第377話

もうすぐ私の誕生日。憧れの17歳になることにワクワクしている私は浮かれている。

でも、仕方のないことだ。芽衣が誕生日ケーキを焼いてくれる約束をしているし、ひかるも手作りお菓子をくれると言ってくれた。

もうすぐ秋が終わる時期になり、一年の早さを肌で感じる。少し肌寒くなり、ジャージを羽織り、私は吉野ちゃんを探しに行く。


一年生の部員達で外に走りに行き、吉野ちゃん1人だけが学校に戻って来なかった。

しばらく待っても戻って来ない吉野ちゃんを心配してみんなが吉野ちゃんを探している。

私は校内を一年生に任せ、私は学校外を探すことにした。もしかしたら、怪我をして座り込んでいるのではないかと思ったからだ。

周りを見ながらフェンスに沿って歩き、そして私は一直線に全速力で走る。



「こらー!吉野ちゃんを離せ!」


「高瀬先輩…」



ここは外だ。学校内だったらすぐに、私の声で部員や生徒が異変に気づき来てくれたかもしれない。だけど、ここには助っ人はこない。

だから、私が頑張って守らないと…可愛い後輩に手を出させない。私は吉野ちゃんの腕を強引に掴んで入る手を引き離した。



「吉野ちゃん、大丈夫?」


「はい…」


「知ってる人?」


「知らないです…」



うぇぇぇ、ちょっと待って。こんな展開聞いていない。普通は正義の味方が来たら、悪は文句を垂れながら引き下がるのがドラマの常識なのに目の前の人は引き下がらない。

きっと私が同じ女だからだ。同性だったら勝てると判断したのかもしれない。これはまずい。出来れば、女の人と喧嘩をしたくない。



「け、、警察を呼びますよ!」



頼むから早く警察という言葉に反応して引き下がってほしい。でも、相手は私を睨み私の名前を…低い声で呟いた。

怖い形相の女の人が私を睨み、私との距離を急速に縮めてくる。急に近い距離になり戸惑っているといきなり平手打ちをされる。


めちゃくちゃ痛い。なぜ、私は知らない人に平手打ちをされないといけないのだろう。意味が分からないし、私を睨む目が怖い。

ただ、この人を最初から私が目的だったことに気づけた。吉野ちゃんは私のせいで巻き込まれ事故だと知り申し訳ない。



「泥棒猫!」


「えっ?」



えっ?意味が分からないし、痛いから勘弁してほしい。私は泥棒猫なんてしていない。

芽衣は私の彼女だし、吉野ちゃんは可愛い後輩だ。泥棒猫なんて身勝手な言いがかりで反論したいけど、何度も叩いてくるから我慢するしかなかった。流石に女の人を叩けない。



「もうやめてよー。痛いって!」


「うるさい!」


「理由を教えてよ!何で私が泥棒猫なの!」


「涼平に手を出したからよ!」


「そんな人知らないよー」



えぇぇぇ、、道に落ちていた木の棒を拾い私に向かって振り落とす。何でタイミングよくちょっと大きい木の棒なんて落ちてるの?これは神様の天罰?

お菓子に浮かれていた罰がこれなんて余りに酷すぎる。大好きなお菓子に浮かれてもちゃんとダイエットするつもりだったのに。



「痛っ…」


「先輩!大丈夫ですか…」


「あっ、危ない!」



最悪だ、倒れた私に近づいてしまった吉野ちゃんにまた振りかざされた木の棒が当たる。私は咄嗟に吉野ちゃんに覆い被さり、今度はガードなしでもろに背中に当たり激痛が走った。さっきは腕で何とかガードしたけど背中は余りにも痛すぎる。



「何やってるの!!!!!!!」



良かった、タイミングよくさわちんが来てくれた。きっと余りに戻ってこない私達を探しに来てくれたのだろう。



「水希、大丈夫!?」


「うん…」


「あんた、水希と吉野さんに暴力振るって絶対に許さないから!」


「うるさい!こいつが泥棒猫だから悪いの!」



酷い言いがかりを言われ、泣きそうだ。吉野ちゃんに支えられて私は立ち上がり相手の顔をちゃんと見るけど知らない人だ。

この制服、どこの学校だろう?私はこういうのに疎いから分からない。


木の棒で叩かれたお陰で腕が痛み、ズキズキする。きっと、夜には腕に青アザが出来てお風呂で痛みに悶えそうだ。

もうすぐ私の誕生日なのについていない。きっと誰かと間違えられていると思うけど、相手は頭に血が上って私の言葉を聞いてくれないし最悪の状況だ。



「水希があんたに何をしたの!」


「こいつが私の彼氏を奪ったの!」



私は余りの衝撃の告白にフリーズする。私がこの女の子の彼氏を奪う?

そんなこと絶対に有り得ない!私には世界一可愛い彼女がいる。

だから言い返そうとしたらさわちんが「馬鹿なの?水希があんたの彼氏なんて奪うはずないじゃない」って言ってくれて感動した。



「こいつのせいで私は涼平に振られたの!もうすぐ付き合って3ヶ月記念だったのに」


「なんだ…振られた腹いせに水希に八つ当たりか」


「違う!こいつのせいなの!急に好きな人がいるって言われて、、ふざけんな!何が初恋だ!今付き合っているのは私なのに」



初恋とか、私のせいとか、、私にはすぐには理解できない事ばかりだし、腕と背中が痛いし、流石にムカついてきた。



「あんたの元彼が水希のこと好きなの?それに…初恋って」


「そうよ…初恋の人が忘れられないって言われて、、」



この人の元彼さんの初恋が私なのか?でも、涼平って人は知らない。それに男の子と普通に会話したのも高山君が久しぶりだった。

あれ…?高山君の下の名前って何?いつも名字の高山君としか言ってないから私は下の名前を知らない。

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