第183話

晴菜さんの説明は分かりやすい。さっきやったテストの間違えた問題の説明がちゃんと頭の中に入ってくる。

授業は頭に入ってこないのに、この差は何でだろ?一対一で晴菜さんが丁寧に教えてくれてるからかな。



「水希ちゃん、ここの問題は理解した?」


「はい、やっと分かりました」


「よし、じゃ次に行こうか」



苦手な数学が理解できる日が来るなんて思わなかった。ちゃんと公式を覚え、解き方の理解ができたら応用は苦ではなくなる。

さっきまで数式が暗号に見えていたのに、晴菜さんの説明でちゃんと数式に見えた。


もしかして、私って勉強の仕方さえ分かれば勉強できちゃうタイプ!?

お姉ちゃんに散々馬鹿だって言われ、私がテストで良い点を取れないは勉強の仕方が悪かったと分かったよ。

ふふん、なんだ。私は馬鹿じゃない!



「うん、これで間違った箇所の説明は終わったね」


「晴菜さん、凄いです!」


「そうかな///。ありがとう」


「晴菜さんが先生だったら勉強を頑張れそうです」


「そっか。じゃ、来週もよろしくね」


「えっ?あっ、もう7時だ」


「うん、今日はこれで終わり」



凄い、時間があっという間に過ぎていく。勉強でこんなに時間が進むのが早いのは初めてだ。ちゃんと真剣に勉強すると、時間って進むの早いね。



「あっ、晴菜さん。送りますね」


「いいよ、外暗いし」


「自転車持っていくので」


「でも…」


「きっと、お姉ちゃんも送れと言います」



きっとではない…100%晴菜さんを送れと言うに違いない。私はお姉ちゃんの妹を16年やっているんだ。もう完璧に思考は読める。

ほらね、下に降り晴菜さんがお母さんに挨拶している時、お姉ちゃんに晴菜さんを家まで送りなさいねと言われた。



「水希ちゃん、ありがとう」


「いえ、危ないので」


「帰り気をつけてね」


「大丈夫です。自転車なので」



晴菜さんとの会話が楽しい。晴菜さんと高校の話で盛り上がり、歌を褒められた。

お姉ちゃんめ、本当にカラオケの映像を送ったみたいだ。「歌が上手いね〜」って褒められるのは嬉しいけど照れるよ。


晴菜さんとはまだ知り合って日が浅いのに、不思議な縁で繋がっている。お正月に初めて知り合い、とんとん拍子に家庭教師をやって貰ってなかなかこんな縁ないよね。

あの時、晴菜さんが私の後ろに並びお茶をあげなかったら今の状況はない。



「送ってくれてありがとう」


「はい、また来週お願いします」


「ちゃんと復習するんだよ」


「分かりました」


「今日頑張ったご褒美に飴玉あげる」


「やった!嬉しいです」



貰った飴玉を舐めながら自転車に乗る。晴菜さんのお陰で、あれだけ嫌だった勉強が少しだけ嫌いじゃなくなった。

たった1日で変わるなんて凄い。問題を解けるのが楽しくて、もっと勉強を頑張ろうと思えた。


明日、芽衣に報告しなくっちゃ。少しだけ勉強が好きになれたよって。

喜んでくれるかな〜、いつもテスト前になると私の勉強嫌いを心配していたから。

帰ったらご飯食べて、お風呂に入った後テスト問題の復習だ。人って変われるものだね。










きっと、芽衣は喜んでくれると思っていた。私にはやっぱり女心が分からないのかな?

芽衣に勉強が少しだけ好きになったよって伝えると顔色が変わり、暗い表情になった。

どうしてなの?私は芽衣に相応しい恋人になりたくて頑張っているのに、、



「芽衣、どうしたの…?」


「何でもないよ…」


「顔に出てるよ。ちゃんと教えてよ」


「やだ…面倒くさい女だと思われたくない」


「どう言う意味?」



芽衣がヤキモチを焼いている。私が晴菜さんのことを嬉しそうに話し、勉強を少しだけ好きになれたよって言ったことによって私が少しだけ遠くに感じたみたい。

バカだな…私は芽衣しか見てないのに。芽衣に甘えられるのを楽しみにしてたんだよ。



「芽衣、こっちを見て」


「やだ…不細工な顔をしてるから」


「芽衣は世界一可愛いよ」


「そんなことないもん」


「キスできない。今日、沢山キスしてくれるって言ったでしょ。早くパワーチャージさせてよ」


「だって、、」



仕方ないな、だったら私が動くね。芽衣を抱きしめ「芽衣が世界一好きだよ」って伝えるとやっと笑顔になってくれた。

顔を近づけると、目を瞑ってくれてやっとキスができた。今日は沢山甘えるんだ。


唇が痛くなるかもしれないけど気にしない。磁石みたいに引き寄せあって離れないし、芽衣が私を求めている。

私の芽衣への気持ちが言葉にしなくても伝わればいいのに。そしたら、芽衣は不安になることがなくなる。


でも、ちゃんと言葉にして言いたいな。愛を伝えるってドキドキするけど、私も嬉しい。

芽衣に伝えた時、嬉しそうに笑ってくれるから。私もその笑顔に釣られ笑顔になる。もっともっと好きだよって言いたくなるよ。

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