第367話
Nao side.08
オレンジジュースを飲みながらポテトフライをマヨネーズに付けてもぐもぐ。
時刻は18時半になろうとしている。お母さんが夕飯を作ってくれていると思うけどケーキ・苺パフェ・大盛りのポテトフライ+飲み物5杯と流石にお腹は空かない。お母さんに謝って夕食は明日食べるしかないみたいだ。
まだ残っているポテトフライを食べ終えたら私は帰ろうと思っていた。水希の少女漫画的展開の話を話し合えたからだ。
だけど、恭子が私の携帯を返してくれない。今もみんなで比奈乃ちゃんの写真を見ながら話をしている。出来れば、早く返して欲しいのに盛り上がっているから言いづらい。
「恭子先輩、水希と比奈乃ちゃん…沖縄で本当に何もなかったと思いますか?」
「水希を信じてるしか言えないかな。田村さんは2人の関係を疑ってるの?」
「疑いますよー。だって、ホテルを抜け出して2人で恋愛成就のビーチの朝日を見に行ったなんて…これで何もないなんて、水希は変態だと思います。だって、比奈乃ちゃんこんなにも可愛いですよ。絶対におかしいです」
「そうよね、ある意味変態よね。水希って性欲あるのかしら?それとも、芽衣ちゃんにだけ反応するの?」
「そう言うわけでもないわよ」
「菜穂、どう言う事!?水希って芽衣ちゃん以外に反応するの?」
反応というか、晴菜さんには普通の友達とは違う接し方と優しさがあった。
ただ、芽衣ちゃんには更に違う接し方と優しさがあり、きっと水希は芽衣ちゃんに気づかないうちに一目惚れをしたんだと思う。入学式の日、隣の子が小さくて可愛かったと何度も私に言ってきたから。
「あの…晴菜さんって誰ですか?」
「そっか、松村さんは知らないよね。晴菜さんは私の家庭教師であり、比奈乃ちゃんとは違う偶然の出会いをした人。あっ、そうだ。田村さんと恭子は会ってるわよ。ほら、海で会った女子大生。ナンパされて助けた人」
「えっ、あの綺麗な人ですか?」
「私は神社でも会ったよね〜」
私は松村さんと朝倉さんのために晴菜さんとの海での出会いと神社での出会いを話した。
水希と晴菜さんは自動販売機で同じような出会いをし、ナンパと元彼から助けたことを。
「えっ、比奈乃ちゃんと同じような少女漫画的展開ですよね!?水希先輩、凄い…」
「まぁね。ただ偶然の回数は比奈乃ちゃんが多いかな。松村さんは比奈乃ちゃんと晴菜さん、どっちの展開が好き?」
「えー、悩みます。どっちも好きなので。ただ、半年後に運命の出会い的な感じは胸がドキドキします。ロマンティックすぎて」
ロマンティック…確かにそうね。こんな出会い方をするから相手は水希に惚れちゃうのかしら?それに相手が最低な人ばかりだから、水希の優しさが際立つ。
「あの、水希先輩の晴菜さんに対する優しさの違いってなんですか…?」
「正義のヒーロー的な感じかな」
「好きとかでは…ないですよね?」
「水希は芽衣ちゃんにぞっこんだから」
私は水希の気持ちが揺れていたことは言わなかった。それに、あれは恋ではない。
「あの…晴菜さんの写真とかは」
「松村さん、ノリノリだね。あるよ〜」
恭子から携帯を受け取り私は写真フォルダから晴菜さんの写真を見せる。また、恭子に携帯を奪われ、みんなが阿鼻叫喚だ。
比奈乃ちゃんとは違う可愛さと大人の魅力がある晴菜さん。容姿端麗で才色兼備の晴菜さんに朝倉さんが食いつく。鼻息が荒く、何度も綺麗と言い興奮している。
「朝倉さんって、晴菜さんみたいな年上の人がタイプなの?」
「えっ…あっ、いや。綺麗な人だなって///」
朝倉さんの気持ちも分かる。晴菜さんは年上の魅力があるし、本当に綺麗だし、頭も良い。私が尊敬する人で、憧れの人だ。
「水希って凄いです…同い年なのに、別次元で青春しててぶっ飛んでます」
「朝倉さんにもひかるちゃんって言う可愛い彼女いるから十分青春してるわよ」
「へへ、高瀬先輩ありがとうございます」
可愛い彼女がいて、素敵な恋をしていたらそれは十分幸せな青春をしている。
言っとくけど、比奈乃ちゃんと水希と芽衣ちゃんの三角関係は本気でないからね。
比奈乃ちゃんには恋人がいるし、2人は今も仲の良いペンフレンドなんだ。これは私公認だから信じて良し。
それに、比奈乃ちゃんが日本にいたらきっと晴菜さんを越える最大のライバルになる。
もし、これが少女漫画だったら恋人と別れた比奈乃ちゃんが日本に帰ってくるだろう。
でも、現実はそう簡単に帰ってくることなんてない。お金のこともあるし、まだ比奈乃ちゃんは17歳だ。リアルは漫画より厳しい。
「さぁ、そろそろ帰りましょ」
「はい!今日はありがとうございました!」
3人の後輩に90度のお辞儀をされ、楽しそうに笑い合う顔を見て私も笑う。水希がいなかったら私もこうやって後輩と話せていない。
5人で割り勘をし、これも青春だな〜と胸を躍らせた。高校生活が楽しい。
水希は妹だけど、不思議な子だ。みんなを巻き込み、みんなを笑顔にさせる。いつのまにかみんなの輪を作ってくれる。
姉として苦労は多いけど楽しい。私が水希を同じ高校に入れたかったのは私が水希の側にいたかったからかもしれない。
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