第298話
マラソン大会が終わり、一度全校生徒は学校に戻る。遅めのお昼ご飯を食べ、HRが終わったら部活となってる。
帰る際、私は芽衣をおんぶをしようとしたけど恥ずかしいから無理と言われ渋々諦めた。
「水希はやっぱり凄いね」
「そうかな〜」
「13位って凄いよ」
「芽衣からのご褒美楽しみだな〜」
「・・・///」
るんるん気分で足取りの軽い私は浮かれている。これは天罰なのか、、真剣に走ったけど恭子先輩に手助けされて13位になった罰なのかもしれない(さわちんは孤独な戦いを貫いたのに私は話しながら走った)
気が抜けていた私は土手から転げ落ちる。ぎゃーと騒ぎながら落ちみんなに笑われた。
私の生徒会長としての威厳が…ただでさえ生徒会のメンバーから威厳がないのに、他の生徒からも威厳がなくなるのは嫌だ。
必死に平静を取り繕い土手を登り切った私の顔は苦笑いだ。芽衣がジャージに付いた草や土を落としてくれて情けない気持ちになる。
「水希、、大丈夫?」
「うん」
くそ、さわちんがニヤニヤしながら私を見下している。隣いる未来ちゃんが心配そうな顔をしてくれているのが救いだ。
「水希、バカだなー」
「ごんちゃん、分かってるよー」
「水希、怪我してない…?」
「大丈夫」
「あっ、前髪に草が」
「えっ、芽衣取って」
私の彼女は優しい。背伸びして私の前髪を触り、草を取ってくれた。芽衣の可愛い顔が近く私の顔がニヤけてくる。
「水希・芽衣、早く行くよー。みんなに置いてかれるよ」
いつのまにか一番最後になった私達。ラッキーと思い、芽衣と手を繋いだ。
ごんちゃんはイチャイチャするなーと拗ねていたけど可愛い彼女が出来たらみんな私みたいになるよ。気持ちが抑えきれないもん。
「あー、私も恋したいー!」
「へへ、いいだろう〜」
「ごんちゃん、1年生の子に告白されたって言ってなかった?」
「えっ!私、聞いてない!」
「芽衣ー、水希には内緒にしてたのにー」
知らない、知らない。ごんちゃんがまさか告白されていたなんて。イケメンな顔をしたごんちゃんなんて知らない。
「付き合ってるの!?」
「保留にしてる…」
「えっ!何で!」
「だって、その子のこと知らないし…」
「友達から始めればいいじゃん」
「うん、私もそう言ったけど、、友達じゃ嫌だって言われて」
確かに知らない子から告白されても、ごんちゃんからしたら戸惑うだろう。相手のことを知った上じゃないと私も無理だ。
さわちんも一度、未来ちゃんからの告白を断ってるし…友達から関係を始めて今はラブラブだからごんちゃんも同じ形でスタートしたかったのかもしれない。
「何で友達からじゃダメなのかな…」
「きっと、不安なんだよ。ごんちゃんと友達止まりなるかもしれないのが嫌なのかも」
芽衣の言葉に「そっか…」と落ち込むごんちゃん。未来ちゃんは友達からでもいいと言っていたから人それぞれだね。
「試しにって酷い言葉かもしれないけど…付き合ってみた方がいいのかな?」
「ちょっと待ったー!」
「えっ、、水希…はっ、もしかして私のことを。キャー、照れる〜」
「痛い!えっ、、違うって。芽衣、誤解だから…ごんちゃんも変なこと言わないで!」
吉野ちゃんは私のお気に入りの後輩ちゃんだ。だからこそ…気持ちを汲んであげたい。
吉野ちゃんを知ってもらった上で、ごんちゃんにどうするかを決めて欲しかった。
ごんちゃんは良い子だ。私をイラつかせる(揶揄う)天才だけど優しい。きっと恋人になった人を大切にしてくれるだろう。
あれだけ、ごんちゃんと吉野ちゃんを関わらさせたくないと思っていたけど、折れた私は意固地な考えを捨てることにした。
悔しい気持ちはまだあるけど、ごんちゃんだったら見張れるしお仕置きも出来る。
恋の先輩として厳格なアドバイスも出来る!
「明日!雨が降ったら…部活の見学に行く」
「いいよ〜。吉野ちゃんだっけ?一緒に来るの?」
「うん…」
胃がキリキリする。吉野ちゃんの親になった気分だ。娘を嫁に出す気持ちってこんな感じなのかな?
吉野ちゃんのアシストしたい、明日晴れろ!と気持ちが定まらないけど、天気に運命を任せたい。もし、明日晴れたらそれは天命だ。
吉野ちゃんの心の内を知らない芽衣が「明日は雨だよ〜」ってさりげなく教えてくれる。それも降水確率100%と聞いて神様は吉野ちゃんの恋を応援してることが分かった。
胃が痛い。だけど、先輩としてあんなキラキラした顔でごんちゃんを見つめる吉野ちゃんを応援しなきゃ先輩として名が折れる。
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