第196話

「水希ちゃん、頑張ったね」



この一言だけで、勉強を頑張った甲斐がある。晴菜さんが私のテスト結果を見ながら笑顔で褒めてくれた。

お姉ちゃんも、当然よって顔はしているけどちゃんと褒めてくれた。

こうやって頑張った分、結果がちゃんと出ると嬉しい。今度、ご褒美あげるねって言われワクワクする。



「それじゃ、残りのテストが戻ってきたらまた晴菜さんに報告します」


「うん、楽しみにしてる」


「そう言えば、お姉ちゃんはテストどうだったの?」


「今の所、90点以上ばかりよ」



90点…流石、我が姉。到底敵わないし、少しでも勝てるかもって思った私が馬鹿だった。

私は自分の思い上がりに打ちひしがられ部屋から出ていき、いつになったらお姉ちゃんに勝てるのかなって考える。

多分、一生勝てる気がしない。このままだと一生お姉ちゃんの下僕だ。


嫌だ!せめて妹がいい。他の家族はどうなのかな…姉妹で私達みたいな関係の人いるの?絶対いない気がする。

私は一生、お姉ちゃんに頭が上がらない。でも、所々助けられてるし…感謝する部分も沢山あるから困る。


うーん、悩ましい。周りから羨ましいって言われるし、完璧な姉は色んな人を魅了する。

妹の私はいつもこの差は何なんだって悩んでいるのに、羨望な目で見られる。

不条理だ、姉妹なのに何でこんなに違うの?やっぱり納得がいかない。


あっ、そうだ。芽衣に電話しなきゃ。「電話してね…」って甘えられたし、芽衣のキスを思い出し頬が熱くなった///。

芽衣の唇は柔らかくて甘い香りがする。ミルマロのような甘くて良い香り。

飲むのは苦手だけど、芽衣の唇は大好きだ。何度味わっても飽きることがない。










ふんふんふ〜ん。鼻歌を歌いながらベッドで漫画を読む。芽衣とのラブラブな電話をした後だから私の心は満たされていた。

でも、甘いチョコレートを食べ、紅茶を飲むと胃袋も満たされ眠気に襲われる。ダメだ…幸せな気持ちでベッドに横になると眠い。



「水希!起きろー」


「ふぇ、、お姉ちゃん?」


「ほら、晴菜さんを送って」


「あっ、分かった」


「水希ちゃん、寝てたのにごめんね」


「大丈夫です。すみません、寝ちゃって」



いつまにか寝ちゃったよ。慌てて起きると、晴菜さんが机の上に置いてあるチョコレートをジッと見ている。

欲しいのかなって思ったけど、お姉ちゃんと部屋を出て行ったから違うみたいだ。

私は芽衣から貰ったマフラーをつけ、下に降りていく。今日は晴菜さん、マフラーを付けているから安心した。



「今日も寒いねー」


「寒いですね」


「そう言えば、昨日バレンタインだけど水希ちゃんはチョコ貰ったの?」


「友チョコ貰いました」



私は嘘はついていない。実際にひかるから友チョコを貰ったから嘘はついていない。晴菜さんにハピチョコの説明しづらいもん。

できれば、言いたくなくて晴菜さんに友チョコを強調した。女子校だし、友チョコを送り合う人多いからね。



「部屋にあったチョコ、本当に友チョコ?」


「そうですけど…」


「ふーん、相手はそう思っていないかもよ」


「えっ、それはないですよ」


「そうかな、友チョコにしては凝ったチョコだし。あれ、手作りだよね?」


「多分、、」



晴菜さんがぐいぐい聞いてくるから焦ってしまう。だって、ハピチョコなんて言えないし、私にとっては友チョコもハピチョコも同じで変わらない。

ただ、友チョコだけはくれた相手にお返しをするつもりなだけだ。



「水希ちゃん、モテるでしょ」


「モテません!」


「そうかな?私が高校にいた時、水希ちゃんみたいな人モテてたよ。優しくて、先輩もそうだったから」


「先輩?」


「前、話した優しい先輩」



そう言えば、言っていたな。優しい先輩がいて晴菜さんの理想の人だったって。

でも、その先輩はカッコよかったと思うし私と一緒にしたら先輩が怒るよ。

それに、優しいだけではモテない。私がチョコを貰えるのは女子校という閉鎖空間で奇跡と間違いが起きているだけだ。



「先輩の周りにはいつも人がいて、みんな楽しそうにしてた」


「そうなんですね」


「憧れだったな」



晴菜さんは元彼と先輩を比べて、懐かしんでいる。でも、同性からの優しさと異性からの優しさは当たり前に違うと思う。

どうしても異性は恋愛を意識するし、その先のことを考える。同性は友達だからこそ普通の優しさをあげることができる。


でもな…今日、それを恭子先輩に言ったらそうだけど違うと言われた。

同性でも下心のある優しさは沢山ある。私の優しさは良く言えば裏のない優しさで、悪く言えば何も考えてない優しさ。

意図がないからその優しさは純粋で嬉しいけど、勘違いしやすい。誰かと比較してしまう。



「水希ちゃんが男の子だったらいいのに」


「私が男ですか?」


「カッコいい男の子になっていたと思うよ」



晴菜さんはまだ、前の恋愛に傷ついている。初めての恋が最低の恋だったから。

いつか、優しかった先輩のような人が現れるといいけど。でも、きっといると思う。

晴菜さんを優しさで包んでくれる人が。笑顔にしてくれる人が。

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