第364話

Nao side.05



私は昔のことを思い出しながら、晴菜さんとの出会いも少女漫画みたいな出来事だなと思い返す。海で出会い、半年後に地元の神社で出会い、仲良くなり、今では家庭教師をして貰っている。

それも、水希と晴菜さんの出会いが2回とも自動販売機で、悪から助けたヒーロー。


笑ってしまう。水希は色んな人のヒーローになってしまう。幼稚園の時、女の子のヒーローになって以来、ヒーローになる癖がついたのかもしれない。

あの時も水希はあの子のヒーローになっていた。今になって、私の目で見た光景が映像化されたらいいのにと思うほど、ドラマ的に。



「高瀬先輩、コーヒーをどうぞ」


「朝倉さん、ありがとう」



まずはコーヒーを飲み、口と喉を潤す。私は記憶を呼び起こし、あの日の夏の出来事を思い出した。夏は青春映画にぴったりの季節だ。





水希が中学2年生の夏休みに家族で沖縄に旅行に行った。あの日はとても暑く、それでも旅行が楽しくて、私と水希ははしゃいだ。

家族と色んな所を周り、休憩するためにあるカフェに入った。お洒落なカフェで、冷たい飲み物を飲み、景色を眺めていた。


そんな時、可愛い女の子がカフェの前を歩いていた。そして、女の子は落とし物をする。

水希が気づき、その子を追いかけ落とした物を渡す。それがこの子と水希の出会いだ。

幼い雰囲気なのに綺麗で可愛い子だった。身長は今の芽衣ちゃんぐらいかな。


その時は落とし物を渡しただけで終わり。でも次の日の朝、水希は早起きをしホテルを抜け出し海を見に行った時、また昨日会った女の子と水希は出会った。

凄いよね、2日続けて出会うなんて。確率的に低いし漫画みたいな出会い方だった。

この時に、お互い自己紹介をする。水希だから出来たことなのかもしれない。



「ロマンティックですね…憧れる」


「松村さんは少女漫画好き?」


「はい!大好きです!」


「じゃ、もっと好きな展開になるよ」



また、海で出会った女の子の名前は比奈乃ちゃん。見た目はアイドル並みに可愛くて、水希に紹介されたとき家族全員で驚いた。

年齢は水希と同じ14歳で、ハーフだったの。だから、お人形さんみたいで綺麗だった。


比奈乃ちゃんも家族で沖縄に旅行に来てて、偶然同じホテルに泊まっていた。

お父さんがね、イギリス人でめちゃくちゃカッコ良かった…あれは衝撃だった。

あっ、ハーフの子って年齢より年上に見えるよね、水希と同じ年に見えなかったし。


比奈乃ちゃんと水希は急速に仲良しになり、家族で出掛けるまでの間、ずっと一緒にいた。私達の部屋でイチャついていたわ。

ハーフだからか分からないけど、比奈乃ちゃんのスキンシップが凄かった。ずっと、水希と顔の距離が近くて私がドキドキした。


あれは水希だから絶えられたのかも。私が緊張しないの?って聞いたら、平気だよって言われたから。友達ともあれぐらいの距離で話すからって言われた時は逆に驚いたけど。

よくよく考えたら、こんな強烈な攻撃を受けても平気な水希が芽衣ちゃんに反応したのは縁でありタイプだったのかもね。



「あの、比奈乃ちゃんは水希のこと…」


「まぁ、朝倉さん待って。今から続きを話すから」



その日は家族で首里城を見に行く予定で、準備を終えたお母さん達に出掛けるわよと言われ、比奈乃ちゃんは家族の元へ戻った。

私達は首里城を見た後、買い物をするために国際通りに行ったの。その時に、また比奈乃ちゃんと比奈乃ちゃんの家族に会った。


確かに観光名所だから出会う確率は上がるかもしれないけど時間はどうにもならない。

別に待ち合わせしていたわけでもないし、比奈乃ちゃんにどこに行くかも伝えてなかった。なのに、また比奈乃ちゃんと出会い、みんで凄いねと笑い合った。


せっかくだからと、みんなで昼食を食べることになり、ソーキそばを食べに行くため親達が携帯でお店を探した。

親がお店のピックアップしてる間に、水希と比奈乃ちゃんはお店でアクセサリーを見ていた。私も少し離れた場所で自分用のアクセサリーをお土産用に必死に選んでいた。


水希ってね、昔からプレゼント癖があるの。仲良くなった子にプレゼントをあげるのが好きで、誕生日プレゼントとかマメだった。

その時も水希は比奈乃ちゃんが気に入ったネックレスを買ってあげていた。やる事がタラシよね。これは弁解の余地がないわ。


比奈乃ちゃんはとても喜んで、水希に抱きついていたわ。私は青春ねって思いながら見てた。ちょっと、、何で恭子が呆れるのよ。

あれを見て〈青春ね〉って普通思うでしょ、えっ…思わない?そうなの?へぇ…そっか。

まぁ、続きを話すわね。きっと私は水希に害されていたのかもしれない。


水希って比奈乃ちゃんほどではないけどスキンシップ激しい方だったし、私は青春映画が好きだから同じ展開で普通と思ったのかも。

そして、私達は一緒にソーキそばを食べに行った。みんなでわちゃわちゃしながら食べて楽しかった。比奈乃ちゃんのお父さんが最高にカッコよくて目の保養になったし。



「あっ、コーヒーがなくなっちゃった」


「私が入れてきます!」


「じゃ、田村さんレモンティーでお願い」


「はい、お任せ下さい」



私はソファに背中を預ける。少しばかりの小休憩。外は大雨なのに、誰も帰ろうとしない。それぐらい、水希の話に夢中だ。

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