぁ、お前達が盗んだとは思っていない。だけど、祭りの日も近いし、どうせ暇だろう? 神輿を探して貰えないだろうか?」


「そう言われましても……」


 僕はそう言うが、


「今井君、確か君はテストの件で、夏休み補習があったのだろう……あとは分かるね?」

「任せてください! よし! 喜んで引き受けます! 捜し物無くし物に関してはプロですから、色んな意味で。俺に任せてください! 」

「おい、咲斗」

「俺も夏休みを謳歌したいんだ!」


「じゃあ、頼んだぞ」


 そうして、僕達は校長室からクエストを受けて旅立つことを余儀なくされた。



 またもや面倒事を引き受けてしまった逢坂渚探検隊なのであった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……というわけなんだ」


 放課後、僕達探検隊メンバーは梓の家で集まっていた。


「つまり、厄介事を押し付けられたわけですね」

「大人はいつだってそんなもんよ」


 小森さんと水瀬さんは、そう愚痴をこぼしていが、いつも面倒事を咲斗に押し付けているのはどうなのだろうか……


「でも、神輿なんて大きなものが無くなるものなのか?」

「さぁ……? 」

「でも、あの神輿。長い間使われていませんでしたよね? 」

「使われていなかったのか? 」


 僕は質問する。


「あぁ、相当古かったしな」

「じゃあ、なんで町の人は神輿を探してるんだ? 」

「修理か廃棄ってところよね」


 神様がいる中でこんな不敬な会話をしているのはどうなのだろうか……


 そう言えば、神様と言えばもう1人いた。


「そう言えばみよちゃん。君はあの蔵の中にいたけど、何か知らないかな? 」


 僕はそう、幼女神様に聞いてみる。


「みよに聞かないで下さい。いえ、話しかけないで下さい」

「……君はどうしてそんなにツンツンしてるんだい? 」

「渚お兄さんなら喜ぶと思って」

「おい!」


 僕は慌てて否定をする。


「渚 」

「梓? どうしたの?」

「ロリコンは病気よ」

「お前達皆敵だ! 」


 閑話休題。

 話が進まない。

 まぁ、僕達の場合、雑談こそが本筋みたいな所があるけれど、


「それで、神輿はどうやって探すんだ? 」

「とりあえずもう一度蔵に行ってみたり、あとは……町のお祭り担当の大人達に聞いてみるとかかな」

「……そうですね。でしたら二つに人数を分けましょうか。蔵に行く班と町の人に聞きに行く班で」

「おーけー、どうやって分けようか」

「渚お兄さん。みよと一緒に蔵に行きましょ」


 みよちゃんは僕の袖を引っ張る。


「渚が行くなら私も……と行きたい所だけど、町の人に話に行くなら私がいた方が都合がいいわ」


「じゃあ、わらわが渚と行こうかの」


 しかし、そういって立ち上がった秋は、梓によって肩を掴まれる。


「抜け駆けは許さないわ」

「抜け駆けではないぞ。ちょっと、愛を確かめにいくのじゃ」


「渚! 」


 梓はくるっと横を向いて……つまり、僕の方を見た。


「やっぱりあなたはこのロリババア神様とかそこの幼女神様が好みなの!?」

「いや、僕は……」


 何故か僕に飛び火した。


「違うぞ梓、渚は胸部の大きな女性が好みじゃ」

「やっぱりあなたもそんなに胸が好きなのね。ええ、私には無いわよ! 悪かったわね!」

「僕は別に……」


「じゃあ、どうして私と話す時、胸部を見ながら話していたのかしら? 」


 おい!


「違う、それは君の台詞のテキストメッセージを見ていたんだ!」

「へぇ、じゃあ、あなたは女性の胸には興味を示さないと……?」

「あぁ、」


 へぇ……。


 梓は少し嫌な笑みを浮かべたと思うと、僕に近づいてきた。

 そして、僕の背中に手を回して……胸を押し付けるように抱きしめてきた。


 くっ、……


 僕は目を逸らそうと、下を向く。

 すると、梓の大きいとも小さいとも言えない胸部が目に入る。


「あれ、渚……?」


 やばい! 気づかれた。


「ち、違う。僕は……えっと、その……そう、肋骨を見ていたんだ!」


「「は? 」」


 この場が凍った。


「僕は女子の肋骨に興奮していたんだ! だから、女性の胸を見ても何も感じない! 」


 殺して欲しかった。


 しかし、僕の心の叫びが伝わったのか、梓は僕から離れて、秋も梓達について行くよう納得してくれた。


「渚、お前はよくやった。殉職……2階級特進だ」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「では、女性陣と男性陣+みよちゃんで分けましょうか」

「了解」

「では、後ほどまた集まって報告ということで」


 そう言って、女性陣は町の方へと歩き出して行った。



「さて、俺たちも行くか」


「そうだね。というか、みよちゃんはどうして僕を選んだの? 」


「渚お兄さんがあの中では1番まともだと思ったから。まぁ、それでもあの中でだけどね」


 一々言葉に毒というか刺がある。


「じゃ、じゃあ俺は!? 」


 咲斗はみよちゃんに質問する。

 やっぱりお前ロリコンだろ。

 違いない。


 みよちゃんは、咲斗の方を向いて、こう言った。


「あなた……誰? 」


 咲斗は文字通り、屑折れた。





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