第287話
私は高校生になって初めての文化祭を楽しみにしていた。でも今は仮病を使い休みたい。
だけど、私は生徒会長だ。休めるわけなく、色んなことを仕切らないといけない。
芽衣と文化祭を楽しめると思ったのにコンテストなんて考えただけでゲンナリする。
ごんちゃんはまだ私がボーカルやることを諦めてないし、ため息が出てきた。
「3人とも頑張ってね」
「嫌です…(人前嫌い!)」
「私も無理です…」
考えだけで胃が痛くなる。やっと少しだけみんなの前で話すことが出来る様になったのにコンテストなんて無理だ。
「でも、グランプリ者には商品出るわよ」
「えっ、商品!何ですか!?」
「高級チョコレート」
「もし出れたら、頑張ります!」
「水希はチョコの事になると元気になるね。真里もやる気出てきた?」
「はい///。私もチョコが大好きなので」
チョコレートに釣られた私達を佐藤先輩が笑っている。3年生の部でグランプリ取ったらチョコを2人にあげるよって言われ、佐藤先輩に投票しなきゃと決心した。
きっと佐藤先輩は、私が投票しなくても確実にグランプリを取るだろうけど。
「ふふふ」
「松村先輩どうしました?」
「妹がこっちを見て拗ねてるなって」
あっ、本当だ。チラッと朱音ちゃんを見ると拗ねた顔をし芽衣は困った顔をしている。
松村先輩の悪戯心か小悪魔なのか、急に真里ちゃんに引っ付き始めた。
大丈夫なのだろうか?朱音ちゃんの顔がものすごく怖い。まるで鬼の形相だ。
「松村先輩…大丈夫なんですか?」
「いいの。朱音が真里を無視するから悪い」
松村先輩に引っ付かれて戸惑う真里ちゃんを見かねて聞いたけど、松村先輩は笑顔で楽しんでいる。流石、朱音ちゃんのお姉さんだ。
「先輩…そろそろ勘弁して下さいー」
「真里、もっと堂々としなさいよ」
「朱音の顔が怖いです…」
真里ちゃんに御愁傷様と心の中で拝んだ。きっとまた2人は喧嘩になると思うけど頑張って欲しい。喧嘩の先に深い愛があるよ。
あっ、芽衣が私に助けを求めている。タイミングよく休憩時間を終わる音が鳴り、私は芽衣の元へ行き帰ろうと伝える。
「朱音ちゃん、私達帰るね」
「植村先輩…また会いにきて下さいね」
「うん、また来るね」
最後の最後まで私をスルーする朱音ちゃん。私の言葉に対して返事がなく寂しい。
それでもめげない私は部活頑張ってねと伝えるとやっと「はい」と言ってもらえた。二文字だけど返事が返ってきて嬉しい。
「芽衣、朱音ちゃんとどんな話してたの?」
「真里ちゃんの愚痴と松村先輩の愚痴かな」
「あー、松村先輩。わざと真里ちゃんに引っ付いたからね」
「めちゃくちゃ怒ってたよ」
真里ちゃんも朱音ちゃんも、もっと素直に気持ちを言えたらきっと仲直りできる。
一番手っ取り早いのはキスの上書きを出来たら今まで以上にラブラブになれるとは思うけど純粋な2人は進みが遅い。
「2人を見ていると、昔の自分を思い出す」
「そうなの?」
「水希がモテるから毎日不安で苦しかった」
「ごめんねって言うのは変だけど…不安にさせてごめんなさい」
「その分、沢山愛情をくれたから大丈夫」
私と芽衣は色んな悩みを乗り越えて今がある。私が芽衣を沢山苦しめちゃったけど、乗り越えられてよかった。
「恋の先輩として応援したいね」
「でも、私は朱音ちゃんに嫌われてるからな…」
「そんなことはないよ。きっと、水希を真里ちゃんと重ねてしまって苦しんでいると思う」
「そっか、、じゃ、私も頑張って応援しなきゃ」
芽衣は私より何倍も大人で、いつも支えてくれて感謝しなきゃいけない。
私の活力は芽衣で芽衣を失ったら抜け殻だ。これからも頑張らなきゃ。小さくて可愛い手を離したくないよ。
「芽衣のために頑張るね」
「ふふ、何を頑張るの?」
「うーん、まずはマラソン大会で上位入賞する!」
「・・・マラソン大会あるの?」
「うん、、来月に」
「へぇ…そうなんだ」
あっ、しまった。運動が苦手な芽衣があからさまに落ち込んだ。きっと一緒に走ろうと言っても先に走ってって言うだろう。
でも、私も助かる。マラソンほど自分のペースで走らないと逆にキツいからだ。
「特訓する?」
「無理だもん…」
「ほら、ゆっくりでも最後まで走り切ればいいし」
「最後まで走りきれる自信がない…」
「大丈夫だって。リタイア・・」
うぉ、、芽衣が怒った顔をする。女心はデリケートで難しい。必死に打開策を考えたけど逆に怒らせる羽目になった。
でも、無理をするよりはいいと思うよ。
「水希の運動神経が羨ましい…」
「私は短距離選手だから長距離は苦手だよ」
「さっき上位入賞目指すって言ったの嘘なの?」
「頑張ります…」
短距離と長距離はフォームも持久力の鍛え方も違う。お姉ちゃんは例外で短距離も早いけど私は苦手だ。
でも、頑張ると言ってしまったからには頑張らないといけない。言葉って大事だ。軽はずみの発言は大きな墓穴を掘る。
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