第402話

芽衣と水族館に向かいながら私はチラチラと芽衣を見る。宮田さんに会ってからどことなく芽衣の様子がおかしい。2人は雰囲気的には友達関係に見えたけど違うのかも。



「芽衣、宮田さんと何かあったの?」


「えっ、、何もないよ」


「そっか。ごめんね、変なこと聞いちゃって」



芽衣の表情と声色で何か分かるかなって思っていたけど難しく、私は芽衣の言葉を受け取るしかなかった。

2人が過去に何もなければいいけど、これ以上踏み込んで聞けないし悩ましい。



「水希、早く水族館に行こうよ」


「うん…」



今日は楽しいクリスマスだ。沢山、芽衣と思い出を作ると決めている私は芽衣と手を繋ぎ水族館に向かう。

それに今日はお泊まりで芽衣とずっと一緒にいられる。芽衣の笑顔がもっと見たい。



「芽衣、来年は遊園地に行きたいね」


「うん!」


「遊園地のホテルに泊まろうか」


「泊まりたい!」



来年への夢が広がる。私は芽衣のためならいくらでも頑張れるから芽衣と出会えて良かった。芽衣のお陰で変われた。

芽衣の笑顔が可愛いな。あまりの可愛さに私の顔が引き締まらない。デレデレとし、クネクネとし電柱に頭をぶつける(痛い…)



「水希、大丈夫…?」


「大丈夫!」


「頭撫でるから屈んで」


「うん!」



芽衣に頭を撫でられぶつけた痛みなんてすぐに消えた。芽衣の手は魔法の手だ。



「よし、水族館に行こう」


「イルカのショー、見たいね〜」


「寒かったら言ってね。私が抱きしめて温めてあげるから!」


「今、寒いな」


「じゃ、今抱きしめる〜」



人の目なんて気にしない。芽衣が寒いなら恋人の私が温めるのが役目であり特権だ。

腕の中に芽衣を包み込み、芽衣の温もりに私は幸せに満たされる。幸せだー。


この後、私達は最高のクリスマスを過ごす。水族館に行って、美味しいお店で食事をして、芽衣とラブラブな夜を過ごして、朝起きた時めちゃくちゃ可愛い寝顔を見れて私は朝からデレデレだ。芽衣が可愛すぎる!



「可愛いー、可愛いよー。へへへ、あっ、寝癖発見。むふふ、でへへ」


「水希…」


「あっ、起きてたの」


「水希のせいで起きづらかった」



寝癖を手で直しながら、起き上がる芽衣は今すぐに写真を撮りたいぐらい可愛く、我慢できずに抱きしめる。小さくて、可愛くて、愛おしいって気持ちしか湧いてこない。



「苦しいよー」


「だって、芽衣が可愛すぎるから」


「あっ、そろそろ部活に行く準備しないと」


「えー、もうそんな時間なの…せっくの冬休みなのに」


「私は水希とずっと一緒にいれるから嬉しいよ」



芽衣に嬉しい言葉を言われると部活へのやる気が出てくる。だけど、芽衣は携帯のLINEに気づき一瞬顔色が曇った。

チラッと見えたLINEの相手の名前が優香と書いてあったから宮田さんだろう。


仲が良さそうに見えたのに…私は急に不安になった。芽衣が私の過去や知らない部分を知ったとき我儘な気持ちになるのが分かる。

私も我儘を通したい。だけど、芽衣は何も言わないからそっとしてあげたいの2つの気持ちに揺れる。どの選択が正しいのだろうと。



「水希、着替えよう」


「うん」



芽衣の言葉に頭を切り替え、私は着替えることにした。無理して聞きたくないし、そのかわり芽衣をいつもより何倍も気にかけようと決めた。










外の空気が冷たくて、でも走ると気持ちいい。吉野ちゃんとタイムを図りながら、私は少しでもタイムが縮むよう探究する。

何かに真剣にやれるって楽しくて、中学の時部活をやれば良かったと後悔をする。

でも、お母さんにママさんバレーに連れて行かれるから部活をしていたらキツくて私には無理だった(お姉ちゃんが凄いよ)



「高瀬先輩、タイム縮まってますよ!」


「本当?やったー!」



走るのが楽しい。バレーも好きだけどやっぱり、バレーは見る方が好きだ。

陸上は基本、自分自身との戦いでたった0.1秒縮めるのか難しくて、でも達成感も凄くて孤独な戦いに近いけど仲間が側にいてくれる。


今日も元気に頑張ろうと私はまた走り出す。部活が楽しくて、みんなと頑張れるのが楽しくて、芽衣が近くで応援してくれるから私の力の源になる。

芽衣をチラッと見て私の頬が緩む。マネージャー姿も可愛くて、ニヤけてしまう。



「水希ー」


「何〜?」


「ごめん、手伝ってもらっていい?」


「いいよー」



さわちんに呼ばれ、私はさわちんの元へ行った。部長のさわちんは最初嫌々言っていたけど今ではみんなのために常に色々考えていて偉いなと思う。私をこき使うけど。



「さわちん、昨日のクリスマスは未来ちゃんとどこに行ったの?」


「遊園地!」


「遊園地かー。遊園地いいよね」


「飾り付けが綺麗で最高だったよ」



さわちんと2人で黙々と作業をし、互いに昨日のクリスマスデートを振り返る。

恋人と過ごすクリスマスはやっぱり楽しく、さわちんの顔も笑顔が満載だ。


あっ、校舎から「花に例えると君はブルースター」が聞こえてきた。ごんちゃんがひかるを想いながら書いた曲で、ノリノリのメロディーが聞いてて楽しい。


私はブルースターを鼻歌で歌いながら作業を頑張る。倉庫整理は時間がある時にしないとなかなか出来ない作業で放置され気味だ。

さわちんは部長として雑用を率先してやり、私はそんなさわちんを尊敬している。


私は鼻歌を歌いながらグラウンドが見えない位置で黙々と作業をした。

放置気味だったら倉庫の整理は時間が掛かり、30分以上かかってしまった。

やっと綺麗になった倉庫からグラウンドに戻ると芽衣の表情がまた暗く私は不安になる。

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