第346話

Nao side.02



みんなも分かってる通り、水希は先輩や後輩から好かれやすい。勿論、同級生にもだ。

先輩からしたら水希は可愛い後輩で、後輩からしたら親しみやすい先輩であり、とにかくみんなにフレンドリーで壁を作らない水希の周りには常に沢山の人がいた。


水希は絶対に人によって態度を変えない。みんなに平等で、水希の中では好きな人・苦手な人しか分類がないみたいだ。

元生徒会の佐藤優希・早川望・松村恵梨香はトップクラスの人気のメンバーだ。普通、人気者と仲良くなったとき自慢したり緊張したり、時には態度が変わる人がいる。


でも、水希は最初緊張しただけで後は普通に慕っている先輩として接していた。

常に周りからキャーキャーと言われてきた3人は水希の変わらない態度とフレンドリーさが嬉しいと言っていた。特に望は後輩との距離に悩んでいたから可愛がっていた。


そんな水希はよく言えば良い子で、悪く言えば人タラシで私は姉として難しい立場だ。

下心が一切ないからタラシぶりを怒れないし、下心が無いからこそタチが悪い。

そんな水希は一度も自分がモテると自覚していない。確実にモテているのに、まさか自分がが強く現実を受け入れようとしない。


中学生の時、水希は告白をされたことがないと言っている。でも、それは男性からで女の子からは実は何度かされている。

だけど「好き」と言われても友達の意味だと勝手に解釈して、ニコニコしながら私も好きだよ〜って言っている残念な妹の姿を見たことがある。本気で気づいていないのが凄い。


さて、残念な妹の過去の話は終わり。現在に戻ろう。これ以上、妹の残念な話はしたくないし、今からクイズが始まる。

椅子に座り、帽子を被り、手にはボタンを持ち今から始まるクイズにドキドキしている3人に私はまたニヤリと笑う。

みんなの前に大きな紙が張り出され、これから回答者が問題を選びクイズを答えていく。


私が今回クイズ大会をすることにしたのは実は3人には共通点があるからだ。

それは…アイドルが好き!特に女性アイドルが好きで、そんな3人が熱くなれる問題をアイドル好きの子達と話し合って作成した。

楽しいイベントで難しい問題はつまらないし、みんなが楽しめるから丁度いい。


それに、この3人にこんな一面があるってのを知れる。特に優希がアイドル好きってあんまり知れ渡ってないから楽しみだ。

回答者の3人は緊張しているけど、好きなアイドルの曲が流れているから顔は笑顔だ。



「皆さ〜ん、只今よりクイズ大会を行いたいと思います。今回のクイズは全て回答者が好きなアイドル問題となります。あっ、観客の皆さんは正解が分かっても答えちゃダメですよ。

因みに、優勝者には高級ケーキを後日プレゼントします。そして、敗者には罰ゲームで…後ほどお教えしますね」



クイズの問題がアイドルの問題だと知り3人は驚いている。勉強に自信がない水希なんてやった!と手を上げ喜び、そして優希がアイドル好きと分かり楽しそうに話し始めた。

今回のクイズ大会で3人のイメージは変わるだろう。特に優希はバスケ部で学校一モテる。観客は優希がアイドルが好きと知りザワザワしていて私は更に楽しくなってきた。


水希を生徒会長にしてよかった。私は高校最後の文化祭を楽しみで水希が生徒会長になったら色々裏でやりやすいと考えていた。

あと、弱みを握った田村さんや手のひらで転がしやすい朝倉さん。恵梨香に頭が上がらない朱音ちゃんと真里ちゃん。私にとって最高な布陣だ。動かしやすい生徒会メンバー。


さて、そろそろ一番手の優希が問題を選びクイズが始まる。みんなが楽しそうにしている姿をみると私も楽しい。

言っとくけど、私はみんなが楽しめる文化祭を作りたいだけで自己満足ではやっていない。

パーセントで言うと60%が自己満足だけど、この割合は私からしたらかなり抑えている。



来年、私は高校を卒業する。10代の思い出は人生の最高の思い出として残る。だから、沢山の思い出をみんなと共有し作りたかった。

ちょっと、センチメンタルになってしまったけど、10秒後には水希の生き生きとした姿に呆れセンチメンタルなんて吹っ飛ぶ。


流石、私の妹。最後まで私を楽しませてくれる。大学生になったら更に楽しみだわ。

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