第378話

困った、理不尽な出来事に頭に血が上ったさわちんが相手を睨みつける。さわちんは元々口が悪くクールだけど、熱い心の持ち主だ。

だから、お姉ちゃんはさわちんを部長に推薦した。仲間思いだし、みんなに指示をちゃんとできるタイプだからだ(私は後輩ちゃんにも遠慮してしまうタイプ)



「あんた、振られたなら潔く引き下がったら?ダサいよ」


「うるさい!」


「水希を怪我させて、絶対に許さないから」



怒っている人は冷静さを失う。さわちんの言葉に激怒した女の子が木の棒を投げてきた。

私はまた横にいる吉野ちゃんを庇うように抱きしめる。既に痛い背中にまた衝撃が走り、私は泣きそうだ。

流石に私もそろそろキレそうだ。もし、吉野ちゃんが怪我をしたら黙っていない。


だけどその前にさわちんがブチギレた。私に木の棒が当たるのを見たさわちんが女の子に近づき胸ぐらを掴む。

私は慌ててさわちんを止めに入った。喧嘩はダメだ。相手が悪いにしても、もし殴ってしまったら停学になってしまうかもしれない。



「さわちん、ダメだって」


「だって、こいつが水希に向かって木の棒を投げたんだよ!」


「私は大丈夫だから」



私はこの場をどうやって収めたらいいのか必死に考える。だけど、私は女の子に肩を押されふらついた。

ずっと背中がズキズキと痛み、油断もしていたから踏ん張りが効かず揺らいでしまった。



「先輩!」


「ごめん、吉野ちゃん。ありがとう」


「あんたね!いい加減にして」



ここにお姉ちゃんや恭子先輩がいたらって思ったけど、私がどうにかしないといけない。

3年生に迷惑なんて掛けられないし、これ以上吉野ちゃんにも心配させたくない。



「あの…私があなたの彼氏の初恋の相手か知らないけど、私には恋人がいるから」


「そんなの知らない…それに結局はあんたのせいだし」


「だから、何で水希のせいなの!言いがかりでしょ!」


「さわちん、落ち着いて」



話がなかなか進まない。私はもう話を終わりにしたかった。この子の彼氏の初恋の相手が私だとしても私には芽衣がいる。

きっと、彼氏に急に別れ話をされ気が動転し…八つ当たりをしないと心が保てないと思うけど関係のない吉野ちゃんやさわちんをこれ以上巻き込まないでほしい。



「水希…?」



私は慌てて後ろを振り向いた。芽衣や他の人を巻き込ませたくないからだ。後ろにいたのはひかるで私は慌ててひかるの前に立つ。

相変わらず背中は痛いし、腕は泣きそうなほど痛いし、理不尽な理由で怒られるし、ひかるまで巻き込んでしまって最悪だ。


もうすぐ部活が終わる時間のはずだ。校門から部活帰りの生徒がぞろぞろと出てくる。きっと私達は囲まれ、もしかしたら先生達も来るかもしれない。

私は大ごとにしたくなかった。私は一度筒井のせいで生徒に注目を浴びた。これ以上、学校に迷惑を掛けたくないし今日の出来事がお姉ちゃんに伝わってしまう。



「水希…」


「ひかる、何でもないからグラウンドに戻ってて」


「でも…」


「大丈夫だから」



私はいつも守るようにひかるを背中に隠してきた。友達を守りたい精神が強く、もし何かあったとき後悔しないようしたいからだ。

だから、今日もひかるに危害がないようにって背中に隠したけど、今日はひかるが私の前に立つ。凛とした後ろ姿がカッコイイ。



「水希に何か用ですか」


「あんたには関係ないでしょ」


「だったら、もう帰って下さい。まだ部活中なんです」



ひかるはおっとりしているけど芯がしっかりしている。意外に頑固で、努力家だ。実は負けず嫌いな部分もあり、だからお姉ちゃんがダンスのセンターに抜擢した。



「もういい加減にして。あんた達には関係ないの!」


「あなたこそいい加減にして下さい。何があったのか知りませんけど、これ以上水希に関わらないで」



ひかると女の子が一発触発状態になり場の雰囲気に緊張感が走る。そんな中、呑気な声が後ろから聞こえてきた。「ひかるちゃん〜」って場の空気にそぐわない声色で私達に声を掛けてきたのはごんちゃんだった。



「何?何?どうしたの?」


「まーちゃん…」


「もう!何でこんなに人が来るの」


「水希、頬が赤いけどどうしたの?」


「えっ…水希、この人に叩かれたの?」


「先輩は…この人に平手打ちをされ、木の棒で叩かれました」



やばい、吉野ちゃんが言った言葉にひかるがめちゃくちゃ怒ってる。それにさわちん・ごんちゃんも私が頬を叩かれ、木の棒で叩かれたのを知り騒ぎ怒りだした。

これではこの場の収まらない。それも吉野ちゃんが詳しく話し出したから、私が理不尽に叩かれたことにみんな激怒している。

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