第121話

はぁはぁ、、ひかるにお礼を言って残りのケーキを包んで貰い全速力で走る。急ぎすぎて足が縺れる、、転ばないように、ケーキを崩さないように走るのは難しい。



「ただいまー!」


「水希、遅いわよ!どこに行ってたの!」


「ごめん…ひかるの家に行ってた」


「はぁ、、馬鹿なの?」



お姉ちゃんに怒られるどころか、ため息をつかれてしまった。それに、手に持っていた物を聞かれひかるからの誕生日ケーキと言うと呆れられチョップをされる。


私が冷蔵庫に入れとくからと言われ、渡したあと一度洋服に着替え二階に上がった。

緊張する。芽衣が部屋でずっと1人で待っていたと思うと申し訳なくて、どんな顔をすればいいのか分からない。



「芽衣…」


「遅い…」


「ごめん」


「水希、どこに行ってたの、、」


「ひかるの家…」



芽衣が下を向いてしまった。どうしよう…どうしたらいいの?ケーキを貰いに行っただけだけど信じてもらえるかな。

ケーキを貰ってすぐに帰れば、芽衣は私を待つ必要なかったのに…私のせいだ。



「ひかるちゃんのこと好き?」


「えっ…」


「キスは水希からしたの…?」


「違う、、私からじゃない」


「何で、、キスしたの?」



どう説明すればいいのだろう。ひかるからされた、私の意思じゃないって言えばいいのかな?でも、そんな風に言いたくない。

ひかるも苦しくて、悩んでいたの知ってる。それに私の無神経さがひかるを苦しめた。

私が悪いけど、、キスはひかるからで、、説明をできないキスに口を閉ざしてしまった。



「水希は誰が好きなの!」


「芽衣だよ…」


「もう、水希が分からないよ、、水希が本当に私のことを好きなのか信じられない…」


「ごめん、、でも、信じて。私が好きなのは芽衣だけだよ。キスがしたいと思うのも抱きたいと思うのも芽衣だけだよ!」


「だったら、私以外の人とキスするな、、」


「ごめん、、本当にごめん」



芽衣からボロボロと大粒の涙が溢れてる。私は叩かれてもいいからと強く抱きしめた。

こんな小さな体が震え泣いている。これ以上強く抱きしめると壊てしまうかもしれない、でも絶対に離したくなくて緩めなかった。



「水希…苦しいよ」


「あっ、、ごめん」


「水希、このあと私の家に来て」


「芽衣の家?いいけど、、」


「今日…わたしの親、いないから」


「えっ…あの、、」



これって、その、、絶対にそう言う意味だよね。〈そう言う意味〉を恥ずかしくて言葉にすることが出来ないけど、そう言う意味だよね!!!

どうしよ、、私、絶対に汗臭い!お風呂、お風呂に入りたい!下着も、、綺麗なやつ用意しなくては!



「しないよ…、まだ水希の誕生日じゃないし」


「えっ…あ、、うん、そうだよね」


「期待したの?」


「した…」


「馬鹿、、誤魔化してよ」



無理だよ、期待するに決まってる。親がいないって言われて、多分お泊まりで、、2人きりで過ごすことになるなら思考の行き着く先は、一つしかない。


芽衣って、思わせぶりだよ。私が必死に我慢してるのに小悪魔ぶりを発揮して私を悩ます。その分、私も…芽衣を悲しませてばかりだけど(私が一番最低野郎すぎる)



「親に芽衣の家に泊まるって言ってくる」


「うん」



下に降りたらお泊りの準備と、、お姉ちゃんに一応仲直りしたよって言わないといけない。心配してくれてるし安心させたかった。

出来の悪い妹でごめんなさい。恋愛が難しくて、分からないことだらけでいつも足踏みばかりしてしまう。



「お母さんー。今日、芽衣の家に泊まる」


「水希、芽衣ちゃんとその…大丈夫なの?」


「うん、多分…大丈夫。お姉ちゃん、心配かけてごめんね」


「自分がされて嫌なことはしちゃダメよ。水希は女心が分かってなさすぎる」


「難しいよ…」


「分からないなら聞けば良いじゃない」



芽衣の心の内を本人に聞けば教えてくれるのかな。余計に難しくない?教えてくれるか分からないし、自分で考えろと言われそう。

私も女なのに、何でこんなにも女心が分からないのだろう。もしかして、思考が男なの?それとも私は女子力皆無なのか!?



「水希…まだ、ダメだからね」


「えっ?あ、、あぁ、大丈夫。芽衣に言われてるから」


「そうなの、、?」


「ちゃんと約束は守るから大丈夫」



芽衣に先手を打たれているから、、すでに期待はボロボロに崩されている。多分、どれだけお願いしてもNo!を突きつけられるだろう。触ることも許されないかもしれない。


実はドキドキしている。芽衣に泊まりに来てと言われ、期待して、崩されて、私は無限地獄に落とされるかもしれない。

このドキドキが幸せなドキドキだったらいいのにと思う。はぁ、、どんな苦しみが待っているのだろうと言う恐怖のドキドキなんだ。

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