第408話

私の大晦日の朝は大掃除から始まる。お母さんに朝6時に叩き起こされ、大掃除が終わるまで朝ごはんを食べれず、早く終わらせないと朝食と昼食が一緒になりずっと空腹のまま掃除をする羽目になる。


だけど、終わらない。なんだ、この部屋の散らかりようは。私の女子力の無さが悲しい。

漫画本を縦積みにし隅に置く。広くない部屋なのにやらないといけないことが多く、お腹も空いたしやる気がなかなかでない。


とりあえず、見える範囲を綺麗にしなくては。そのあと窓を拭き、ベッドを綺麗にし、掃除機でゴミを吸い込み、、机の上も綺麗にしなきゃ…照明も綺麗にしないと埃が見える。

お腹が空いた。汗は出てないけど疲労が私を苦しめる。お菓子食べたい!



「水希、掃除終わったー?」


「まだ!全然終わらない!」


「普段から掃除しないからこうなるのよ」


「だって…(部活の疲れと、芽衣と優香ちゃんと電話してるから夜がすぐに終わる)」


「掃除が終わったら出掛けるわよ」


「えっ、どこに?」


「神社よ。学業の神様で有名な神社を教えてもらったの。明日行くと混むから今日行くわよ。早く掃除して」



掃除してと言われても、なぜ私までと思ったけどすぐにお姉ちゃんの考えていることを理解する。私は永遠の荷物持ちだった。



「荷物持つから掃除手伝ってよー」


「神社の近くに美味しいお芋屋さんがあるのよね〜。そこの大学芋食べたい?」


「食べたいです!30分で掃除を終わらせます」



人間やればできる。私は超人のようにマッハで動き出す。だけど、凡人ゆえ反動も大きい。

掃除が終わった後、四つん這いになりゼェゼェと呼吸を整える。流石に疲れた。



「水希、終わったの〜?」


「終わったよ…疲れた」


「さぁ、着替えたら行くわよ」



休憩時間1分。玄関で待ってるからねと言われ、部屋着を脱ぎ捨てパーカーを着る。

あんまり変わらない格好だけど、このパーカーはちょっとだけ値段が高い。

大学芋だったらテイクアウトだろうと思い、髪は手櫛で整え帽子を被る。女子力0だけどお姉ちゃんを待たせると怖いから仕方ない。



「はぁ、お腹空いた」


「ほら、行くわよ」



お姉ちゃんに引っ張られ、駅まで向かった。大晦日だからか人混みが凄く、キャリーバッグを持った人や今から遊びに行く人など沢山いて歩くだけで疲れてくる。



「あっ」


「どうしたの?」


「友達がいた」



駅の中にある本屋さんに優香ちゃんがいた。誰かと待ち合わせしてるか本を買いに来たのかなって見ているとお姉ちゃんが「芽衣ちゃんの友達だよね」と聞いてくる。



「あの子…負のオーラを漂わせているわ」


「えっ、何それ。優香ちゃんに失礼だよ」


「水希、浄化してあげなさい」



突然、とんでもないことを言う姉は本気で私に浄化させようと雑誌を読んでいる優香ちゃんに近づいていく。

私は慌ててお姉ちゃんを追いかけ、優香ちゃんに声を掛けた。お姉ちゃんは時々突拍子のないことをしようとするから本気で困る。



「あっ、水希ちゃん!」


「ごめんね、急に声を掛けて」


「貴方、今から時間ある?」


「えっ、、あっ、はい」


「ちょっと、お姉ちゃん!」



お姉ちゃんの言うことは絶対。優香ちゃんは突然のことに驚きソワソワしている。

私はお姉ちゃんの行動にため息を吐く。また犠牲者が増えた。私は優香ちゃんに「ごめんね」と謝り、学業の神様で有名な神社にお参りに行くことを伝え私達は電車に乗った。



「水希ちゃん、今日お参りに行くの?」


「うん、明日だと混むからってお姉ちゃんに言われて」


「言っとくけど水希のためだからね。2年連続でお参りして効果を高めるためよ。私は確実に受かる自信があるからいいのよ」



まさか私のためだったとは。確かに私の学力だと今年からお参りして神様にお願いしたほうがいい。きっとギリギリでもないはず。



「しっかりお参りする!」


「お賽銭、奮発しなさいね」


「500円…入れます!」


「ふふふ、あっ、ごめんなさい。2人の会話が楽しくて」



優香ちゃんが楽しそうに笑う。お姉ちゃんとの会話を聞かれて恥ずかしいけど、優香ちゃんを突然連れ出して申し訳なかったからから安心した。



「あっ…」


「どうしたの?」


「何でもないよ」



優香ちゃんが何かに気づいた反応し、下を向く。私とお姉ちゃんが振り向くと何人かの女の子の集団がいた。

もしかしたら、優香ちゃんと同じ高校の人かも。でも、その子達の視線が冷たい。


そんな時一番頼りになるのはお姉ちゃんだ。優香ちゃんを冷たい視線で見つめてくる子達をお姉ちゃんの眼力で怯えさせる。

私にはお姉ちゃんから黒いのオーラが見えた気がした。黒い天使には誰も敵わない。



「優香ちゃん、お芋好き?」


「えっ、うん」


「大学芋が美味しいお店にお参りしたあと行くから楽しみにしててね」


「うん!」



私は体で優香ちゃんがあの子達と視線が合わないように隠す。お姉ちゃんの眼力に怯えてこっちを見ることはもうできないとは思うけど一応予防線を引いた。

いつかは乗り越えないといけないものだけど今はまだいいい。でも、きっと乗り越えられたら優香ちゃんも芽衣も変われるはずだ。

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