第17話 神様も幽霊も美少女がいい
僕達探検隊は夕方、神社へと足を運んでいた。
神社の周りは沢山の木々で囲まれている為、今が夕方ということを忘れてしまうほど暗かった。
「それで、隊長どうするんだ?」
隊員1号、もとい咲斗が僕に聞く。
「うーん、よし隊員1号。とりあえず適当に探索だ。後は適当にほう・れん・そうを守ろう」
「ほうれんそうとはなんじゃ? 」
「ビジネス用語の略語で、報告、連絡、えーっと、そう、総攻撃の略だ」
「そう は相談だよ!」
ビジネス用語で総攻撃って何するんだ?
ストライキとか?
「しかし、渚君、こんだけ暗いのですから、余り別行動は控えた方が……」
たしかに水瀬さんの言う通りかもしれない。
基本的にそれなりに能力はあるメンバーなのだろうが、半数がポンコツという、天性のギフテッドを受け取っている。
「よし、じゃあ、皆で固まって行動しようか」
「それにしても暗いわね。ライトとか持ってくればよかったわ」
「あたしは虫除けスプレーでも持ってくればよかったわ。虫に刺されて刺されて……」
「ライトなら確か蔵の方にあったはずじゃぞ。祭り用の道具と一緒にしまっておったはずじゃ」
「じゃあ、皆。蔵の方に向かおう」
それから程なくして、僕達は蔵へと着いた。
僕は扉に手をかけた。
「ん、少し動いた。鍵はかかってないのか」
「おかしいの、鍵はちゃんとかけるように言っておったのじゃが。かけ忘れたのか、それとも壊されたのかや……」
「とりあえず、開けるぞ」
僕は少し錆び付いて動きが悪い扉をゆっくりと開ける。
ギギギ……という嫌な音が少し続いたあと、扉は開かれた。
その瞬間!
「がっ……っ!」
僕の腹部に何かが当たった。
いや、当たったというよりは衝突した。
僕はその衝撃に耐えられず、後ろによろめいて地面へと叩きつけられる。
「「渚!」」
梓と秋が僕の名前を呼ぶ。
どうやら、まだ現世には留まれたようだ。
僕は腹部を抑えて痛みに耐えながら、上半身だけを起こして目の前の現実を確認する。
すると、そこには……
派手か金と黒の着物を着た、ーー少女がいた。
「き……君は?」
僕はその少女に質問する。
「人にものを聞く時はまず自分からと習わなかったのかしら?」
少女は僕にそう言う。
少し生意気な気もするが、僕は気にせず笑顔で応えよう。
いや、ロリコンじゃないって!
ほんとだから!
「今なんか渚のふしだらな心を読み取ったきがする」
梓がそんなことを言った気がするが、軽く無視する。
「えっと、僕の名前は
「そう、渚お兄さんね。私の名前は みよ」
「みよちゃんだね。こんな所で何をしていたの?」
「それは、あなたには関係のない事でしょ?」
「いや、まぁ、そうなんだけど……でも一応ね、もう暗くなってきてる時間だし、親御さんも心配してると思うよ」
「ふんっ、知らないわ」
みよと言うらしい少女はそう言った途端飛び上がった。
飛び上がったと言っても、飛翔じゃない。
ジャンプ程度だ。
だけど、着地先が不味かった。
みよの飛び上がった両足の着地地点は、僕のとお腹だった。
「✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕!!!」
僕は声にならない叫びを上げた。
「……咲斗? あれ、大丈夫かしら……」
「ささやき えいしょう いのり ねんじろ」
「……駄目みたいですわ」
「お主……人間ではないな」
秋が言った。
「あら、流石土地神様ね」
みよちゃんは言う。
その小さな体から出る声には少し、貫禄というものを感じた。
「人間じゃないって……どういう事ですか? 秋様」
「別に何も種はあらん。ただ、ビビッと来ただけじゃ。あのあれじゃ、スタンド使いとスタンド使いはひかれ合う的なやつじゃ」
「秋様! その表現はどうかと思います!」
「じゃあ、この子が幽霊の正体……?」
「だと思いますわ」
「神様って普通にいるのね〜」
「まぁ、八百万の神なんて言うからの」
「それで、みよちゃんだっけ? 君はなんの神様なの? 」
「わからないわ」
ん?
「分からない? どういう事ですか秋様」
「わらわは土地神様、なんて言われておるが、言われておるだけじゃ、明確な差別化はない。神様の種類によるがの」
「じゃあ、秋様も本当は分からないと……?」
「……まぁ、その話はいいじゃろうて。そうじゃな、簡単に考えて、この子蔵の守り神という説が濃厚じゃろう。この蔵も歴史があるしの。不思議ではないわい」
秋は古びた蔵をもう一二度眺めながら言う。
「それで、どうしましょうか」
「このままほっておく訳にもいかないしね」
「じゃあ、俺ん家は!? 広いし、ゲームも沢山あるぜ」
「却下」
咲斗撃沈。
「では、私の家は?」
「うーん、梓とこの子を二人っきりにするのは不味そうな気がする……」
「では、渚も連れてくわ」
「おお、いいじゃない! 夢の同棲生活ね」
「秋様はどうしますか?」
「わらわは……」
「美味しいご飯。ありますよ」
「よし行こう、直ぐに!」
「じゃあ、決定ね。行きましょ。みよちゃん」
梓はみよに手を差し伸べる。
「私は何処へ連れていかれるんですか? 体を売るんですか? この年で穢れるんですか? 」
「大丈夫よ。ここにいる男たちはチキンしかいないから」
てなわけで、みよちゃんこと神様幼女は梓の家で一時期引き取られることになった。
日も落ちて、真っ暗になってしまったし、皆は梓の家へ向かって歩き出した。
僕を置いて……。
「渚お兄さん、忘れられてる」
小声でそう言ったみよの言葉は、誰にも聞かれることはなく、暗い空へ消えていった。
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