第197話
「水希ちゃん、送ってくれてありがとう」
「はい、それではまた」
「あっ、そう言えばバイト決まった?」
「今、探し中です。週一のバイトだから良いのがなかなか見つからなくて」
「そっか。じゃ、大学でバイトしない?」
「大学ですか…?」
大学で高校生がバイトできるの?もし、東條大学でバイトを出来たら学校からも家からも近いから嬉しいけど、どんなバイトなんだろ?
「ヌードデッサンモデルのバイト」
「嫌です!無理///!」
「冗談だよ。大学の図書館でね、土曜日だけバイトの募集があるの」
「本当ですか!?やりたいです!」
図書館でバイトなんてめちゃくちゃいいじゃん。よく聞く本屋での棚卸しとかも体力には自信があるし、週一だから全然苦ではない。
それにめちゃくちゃ綺麗な図書館だったから、あんな所で働くの憧れていた。
「じゃ、私の方から伝えとくね。面接の予定日とか決めないといけないし」
「ありがとうございます!」
「土曜日は返却された本を戻す日みたいで、体力がいるけど水希ちゃんなら大丈夫かなって思ったんだ」
「体力なら自信があります」
バイト決まると嬉しいな。まだ、芽衣には言えないけど決まったら、、芽衣…怒るかな?
また、晴菜さんの名前出すことになるし、、でも、せっかくのチャンス逃したくない。
とにかく面接を頑張らなきゃ。まずは受からなきゃ始まらないし。
晴菜さんは優しい。私がバイトを探していたことを覚えててくれたし、良いバイトを教えてくれた。いつか恩返ししなきゃ。
私が晴菜さんに出来ることって何だろう?あるのかな…何も思いつかないよ。
「気をつけて帰ってね。あとね、、出来ればスタンプだけでいいからLINEが欲しい。いつも心配だから…」
「分かりました。家に着いたらLINE送ります。でも、スタンプだけでいいんですか?」
「うん、安心したいだけなの」
「じゃ、可愛いスタンプを買います」
「そこまでしなくていいよ」
「せっかくだから可愛いスタンプを晴菜さんに送りたいです」
「水希ちゃんて、、ずるいよね」
ずるい?えっ、私…晴菜さんに何かした?苦笑いされ、「バイバイ」って言いながら晴菜さんがドアを開け、私の前から消えて行く。
不安になるよ、何がダメだったの?私は鈍感って言われることが多いから晴菜さんをいつのまにか傷つけていたのかもしれない。
ショックだな。今度からもう少し考えて話さないとまた、晴菜さんを傷つける。
言葉選びって難しい。晴菜さんは私より4歳年上だし、恭子先輩のように話し掛けちゃダメなんだ。
気をつけないと…私は壁を作らないから相手の領域にズカズカと入っていってしまう。
私は家に帰ってから可愛いスタンプを買い、慎重に選んだ。これだったら、失礼じゃないかなとか馴れ馴れしくないかなとか悩んで晴菜さんに送った。
あっ、良かった。すぐに《おつかれ〜》って可愛いスタンプの返信が来た。
もう、怒ってないみたい。良かったっと胸を撫で下ろしベッドに横たわる。
疲れた…普段距離感で悩んだことないし、恭子先輩や生徒会の先輩とはフランクに話しているから、つい晴菜さんにもしてしまう。
今度から晴菜さんと話すとき緊張しそうだ。
年上と接するって難しい。でも、バイトする前で良かったかも。いい勉強になる。
晴菜さんは恭子先輩達より3歳も上だし、仲良くなった時間も違う。
もしかしたら、晴菜さんに内心では生意気って思われているかもしれない。
「あー、悩ましい!」
頭が悶々とするよー。こんなにも悩むの久しぶりすぎて疲れる。人間関係がこんなに難しいなんて、これが大人になるってことなの?
社会人になったらもっと人間関係を考えて行動しないといけないし大変だよ。
芽衣に会いたい。私を癒して欲しい。芽衣の写真を見ると心が温かくなる。あー、好き!大好き!世界で一番好き!
よし、チョコレートを食べよう。こんな時は糖分を取るのが一番だ。きっと、チョコを食べたら悶々が少しは治るはず。
◇
後日、残りの教科のテストが戻ってきて私は空に向かってVサインをした。完璧だ!苦手教科を乗り越え、まぁまぁ得意な教科も結果を出し私はやり切った。
これでお姉ちゃんからの拳骨回避!私の頭は守られた!たんこぶからおさらばだー。
「芽衣、拳骨回避できたー!」
「拳骨?ふふ、先輩のこと言ってるの?」
「うん!点数が悪かったらお姉ちゃんの拳骨決定だったから」
「よしよし、よく頑張ったね」
めちゃくちゃ嬉しいよー。実はバイトも決まり私は最高潮に調子がいい。これで、お金も稼げ芽衣といつか旅行にいける!
面接は緊張したけど、決まって良かった〜。陸上部だと伝えると体力ありそうだねって言われ、あります!ってアピールした。
晴菜さんの言った通りに、私の仕事は本の返却で広い図書館を沢山歩かないといけないから体力いるけど頑張るぞ。
返却の時、こんな本あるんだって楽しみながらバイトできるし、お姉ちゃんに「羨ましい!」って初めて羨望な目で見られた。
嬉しいよ。初めてのことだし、晴菜さんに感謝だ。今週からバイトだから頑張らないと。
帰ってくるの時間は遅いけど、週一だし沢山お金を稼ぎたい。それに日曜日は芽衣が癒してくれる。芽衣のためなら頑張れるよ。
「芽衣、テスト頑張ったから日曜日ご褒美くれる?」
「いいよ///」
「やった、いっぱい甘えるね」
あっ、そうだ。今日は晴菜さんが家庭教師で来る日だ。緊張するな…失礼のないようにしなきゃ。言葉遣いとか気をつけないと。
せっかくテストで良い点数を取れたのに私の心が萎んでいく。ずっと晴菜さんの言葉が引っかかっていて、普段の私ではいられなくなる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます