第404話
倉庫作業は終わり、私はさわちんとグラウンドに戻った。芽衣の表情が気になり声を掛けようとすると後ろから私の名前が呼ばれる。
声がした方を振り向くと昨日会った私服姿の宮田さんがおり私に手を振ってくる。
私はなぜ?と思いながら手を振った。でも、横にいたさわちんが私の腕を叩き「誰!?」と怒りながら聞いてくるから芽衣の友達と説明した。
さわちんは芽衣の友達と聞いた途端、反応が薄くなり興味を失ったようだ。
「さわちん、先に行ってて」
「分かった」
なぜ宮田さんがいるのか理由を聞く為、私は芽衣と反対の方向を向き歩き出す。
宮田さんに近づいていくと笑顔でまた私の名前が呼び、気まずい感情が出てくる。
こんな気持ち初めてだ。きっと、私の周りにはいないタイプの子だからかもしれない。
「宮田さん、どうしてここに?」
「水希ちゃんに会いに来たの」
「えっ、私に?」
「水希ちゃんと友達になりたくて」
ぐいぐい来る宮田さんに私は押され気味だ。まだ初めて会って間もないのに、急速に距離を縮められる。宮田さんはスキンシップが多く、私の腕を掴んで離してくれない。
「水希ちゃん、友達になろうよ」
「うん…」
芽衣の友達から友達になろうと言われ、断れるはずなく私は頷いた。
宮田さんが嬉しそうに笑い、私に優香と呼んでと言ってくる。優香ちゃんと呼ぶと「嬉しい」とまた距離を縮めてきて私は初めて後退りをした。戸惑いが隠せない。
「水希ちゃん、部活が休みの日いつ?」
「日曜日だけど」
「じゃ、日曜日遊ばない?」
「ごめん、予定がある」
「あっ、そっか。彼氏とデートだよね」
「彼氏?」
「うん、芽衣に聞いたよ。水希ちゃんに彼氏がいるって」
「あー、、うん」
私は苦笑いした。でも、本当のことを言えるはずもなく仕方ないと受け入れ言葉を濁す。
「あの、そろそろ戻らないといけないから」
「うん。あっ、また見にきてもいいかな?」
「あの…他校生は本当は入っちゃダメなんだ」
「えっ、そうなの?芽衣が隅っこだったらって言ってたから大丈夫なのかと思ってた」
「先生に見つからなければ大丈夫だとは思うけど、私は生徒会長やってるから簡単に容認は出来ないかな」
「そうだよね、分かった。あっ、じゃ電話番号交換しよう。学校で会えないなら電話で話したいし」
「今、携帯持ってなくて…」
部活中は携帯を部室のロッカーに入れている。唯一持っているのがマネージャーの芽衣とひかるで、時間確認や何かあった時のために持ってもらっていた。
「そっか、じゃ芽衣に聞くね。今日の夜、電話掛けてもいい?」
「うん…」
優香ちゃんは芽衣の友達だ。だから、芽衣の恋人として優香ちゃんにちゃんと接しないといけない。だけど、なぜだか気が重い。
「水希!」
「あっ、ちょうど良かった。芽衣、水希ちゃんの電話番号あとで教えて」
「えっ…」
「水希ちゃん、電話は9時ぐらいにしていい?」
「うん…」
私が優香ちゃんに対して気が重いのは芽衣の優香ちゃんへの態度が原因だと分かった。
2人が仲がよく分からない。優香ちゃんの芽衣への態度は普通だけど、芽衣の優香ちゃんへの態度に違和感があり私の中でモヤモヤが募り、どうしたらいいのか分からないからだ。
「じゃ、私は行くね。水希ちゃん、芽衣、部活頑張って」
優香ちゃんが私達に手を振りながら帰っていく。芽衣の表情は暗く、私は芽衣の手を握り部室に連れて行った。
やっぱり芽衣の様子がおかしい。「やだよ…」と言いながら私に抱きついてきた。
「芽衣、どうしたの?」
「優香と仲良くならないで」
「分かった。芽衣の言う通りにする」
「えっ…いいの?」
「だって、芽衣が嫌なんでしょ。芽衣が嫌な思いするのは私が嫌だから」
芽衣が泣き出してしまった。「私の心が狭いから」言い、、理由を話してくれた。
優香ちゃんは自分の気持ちに素直な子で悪気はないのだろうと思うけど、周りの子からしたら優香ちゃんタイプは距離を取りたくなる。
私も芽衣を取られるかもしれないとなると優香ちゃんと距離を取るだろう。
「優香はいい子なの。だけど、好きになると一直線で周りを見なくなる」
「それは友達からしたら悩ましいね」
「優香の水希への態度が怖くて、嫌だった」
「私は芽衣以外の人を好きになることはないよ」
「でも、水希が優香にアプローチ受けるの嫌なの。恋人がいると分かってても必ずアプローチして告白するから」
私は優香ちゃんにどんなアプローチを受けてもへっちゃらだ。でも、芽衣の立場からしたら嫌な気持ちになるだろう。
だったら先手を打って断ればいいと思ったけど、まだ告白もされてないから無理だ。
それに優香ちゃんが私を好きになる確証がない。彼氏がいると思い込んでいるし。
悩ましい、芽衣のために優香ちゃんと距離を取りたいけど友達になりたいって言われただけの優香ちゃんとどうやって距離を取ろう。
「水希の電話番号教えたくないよ…」
「優香ちゃんに私達の関係を話す?先に私達が付き合ってるって話したらどうかな?」
「・・・もし、優香が私達の関係を知っても水希を好きになったら告白してくる」
「私は必ず断るよ。それに、もし優香ちゃんが私を好きになると仮定しても告白を断ったら問題ないでしょ」
「そうだけど…ムカつく」
仮定の話はなかなか決着点が見つからない。私が優香ちゃんと仲良くならなければいい話だけど、友達になりたくないですとは簡単には言えない。
結局、優香ちゃんから私の電話番号を急かされた芽衣は教えてしまった。
それ以来、私への優香ちゃんの電話が多く、芽衣が不機嫌になっていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます