第318話
この前、8月に突入したと思ったらあっという間に8月中旬になった。がむしゃらにやっていると1日が終わるのが早い。
部活動はお盆休み期間に入り、部員は久しぶりのゆっくり出来る休息に入る。
去年は芽衣達と海に行き、今年はお姉ちゃん達と横浜に旅行に行く。一泊2日の旅行で、めちゃくちゃ楽しみにしていた。
お姉ちゃんに渡されたしおりには朝からの細かいスケジュールが書いてあり、今日は5時起きで支度の準備をしている。
事前準備はできており、宿題も終わらせた。髪も切り、洋服もお気に入りの服を着てヘアセットも準備万端だ。
芽衣と恭子先輩と待ち合わせをしている駅まで向かうため私達はバスに乗った。
恭子先輩に会うのが久しぶりでテンションが上がる。やっぱり、いつも部活で顔を合わせていた恭子先輩がいないのは寂しい。
改札口の近くに立っている恭子先輩が見え、私は大きく手を振った。ぴょんぴょんと駆け寄ると笑顔で頭を撫でられ嬉しい。
「水希、久しぶりー」
「お久しぶりですー」
「ふふ、相変わらずいい笑顔だね」
互いにニコニコと笑い合う。お姉ちゃんが小声で「本当、笑顔だけいいのよ…不思議だわ」と小声で言ったのが聞こえたけど最近自覚してるからそれでいい。
取り柄がないよりマシだ。芽衣も私の笑顔が好きって言ってくれるしね。
「あれ?芽衣はまだですか?」
「水希ー」
「あっ、芽衣!」
可愛い洋服で手を振りながら小走りで来た芽衣に顔がニヤける。早速、手提げのバックを芽衣の手から取り自分の鞄と一緒に持つ。
恋人としてね、当然のことだよね。っていうか、旅行に行く際にやりたかったことだ。
「水希、ありがとう」
「へへ」
「朝からイチャイチャしない」
恭子先輩がぶつぶつと「水希を見てると私の彼氏の理想が高くなる…」と呟いている。
これぐらい普通だよね?寧ろ、背中に背負っているリュックも持ってあげたいぐらいだ。
「よし、みんな揃ったわね。さぁ、横浜に行くわよ!」
お姉ちゃんが仕切りを担当し、私達は電車に乗る。そこそこ近いから旅行って感じは減るけど、観光が楽しみだ。小さい頃以来の横浜で、今は隣には芽衣がいる。
案外、近場の県って小さい頃に行ってることが多いけど、大きくなった時にほぼ覚えてなくて新たな気持ちで行けて楽しい。
電車に乗ってワクワクした気持ちで窓から外を眺める。みんなでお菓子を食べながらワイワイと笑いあった。
去年はひかるとさわちんがいて…今はそれぞれにみんな恋人がいる。1年で関係が変わり、みんなそれぞれ幸せを掴んでいる(ひかるは、、予定の話だ)
お姉ちゃんも恭子先輩はいつかすぐに素敵な恋人が出来るだろう。2人ともスペックが高く、いない方がおかしい感じだ。
恭子先輩は私のせいで理想が高くなり大変って嘆いているけど普通だと思っている。恋人に優しくするのは当たり前のことだ。
お姉ちゃんは…どうなんだろう?理想とかあるのだろうか?子供っぽい人は嫌だと言ってたけど、お姉ちゃんに合う人は少ないと思う。
「何、ジロジロ見て」
「いや…お姉ちゃんの理想の人ってどんな人なんだろうなって」
「理想の人?そうね、優しくて、しっかりとした大人の人かしら」
「私さ、菜穂の恋人って水希みたいな人じゃないと無理な気がする」
「恭子、何でよ」
恭子先輩に私の名前を出され、心の中で絶対に嫌だと反抗した。口に出したから恐ろしいから言えないけど。
「菜穂の全て受け止めてくれる人って水希だと思うのよ。水希は菜穂に何をされても受け止めるし、優しいし、Mだし」
「恭子先輩酷いですよ!私はMじゃないです」
「そこ?いや、水希はMでしょ。よく芽衣ちゃんに叩かれてるし、菜穂に逆らえないし、どんな仕打ちをされても優しいじゃん」
「それは…」
「私は水希なんて絶対に嫌よ。タラシだし」
私だってお姉ちゃんみたいな女王様は嫌だ。優しい部分はもちろんあるけど、きっとお姉ちゃんと私が付き合ったら下僕になる。
もうすでに下僕なのに、考えたくもない。
「菜穂はずっと水希といるから水希の有り難みに気づいてないのよ。なかなかいないわよ、ここまでのM」
褒められてはないよね、Mしか協調されなかったし。だけど、芽衣が確かにって横で頷くから私はMなのか…と肩を落とした。
芽衣には時々、Sになるもんと心の中で呟こうとしたら芽衣と目が合い、口に出すなよオーラを感じた。心の中を読まれている。
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