第204話

マスクをしてベッドで寝ている私の頭を芽衣が優しく撫でてくれる。私に暖かさをくれるこの手に触れたいけど、移してしまう可能性があるから触れない。

キスもできないし、、私は何をやっているのだろう。お風呂で冷水を浴びて馬鹿だよ。


でも、風邪のお陰で眠ることが出来た。風邪のせいで体が怠くてキツいけど風邪薬の副作用で眠気がきて芽衣が来るまで眠れた。

2時間でもぐっすり熟睡できると体が少しだけ楽になる。寝ている間は晴菜さんのこと忘れられたし。



「芽衣、ごめんね。風邪引いちゃって」


「バイトで疲れちゃったのかな…。無理しちゃダメだよ」


「大丈夫、無理はしてないから」



芽衣が心配そうな顔で私を見つめてくる。大好きな彼女を心配させて情けない。

早く風邪を治さないとこれ以上、心配かけたくないし触れられないのが辛い。

眼鏡も掛けてないし、お陰で芽衣の顔がはっきり見えないし最悪だ。せめて、芽衣の顔をはっきり見たいのに。



「芽衣、眼鏡を取って」


「掛けるの?」


「芽衣の顔がはっきり見えない…」


「こうすればハッキリ見える?」


「ダメだよ、、近寄りすぎ。芽衣に風邪が移っちゃう」



ダメだと言ってるのに芽衣は私に近づいてくる。お陰で好きな気持ちが溢れちゃうよ。

好きすぎて、触れたいのに風邪のせいで触れられない。このジレンマは私のせいで私が馬鹿なことをしたせいだ。昨日の私が憎い。


芽衣といると晴菜さんのことを忘れられる。嫌な想像から逃れられる。私がスケベだから想像してしまうのかな、、裸の晴菜さんを想像しドキドキする自分に腹が立つ。

彼女以外の人の裸を想像するなんて最低だよ。芽衣が知ったら悲しむ。



「水希、風邪が辛いの…?」


「えっ…」


「涙、、今にも溢れそうだよ」


「芽衣が、、好きすぎて辛い」


「ありがとう、私もだよ。水希が大好きすぎて辛くなる時がある」



ダメだって分かってる。芽衣に風邪を移してしまう。でも、私は怠い体を起こして、芽衣を抱きしめる。

芽衣、ごめんね。我儘で芽衣を抱きしめて。でも、止まらないよ。もっともっとって芽衣を求めてしまう。



「芽衣とキスがしたい…」


「いいよ」


「ごめん、、芽衣に風邪が移っちゃうから出来るはずないのに」


「移してくれてもいいのに」



馬鹿だな、最低だよ。風邪を引いているのに芽衣を求めて、優しさに縋るなんて。芽衣に風邪が移ってしまうの嫌なのに。

私はベッドに横になり反省する。弱い、私は弱いよ。昨日、ショックなことがあったからって馬鹿みたいな風邪の引き方をするなんて大馬鹿だ。


風邪を引くと心が弱くなるって聞くけど、弱っていた心が更に弱くなり私は大風邪を引く。お陰で3日経っても熱が下がらず、学校を休む羽目になった。

先輩やごんちゃんから心配してくれているLINEが来て、また泣きそうだ。


芽衣も毎日お見舞いに来てくれて…部活で疲れているのに、、情けない恋人でごめんね。

必ず早く風邪を治すから待ってて。熱を下げ、早く芽衣抱きしめられるよう元気になって、学校に登校するから。











うーん、体がバキバキする。ずっと寝たきりで体を全然動かせていない。風邪を引いて3日目の夕方、やっと熱が下がり食欲も出てきた。

さっき、甘い果物入りのヨーグルトを食べ元気が漲ってくる。甘い物を食べるとすぐにエネルギーになるからいいね。


さっき、晴菜さんがお姉ちゃんの家庭教師として家に来た。隣の部屋でお姉ちゃんは晴菜さんに勉強を教わっている。

時々、壁越しに聞こえる2人の声。晴菜さんの声を聞くとまた想像しちゃうから嫌だな。いい加減、忘れたいのに消えてくれない。



「水希、寝てなくて大丈夫なの?」


「もう大丈夫だよ、芽衣に貰ったヨーグルトを食べて元気!」



芽衣が今日もお見舞いに来てくれて、今日は少しだけ食欲が戻ったとLINEで送ったらヨーグルトを買ってきてくれた。

幸せだな〜、熱も下がったらから芽衣に触れられる。芽衣を足の間に入れ、後ろから抱きしめられ最高だ。


大好きな匂いを感じられてホッとする。ずっと、芽衣に触れたかったから幸せだ。

だけど、あんまり遅くなっちゃうと芽衣に迷惑をかけてしまう。だから、短時間で芽衣をいっぱい感じれるよう甘えた。



「水希、明日まで部活は禁止ね」


「えー、体を動かしたい」


「ダメ!また風邪をぶり返しちゃうよ」


「分かった…」



このバキバキの体を早く解したいのにOKが出なかった。明日は学校が終わったら、部活をやれず見学しかできないなんて悲しい。

せめて隅っこでストレッチだけでもしようかな。身体中が本気で痛いもん。



「水希の風邪が治って良かった…」


「ごめんね、心配かけて」


「本当だよ…不安だし、学校に水希がいなくて寂しかった」



私は芽衣を強く抱きしめた。私の愛が伝わるように、芽衣の不安が早く消え去るように強く大きい愛を贈る。

あっ、芽衣からキスしてくれた。やっと気兼ねなく芽衣とキスができて嬉しい。だから、もっともっと芽衣を感じせて。


(ガチャ)


・・・お姉ちゃんはいくら妹の部屋でもノックすることを覚えた方がいい。芽衣が来ていることを忘れていたの?

まさか、、芽衣とのキスを晴菜さん(+お姉ちゃん)に見られるなんて思わなかった。

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