第290話

「あの、、橋下さん。私、朱音と付き合ってるよ」


「知ってる」


「知ってたんだ…」


「私が好きなのは先輩×後輩だから」



私、部活に行ってもいいかな?みんな苦笑いしかできなくなり戸惑っている。

きっと橋下さんは自分の理想が強すぎて暴走したのだろう。邪魔者を排除したかった。



「橋下さん、ひかるにちゃんと謝ってほしい。そして、暴走するのはやめたほうがいいよ。真里ちゃんも佐藤先輩も困ると思う」


「分かってます…。竹本先輩、すみませんでした。佐々木さんも、ごめんなさい」


「よし!これで解決だね〜」



一件落着だ。きっと橋下さんはもう暴走しないだろう。本気で佐々木さんに怒られたし、佐藤先輩が知ったら悲しみ、真里ちゃんに声を掛けるのを躊躇するだろうし。



「さっ、みんな解散〜」


「高瀬先輩、ありがとうございます」


「気にしないでいいよ。先輩だしね」



私は敢えて先輩って言葉を強調する。決して寂しかったからではない。橋下さんのことを意識したからではない。拗ねているからだ。

生徒会長して威厳がないのが悲しい。



「ひかる、部活に行くでしょ」


「うん、後でジュース奢ってあげるね」


「やったー」


「あの、、お二人はお似合いだと思っています」



やっと問題ごとは終わり、ホッとしていたら橋下さんが部屋から出て行く時、顔を赤らめながらとんでもないことを言う。

前に一度、ひかるとの関係を誤解され噂になり大変だった。本気で勘弁してほしい。

また、みんな苦笑いになりため息を吐く。一気に疲れが襲ってきた。



「竹本先輩、ご迷惑をお掛けしました」


「佐々木さん、気にしないで」


「それでは失礼します」



生徒会室のドアを閉め、鍵を掛ける。ひかると職員室まで行き鍵を返した。

2人で問題解決して良かったねと話し合う。橋下さんが言った言葉は気にしないことにした(ほっとくのが一番だ)



「水希、改めてありがとう」


「気にしないでよー」


「水希はカッコいいからね」


「あっ…気にしているのバレた?」


「ショックを受けた顔が面白かったもん」



悪戯っ子みたいに笑うひかるにホッとする。雨に濡れたひかるは悲しそうな顔をしていた。きっと、かなりショックだったと思う…ひかるの違和感に気づけて良かった。



「女子校ってさ、面白いね」


「確かに。橋下さんにはビックリした」


「前、ひかるとも噂になったからね〜」


「あれは水希が悪いと思うよ。お姫様抱っこは噂のネタになるもん」


「えー、、私が悪いのか」


「私が芽衣ちゃんの立場だったら怒る」



私はすでに何回もお姫様抱っこの件で芽衣に怒られ叩かれている。芽衣がやきもち焼きってなわけではないのか。反省しなきゃ…。



「でも、水希に魅力があるから噂になるんだよ」


「えー、魅力なんてないよ。お姉ちゃんにボロクソ言われたもん。魅力0だって」


「先輩は家族だからだよ。いい加減、モテてるのに気づいて。芽衣ちゃんに怒られるよ」


「うー、、はい」



私の魅力なんて全然分からないし、知ってもどうすればいいのか分からない。

でも、ひかるに好きと言われた時…こんな私のどこがいいのだろうと思ったけど嬉しかった。生まれて初めての告白だったし。



「あっ、そう言えば佐々木さんって同級生と付き合ってるの?」


「うん、生徒会の会計の子だよ」


「あー、あの子。そっか、だからか」



この前の生徒会室でのやりとりを思い出したのだろう。朱音ちゃん、感情的になっていて大変だったし。



「ひかる!大丈夫だった!?」



みんなが筋トレをしている場所にジャージに着替えて行くと、さわちんが走ってきてひかるを心配している。

思いっきり、私の存在を無視されたけど気にしない。芽衣もひかるを見て心配そうな顔をする。大丈夫、まだ大丈夫。



「問題は解決したから大丈夫だよ」


「良かった、水希じゃ頼りないから心配で」



まだ、大丈夫だ。私の心には余裕がある。



「ひかるちゃん、大丈夫だった?芽衣ちゃんから聞いて驚いたわ」


「高瀬先輩、心配掛けてすみません」


「妹じゃ頼りにならないから不安で仕方なかったわ」



そろそろ、泣いてもいいかな。外の雨のように泣きたくなってきた。私なりに頑張ったのに酷いよ。ひかるをみんなで囲んで蚊帳の外にいる私。切ないし悲しい。



「水希、頑張ったね」


「芽衣…ありがとう。嬉しい」



やっと、芽衣だけが私の存在に気づき褒めてくれた。流石私の彼女だ。

でも、お姉ちゃん達もやっと私の存在に気づき手荒い褒め方をしてきて…嬉しくない。

頭をガシガシしないで、、頭が揺れる。



「今日だけは褒めてあげる」


「お姉ちゃん、痛いよ」


「水希、ひかるに迷惑掛けるなよ」


「さわちん。何で私がひかるに迷惑かける前提なの!」



みんな好き勝手言い、私の頭で遊ぶ。でも、このわちゃわちゃする空間は大好きだ。

今日だけは暴言を言われても素直に笑おう。

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