第283話

今も首元に痛みが残り苦しい。さわちんが強烈な力で私の首元の服を握ったからだ。

芽衣と帰りながら首元を触っているとやっと怒りが治ったみたいで心配してくれた。



「大丈夫?」


「うん、大丈夫だよ」


「朱音ちゃん、大変そうだね。あと、真里ちゃんって水希と似てる」


「ごめんね…」



無意識な行動って気づかないうちにしてるからなかなかやめることが出来ず、意識して我慢しようとしてもいつか無理が出る。

朱音ちゃんも真里ちゃんを気にして辛そうだった。私のせいで無理強いさせているのではないかと思ってしまうはずだ。


芽衣は私の行動を受け入れてくれた。本気で申し訳ないし…自分が情けない。

今もタラシの部分がよく分かってないし、直そうにもどう直せば良いのか分からない。

お姉ちゃんに、芽衣に他の人より何十倍も優しくしなさいと言われ肝に銘じている。



「タラシってどうやったら治るんだろう」


「芽衣…ごめんって」


「でもね、そのタラシとして優しい部分に惹かれたから諦めるしかないよね」


「芽衣を大事にします!」


「お手」


「わん…」



お手と言われ、芽衣の手の上に手を置くと握ってくれて私のご主人様は優しい。

私の尻尾は全力で左右に動き、嬉しさで飛び跳ねたい気持ちだ。



「水希と付き合えて幸せだよ」


「私も!」


「大事にしてね」


「もちろん!死ぬまで大事にします」



恋愛は苦難を乗り越えた先に大きな愛がある。きっと真里ちゃんと朱音ちゃんも今を乗り越えたらきっと大丈夫だろう。

2人の愛は強い。きっと上手くいくはずだ。










芽衣を家に送ったあとのんびり家に帰り、シャワーを浴びたあと夕ご飯を食べる。

机に置いていた携帯にLINEが来て、私は急いで残りのご飯を掻き込んだ。

真里ちゃんに電話を掛けるため自分の部屋に行く。ベッドに座り、電話を掛けると暗い声で「先輩…」と言われ緊張感が走る。


もしかして、また大きな喧嘩をしたのではないかと思い話を聞くと朱音ちゃんにどう接したらいいのか分からないと言われ私も悩む。

私は怒っている芽衣に沢山謝り許してもらった。真里ちゃんも同じことをしたら許して貰えそうだけどどうなんだろう…。


まだ2人はキスも経験していない。一番のネックはそこで経験してないからこそ朱音ちゃんの逆鱗が大きく、許せなかったのだろう。

アドバイスとして上手く言えるのか難しいけど、私は実体験を話した。ひかるの名前は伏せて話すと真里ちゃんが驚いていた。


私達は同じことを体験し、同じように彼女からめちゃくちゃ怒られている。一つ違うのは私のファーストキスは芽衣であることだ。

真里ちゃんも朱音ちゃんがファーストキスの相手であればここまで揉めることはなかったのかもしれない。



「真里ちゃん…こんなこと言っていいのか分からないけど、朱音ちゃんとキスしたら上書きできると思うよ」


「キス!えっ、、///キスの上書きですか…」


「まだ2人がしてないから朱音ちゃんは気にしていると思うし」


「そうですよね…頑張ってみます///」



真里ちゃんのドキドキ感が電話越しに伝わってくる。きっと、真里ちゃんの上書きのキスが出来たら上手くいくはずだ。



「先輩、相談に乗ってもらいありがとうございます」


「頑張ってね」


「はい、勇気を出してみます///」



良かった、これできっと上手くいく。朱音ちゃんからは威厳を失ったけど、真里ちゃんには威厳があるから十分だ。

2人の仲が上手くいけば、朱音ちゃんは真里ちゃんに弱いため問題はないだろう。

あとは、さわちんだ。ひかるのことをどう説明したらいいのか分からない。


真里ちゃんとの電話を終え、喉が渇き下に降りると足に包帯を巻いたお姉ちゃんに今週までは晴菜さんに家に来てもらって勉強することになったと言われた。勿論、晴菜さんを家まで送るのは私の役目だ。

仁王立ちのお姉ちゃんに晴菜さんを泣かしたら許さないからねと言われ、頭を抱える。


明日、晴菜さんとどう接すればいいのか分からない。私の携帯にはさわちんから着信があり更に頭が痛くなってきた。

真里ちゃん以上に困難に陥った私はトボトボと二階に上がる。まずはさわちんにひかるのことを説明しないといけない。きっと、私のせいだと怒るだろう。


恐る恐る電話に出ると「水希!早く説明しろー」と耳が痛くなる声でいきなり怒られた。ベッドの上に正座をし説明するとまた怒られ、ひかるも芽衣もこんな私に引っかかって可哀想と言われる。

さわちんはいつも言葉が悪すぎる。さわちんに2時間、責められ怒られ凹みまくった。



私に平穏な日々はいつ来るのかなって天を見る。どこからかお姉ちゃんの声が聞こえ、私の悪いと打ち返しにあった。

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