第365話

Nao side.06



外の天気は雨のせいで薄暗く、只今の時刻18時。私が話し出す番になると時間が過ぎるのが早く感じる。

まだ、水希と比奈乃ちゃんの話はこれからだ。今は序章の部分で、これから水希と比奈乃ちゃんのストーリーが始まる。



「レモンティーどうぞ」


「田村さん、ありがとう」



さっ、話しの続きをしましょうか。私は一口レモンティーを飲んで喉を潤した。

みんなでお昼ご飯を食べ終わった後、また比奈乃ちゃん家族と手を触り合いバイバイをした。みんな、旅行に来ているから予定があるのは仕方ないわよね。


ここから、少女漫画的な展開が起きてくる。普通はさ、流石に4度目の偶然はないだろうと思うじゃない?でも、起きたのよ。4度目の偶然の出会いが。



「4度目の奇跡!」


「松村さん、落ち着いて。それに奇跡じゃないから。ただの偶然よ」


「あっ…すみません。高瀬先輩…どうぞ」



沖縄の那覇には波の上のビーチって言われるパワースポットの神社がある。

ここの神社は沖縄で有名な「波上宮」って神社なんだけど知ってる?あっ、朝倉さんと恭子知ってるんだ。凄いよね、ビーチの上に神社があるなんて、初めて見たとき感動した。


この神社は海の安全の祈願などで知られているけど、縁結びでも有名な神社だ。

それを知ったら当然、縁結びのお守りを買いに行くに決まっている。お父さん達が神社で休憩してる間に、私と水希は縁結びのお守りを買いに行くことにした。


私達は色々ある縁結びのお守りから気に入った縁結びのお守りを買って、お父さん達の所まで戻ろうとした。でも、水希が急に反対方向に走りだしたからびっくりした。

水希って耳がいいのよ。あれは動物並みね。私には聞き取れなかった声を聞いた水希が走り出して、慌てて私も水希を追いかけた。


水希は走った勢いのまま、木に体当たりをした。急に止まる事ができなくて、あれは痛そうだったわ。私はちゃんと止まれたわよ。

そこにいたのは比奈乃ちゃんだった。比奈乃ちゃんは家族と離れて写真を撮っていた時に転んで怪我をしたの。その時に足を挫いたみたいで、地面に座り込んでいた。


そこに現れたのが水希。4度目の偶然の出会いだけで凄いのに水希は自分からその偶然を引き寄せた。水希は比奈乃ちゃんの声とは分かっていなかったけど、聞き取れなかったら私達は出会わなかった。



「流石…水希ね」


「流石でしょ、私もそう思うわ」



怪我をした比奈乃ちゃんの前に突然水希が現れ、比奈乃ちゃんはアイドルの最上級並みの笑顔で喜んでいた。

展開が運命的なヒーローの登場で、水希は比奈乃ちゃんをおんぶしてイギリス人のお父さん達の所まで連れて行った。

少女漫画だったらこの後、この2人は恋に落ちるわよね。でも、落ちないのが水希なの。



「あー、やっぱりか。水希らしいわ」


「恭子、そうなのよ。だから、芽衣ちゃんと付き合えたことが奇跡なのよ」



この日は怪我をした比奈乃ちゃん家族と一緒にホテルまで戻る。水希は比奈乃ちゃんをずっと支えてあげて彼氏みたいだった。

そして、せっかくという事でまた夕食も一緒に食べることになって、2人のラブラブぶりは凄かった。アーンされても鈍感な水希はなんとも思っていなさそうだけど。



「水希にイライラするわね」


「恭子、気持ちは分かるけど落ち着いて」



夕ご飯を食べ終わった後、水希と比奈乃ちゃんは2人で海を見に行った。その時もおんぶしていたから、ある意味ここまできたら恐怖よ。漫画を見ているようで怖かったわ。

海で2人がどんな会話をしていたか、どんな事が起きたのかは私は知らない。


もしかして…って言っても水希のことだから何もないと思う。ファーストキスは芽衣ちゃんって言ってたし。

でも、水希が部屋に帰ってきて言ってたの。比奈乃ちゃんはお父さんの故郷のイギリスに住むみたいで、最後に比奈乃ちゃんが行きたかった沖縄に旅行に来たと。


青春よね…これこそ青春だわ。私ね、学生の青春映画が好きなの。自分では味わえない青春って絶対にあるじゃない。それを映像として味わうのが好きなんだけど、水希は映画みたいな青春を常にやっているのよね。


あっ、話が逸れたわね。私達の家族と比奈乃ちゃんの家族は次の日に帰ることになっていたんだけど、夜に…水希が部屋から抜け出していなくなったの。朝たまたま早く起きた私は水希を必死に探した。携帯を持って行ってなかったから連絡取れなくて焦ったわ。



「はぁ、はぁ、ドキドキします!」


「松村さん、楽しそうね」


「はい!最高です!是非、いつか漫画化にして下さい!」



一度話を止めるとトイレに行きたくなってきた。紅茶二杯とコーヒー二杯を飲んだから当たり前だ。私はメニューを見ながら大盛りのポテトフライを二皿頼む。

そして、みんなでトイレ休憩を一度挟む事にした。みんなが慌てて立ち上がる。


我慢していたのね…特に朝倉さん。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る