第280話

1週間の始まりの月曜日、空は曇り今にも雨が降りそうだ。昨日の夜、真里ちゃんと電話をし大変だった。

泣きじゃくりの真里ちゃんが朱音ちゃんに嫌われたと言い、どうしたらいいのか分からないと落ち込んでいた。


真里ちゃんのキスは朱音ちゃんと付き合う前のことだけど、朱音ちゃんにとって受け入れられない現実であり拒絶だった。

この場合、朱音ちゃんが真里ちゃんの過去を受け入れない限り前には進まない。

過去を変えられないなら、2人で楽しい未来を作るしかないと思う。



「水希、おはよん」


「ごんちゃん、おはよう。朝から元気だね」


「へへへ、実は新しいギター買ったの!」


「おぉ、凄いね」


「ずっと欲しかったギターで、音が最高なんだ。早く、文化祭で弾きたいよー。水希はボーカルを頑張ってね」


「軽音部に新入部員入ったでしょ。その子達にボーカルさせてよ」


「無理だね。部活紹介映像で水希がボーカルって暗黙の了解になってるから」



未だに私が所属している部活が軽音部と勘違いしている人がいる。生徒会長になった時、一年生から歌声素敵ですと声を掛けられ苦笑いしかできなかった。

ミクロモザイクは私の恋の歌で、まだ芽衣とは付き合う前の歌詞だから懐かしいけど、みんなに聞かれると恥ずかしい。



「ごんちゃん、恋って難しいね」


「えっ、何?芽衣と喧嘩したの!?」


「違うよ。後輩の話」


「恋ね…失恋したばかりの私には恋が分からないよ。両思いになれる人が羨ましい」


「そうだよね、好きな人と両思いになれるって幸せなことだよね」



真里ちゃんと朱音ちゃんにはやっぱり仲直りしてほしい。真里ちゃんは嫌われたと言ったいるけど、朱音ちゃんの本心ではないと思うし苦しんでいるはずだ。



「何…私をジッと見て」


「水希って、芽衣の恋人なんだよね」


「そうだよ」


「ってことは、芽衣の全てを知ってるよね」


「全てって…何を?」


「恋人達がする全ての行為」


「ごんちゃん!やめてよ///」



ごんちゃんが急に変なことを言い出すから、危うく咳き込みそうになった。

私と芽衣は付き合って約10ヶ月だ。あんなに可愛い子とプラトニックラブを貫くのは到底無理な話で、小悪魔な芽衣に勝てる人なんていない。



「芽衣って、胸大きいよね」


「ごんちゃん怒るよ!」


「水希は小さいよね」


「泣くぞ!」



唐突に私を辱めるごんちゃんの腕を叩き、胸のサイズならごんちゃんと私は変わらないよね!と心の中で叫ぶ。



「痛いよー」


「ごんちゃんが悪い!」


「私の初恋ってさ…女の人だったから、もし付き合えていたらって考えたの」


「ごんちゃんのエッチ」


「スケベなのは水希でしょー」



同性同士の交際が初めての人は漫画や映画での知識が役に立たない。でも、その分勉強をし相手に優しくできる。

私は芽衣のために沢山勉強をした。同性だから分かる痛みや、愛を送る行為だからこそ常に芽衣の反応を見ている。


芽衣は最初の頃、ずっと気にしていた。私だけがって…でも、私からしたら芽衣を抱けることが私にとって幸せなんだ。

それに、芽衣に抱かれる自分を想像できないし、きっと無理!って芽衣を襲うだろう。人は恋をするとスケベになるのは仕方ない。



「2人とも…朝から何話してるの」


「あっ、芽衣。おはよう〜」


「水希…後でお仕置きね」


「えー、何で…」


「やーい、お仕置きだって」


「ごんちゃんもだよ。同罪だからジュース奢ってね」


「そんな、酷いよー」



空は曇りで暗いけど、芽衣が来て私の心が晴れやかになり明るくなった。お仕置きが怖いけど喜んで受け入れる。

決してマゾではないし、お仕置きと言ったあとそっと手を握り甘えてくる芽衣が可愛いから笑顔になれた。



「あっ、水希。今日は生徒会だっけ?」


「うん、そうだよ」


「芽衣〜、私もだよ。私も書記やってるよ」


「ごんちゃん、分かってるから」


「芽衣が冷たい!友達なのに…」


「部活終わったら生徒会室に行くね」



今年の6月は大きなイベントがないけど、細々としたことを決めないといけない。

今日はちゃんと話が進むだろうか?真里ちゃんと朱音ちゃんのことを考えると無理なような気がする。

ごんちゃんとさわちんは何も知らないし、気まずい空気にならなければいいなと思った。


でも、放課後そんな願いは叶わず重い空気が生徒会室に流れる。朱音ちゃんの背中にはどんよりとした空気が流れ、真里ちゃんの頭上から大雨が降っているように泣くから困ってしまった。

まさか、生徒会室で喧嘩をするなんて、、みんな呆然とするしかなかった。



「2人とも、、紅茶飲む?一度、気持ちを落ち着けたほうがいいし」


「高瀬先輩、、今日は帰ってもいいですか。ご迷惑かけると思うので」


「えっ、でもちゃんと真里ちゃんと話し合ったほうがいいと思うよ


「今は話したくありません…」



朱音ちゃんの言葉にショックを更に受け、真里ちゃんの綺麗な顔が崩れていく。

何て声を掛けていいのか分からない。ごんちゃんがおちゃらけようとしたけど空気を読んですぐにやめた。

さわちんも意味が分からずずっと呆然としている。私もどうしたらいいの変わらないし、生徒会の仕事が進まず困っている。


そんな時、女神が現れた。

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