第279話
芽衣がキラキラとした笑顔で、手を振ってくれる。待ち合わせ場所で合流をし、私達は電車に乗り遊園地に来た。
芽衣と付き合ってもうすぐ一年なのに、私に全然お金がなくて芽衣をどこにも連れて行けてなかった。
やっと少しだけお金に余裕ができ、芽衣と遊びに行ける。朝、鏡で顔を洗ったとき目は腫れてないことを確認してホッとした。
もし、目が腫れていたら芽衣が心配してしまう。晴菜さんのことは絶対に言えないし、上手い嘘もつける自信がなかった。
「遊園地楽しみー」
「楽しみだね。芽衣は乗れない乗り物とかある?」
「ないよ。全部大好き」
「私も。いっぱい楽しもうね」
まずはジェットコースターに乗って、遊園地の醍醐味を楽しむ予定だ。上に登って行く時、ドキドキするけどワクワクもする。
芽衣の身長が乗れる基準の身長をクリアして良かった。内心、もしアウトだったらどうしようかと思っていた。
「芽衣、コースターが降りるとき手をあげようよ」
「うん!」
遊園地に久しぶりに遊びに来てめちゃくちゃ楽しい。さっき、真里ちゃんからLINEが来てて今から朱音ちゃんに会いに行きますと書いてあった。
頑張って関係を修復してほしい。真里ちゃんも辛いと思うから仲直りしてほしいよ。
「あー、楽しかったね」
「水希、次はお化け屋敷にはいろう!」
「お化け屋敷…」
「水希、苦手なの?」
「だって、、驚かされに行くなんて怖いよ」
「大丈夫だよー。私がついてるし」
「えー、それはそれで情けない」
私はホラー映画とお化け屋敷が苦手だ。お化け屋敷はリアルに怖いお化けに追われるから恐怖が半端ない。
ホラー映画だと画面越しだから何とか耐えれるけど、実体験する恐怖は耐えられない。
「そんなに怖いならやめる?」
「大丈夫…芽衣が手を繋いでくれるなら」
「うん、手を繋いで行こう。私が横にいるから大丈夫だよ」
おどろおどろしい音楽と叫び声。私の恐怖心を煽り、何度も私をビビらせる。
芽衣と手を繋いでいるけど、ひゃーやキャーなど大声を出し喉が痛く足が震える。
芽衣は驚きながらも楽しんでいた。お姉ちゃんと一緒で凄すぎる。お姉ちゃんは作り物なんて怖くないと言い、小さい頃スタスタと前を歩くお姉ちゃんに置いていかれた。
「水希…大丈夫?飲物買ってこようか?」
「うん、お願いしてもいいかな…」
お化け屋敷で大声で叫び、グロッキーになった私はベンチに腰を下ろす。
しんどい、今も心臓がドキドキしている。あっ、真里ちゃんからLINEが来てる。
・・・朱音ちゃん、まだ無理か。真里ちゃんのキスは2人が付き合う前だとしても受け入れられなかったみたいだ。
これがもし真里ちゃんに元カノがいたらそこまでなかったのかもしれない。
でも、真里ちゃんの初めての恋人は朱音ちゃんできっと朱音ちゃん的には全ての行為の初めてが自分であって欲しかったに違いない。
自分と付き合う前の出来事であっても苦しくて悔しくて受け入れられない。
「水希、お水買ってきたよ」
「ありがとう」
「具合大丈夫?」
「うん、落ち着いてきた」
「ごめんね、、こんなことになるなんて」
「気にしないで。自分でも驚いてるし」
芽衣は優しい。昨日も電話で咳をしたら何度も心配してくれて申し訳なかった。
私の小さな彼女は最高の彼女で、世界一愛おしい存在だ。めちゃくちゃ可愛すぎるよ。
「水希、水飲まないの?」
「芽衣、大好きだよ」
「もう///。急にやめてよ。恥ずかしい」
へへと笑い、水を一口飲む。真里ちゃんには後で電話すると送り、芽衣とのデートの続きを楽しむ。まだ乗りたい乗り物は沢山ある。
「次、何に乗ろうか?」
「まだ、休憩した方がいいよ」
「もう大丈夫。時間が惜しいから行こう」
芽衣が楽しそうで良かった。手を繋ぎ、次の乗り物の所へ行く。全部制覇は出来ないけど、乗りたかったアトラクションには乗れた。
途中、お昼ご飯を食べお土産も買えたし遊園地を満喫出来ている。
「芽衣、最後に観覧車に乗ろうか」
「うん!」
観覧車の中から見える夕暮れが綺麗で2人で感動しながら見た。一番上まで来た時、ずっと繋いでいた手を離し芽衣にキスをする。
最高の思い出がまた一つ増えた。嬉しそうに笑ってくれて私も嬉しい。
「また来ようね」
「うん!でも、次はお化け屋敷はやめようね」
「頑張るから大丈夫だよ…多分」
「水希に無理をしてほしくないの」
出会いの順番は大事だ。私は芽衣に出会い恋をした。初恋は実らないと言うけど、私の初恋は実り今も幸せだ。
朱音ちゃんも初恋が実り幸せだったに違いない。だけど、予期せぬ試練が来ることがある。どれだけ悲しくて悔しくても過去は変えられない。
明日になれば今日のことは過去になる。毎日過去が増え、思い出を増やしていく。もし、芽衣に元彼がいたとしたら私は絶対に過去を聞かないだろう。
大切なのは今だ。沢山悩んで、悔しい気持ちはあると思うけど芽衣を失うより過去を受け入れた方がいい。
晴菜さんのことを棚に上げている言い訳に聞こえるかもしれないけど許して欲しい。私は芽衣との未来を大切にしたい。
もう芽衣と距離を置くのは嫌だ。晴菜さん…ごめんなさい。私は芽衣を絶対に失いたくないんです。だから、私を嫌いになって下さい。
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