第382話
Kyoko side.02
みんながやっと怖いお面を外し、部屋のカーテンを開け眩い光を灯す。
爽やかな光が入り明るくなった部屋の中には、今日の主役である水希が倒れている。
今も怒りが治らない朝倉さんをひかるちゃんが必死に宥め、そして、何かを耳打ちし…気持ち悪い笑顔の朝倉さんが見え目を逸らす。
きっと…まぁ、知らないふりをしよう。今から床に倒れている水希を起こし誕生日パーティーをやらないといけない。
私は手に持っていたクラッカーを鳴らし、みんなに目で合図を送る。私の合図に気づいたみんなが一斉にクラッカーを鳴らした。
さぁ、今から楽しい水希のサプライズ誕生日パーティーの始まりだ。
「せーの、水希誕生日おめでとうー!」
私の掛け声でみんなでおめでとうと言う。いきなり波乱が起きたけど、不可抗力だし今日の為にみんなで計画したパーティーだ。
楽しくやりたいし、泣き顔の水希が可愛すぎて頭をなでなでしてあげたい。
「水希、お誕生日おめでとう」
「恭子先輩、、ありがとうございます」
「よく、泣かなかったね〜」
「へへ。はい、我慢しました」
理不尽な目にあったのに、自分が悪いと受け入れる水希はどこまで人がいいのか。
だからこそ水希が可愛くて、甘やかしたくなるし、癒してあげたい。
「えっと、先輩方、みんなありがとうございます。まさか、みんなにお祝い…うぐ、、あの物凄く嬉しいです。うぅ、、ごめんなさい。涙が止まらなくて」
この可愛い後輩はどこまでみんなを虜にするつもりだ。みんな、水希の涙にもらい泣きし、微笑み、一斉に今度は抱きついた。
今日だけはみんなの水希でいてほしいから、芽衣ちゃんごめんと呟く。
「さぁ、みんな飲み物を頼んで乾杯しましょう」
菜穂の言葉にみんながそれぞれの飲み物を注文する。私はアイスティーにした。みんな学年もクラスも違うのに水希のために集まり談笑してこの場が楽しい。
私はこのほんわかした場を眺めていると水希が菜穂が買ってきた柿の種を見て興奮する。嬉しそうに、ピーナッツがない〜と喜んでいる姿を見たみんなが吹き出す。
水希は子供っぽくて、正直者で、優しくて、みんなの彼氏としての理想像。そんな水希の恋人の芽衣ちゃんが羨ましい。
飲み物が来る前に柿の種を食べようとした水希は芽衣ちゃんに手を叩かれ落ち込み、その姿が可愛くてまた笑ってしまう。
「よし、飲み物はみんな分来たわね。それじゃ、かんぱーい」
みんなでグラスを掲げ、私達は乾杯をした。主役の水希はアイスティーを一口飲んだあとすぐに柿の種を食べる。
柿の種をポリポリと食べる姿がリスみたいで可愛いすぎる。私は今日、何度水希に可愛いと思うのだろう。それほど、みんなの視線を集めるのが水希だ。
「水希ってさ、柿の種が好きなの?」
と田村さんが疑問な投げかける。同意だ、甘い物が好きなイメージがあった。
よくみんなに甘いお菓子を貰っているし、みんなが思っていたはずだ。
「うん、大好き!一番好きなお菓子」
「へぇー、水希の好きなお菓子はチョコだと思ってた」
「あー、チョコも大好きだけど柿の種を食べるとお姉ちゃんがおじさんくさいって毎回言うから人前で言わなくなったの」
水希が一番の好物を言わなくなったのはまさかの菜穂が原因。菜穂的には揶揄って言っていたと思うけど、まさか自分のせいで本命の好物を言わなかったとは思わないだろう。
菜穂が驚いた顔をし、申し訳なさそうな顔をする。菜穂は水希が残したピーナッツを食べてあげているのに、優しさって難しい。
「お姉ちゃん、ピーナッツ抜きを買ってきてくれてありがとうー」
「いっぱいあるから食べていいからね」
「うん!へへ、幸せ〜」
菜穂がお姉さんの顔をし、こんな風な姉妹っていいなと思った。私にも妹がいるけどお互い自由な感じで過ごし、菜穂や水希みたいな仲の良さとは違う。
妹は中学3年生になり、受験生ってのもあるけど、私ももっと妹と交流を持とうと思った。2人は私の理想の姉妹だ。
みんなで和気あいあいと話をしていると頼んだ料理が次々と運ばれてくる。今日、頼んだ料理は水希の大好物ばかり。
水希が大口を開けて幸せそうに料理を食べている。私達はその姿をチラチラと見ながら料理を食べた。水希の幸せそうな顔とみんなで食べる料理は2倍美味しく感じる。
「あー、ごんちゃん!私の唐揚げ取らないで!」
「さっきの仕返し。ひかるちゃんの…くそー!唐揚げ一個じゃ怒りが」
「まーちゃん。はい、あーん」
「えっ?えっ、、えっ?ひゃい…」
ひかるちゃんは完璧に朝倉さんを手のひらで転がしている。朝倉さんは将来、ひかるちゃんに尻に敷かれるの決定で嬉しそうだ。
「水希。はい、あーん」
「えっ、あっ、、あの」
「いいじゃん。今日だけは無礼講で」
早川さんが水希に唐揚げをあーんして食べさせている。恋人である芽衣ちゃんが気になったけど、芽衣ちゃんは松村さん(姉)に捕まり小動物のように可愛がられている。
どうも、松村さん(姉)は小さい子が好きみたいでおじさんみたいな顔をしながら芽衣ちゃんは頭を撫でられていた。それを羨ましそうに見る佐々木さん。
あぁ、痛そう。2人をジっと見ていた佐々木さんは松村さん(妹)に腕を叩かれていた。
みんな面白い人達ばかりだ。私は…佐藤さんと初めて話して緊張をしている。
何、このイケメン女子。水希同様タラシ感があるけど嫌味がなく、カッコいいー!
彼女がいると知り残念ではあるけど、ずっと話してみたかった人と話せて幸せだ。
私は勿論、文化祭のモテ女コンテストで3年の部は佐藤さんに投票した。
その憧れの人が横にいて幸せだ。だけど、みんなが和気あいあいと過ごしている中、突然喧嘩が始まる。田村さんが仲田(未来)さんに怒っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます