第120話

体が痛い、全身が痛い!坂ダッシュのせいでもなくインターバルのせいでもなくお姉ちゃんと恭子先輩の制裁のせいで体が痛い!

綺麗な人が鬼になると般若みたいな顔になるからマジで怖い。大きい角が見えた。


私は結局、部活を早退けした。顧問の先生に今日は早く帰った方がいいと言われ、制服に着替えひかると一緒に歩いている。

最初、私の付き添いで一緒に帰る人をどうしようかとなった時、お姉ちゃんが「私が!」と手を挙げそうだったけどひかるが先に立候補してくれた。


お姉ちゃんと恭子先輩が渋い顔をしながら、渋々送り出してくれてギリ助かった。

絶対に嫌だー!って心の中で叫んでいたからホっとしている。ただ、お姉ちゃんが帰ってきたら正座をさせられ、お説教されることが決まっているから地獄だけど。



「水希、具合どう?」


「もう大丈夫だよ」


「顔色はよくなってるね」


「でしょー。だから、、ガトーショコラ食べたかった」


「今度ね」


「今からひかるの家に行こうよー」



諦めきれないガトーショコラ。だって、もうひかるが作ってくれているから勿体ないし、私の胃袋が甘いものを求めている。



「ダメだよ。まだ、具合がちゃんと良くなってないのに」


「えー、、行きたい」


「水希の、、食いしん坊」


「ひかるのお菓子が美味しいから悪い」 



やっと、仕方ないな…って顔をしたひかるのお許しが出た。バスの中で、昨日のテストのことを話しながらお互い笑い合う。

ひかるは頭が良いから羨ましい。私なんて、

いつも試験前に嘆き苦しんでいるのに。



「あー!ミルクだ。可愛いー」



初めて見た白いトイプードルのミルクは、毛並みがもふもふして目がクリクリしてめちゃくちゃ可愛い。

小さくて、サイズ感がまるで芽衣みたいだ。抱っこすると甘えてくるし、抱き心地が似てる。


舌でペロペロと顔を舐められ擽ったい。私はミルクに好かれたみたいだ。ただ、勢いが良すぎて後ろに倒れ込んだ私の顔に乗っかるように舐められ顔がベタベタする。

私がもがいているとひかるが笑い、私は助けを求めた。ミルクの愛情表現が強すぎる。



「ほら、ミルクおいで」


「うひゃあ、、凄かった」


「水希、ケーキ包むから待っててね」


「えー、食べたい」


「食べるの?家で食べた方がよくない?」



ここまで来たら、ひかるの家で食べたい。ちゃんと感想も言いたいし、お腹が減りすぎて倒れそうだ。それに、もう少しミルクと遊びたいし癒されたかった。


勉強に部活…芽衣のこと、、頭も体も心も疲れてしまって少し休みたかった。ひかるとのキスは何を言っても言い訳に聞こえるだろうし、私にはどうすることもできない。


ちゃんと謝りたいけど、芽衣はかなり怒ってたし…悩んでしまう。どうやったら許してもらえるのかな。時は戻せないし、事実は変わらない。だからこそ、難しい。



「はい、ケーキ切ってきたよ」


「ひかる、ありがとうー」


「ゆっくり食べてね」



のほほ、美味しいー!疲れた体が癒される。甘さが体に染み、元気が出てきた。やっぱりチョコは最強の食べ物だ。

美味しすぎて、あっという間に食べ終わり何も乗っていないお皿をじっと見つめる。



「お代わりする?」


「する!半分持って帰るから、残り全部食べたい」


「元気になって良かった」



私の膝の上に乗り眠っているミルクを触りながら、美味しいガトーショコラをまた口に頬張る。疲れが癒され、お腹が満たされてミルクみたいに眠くなってきた。


昨日、沢山寝たのに…。ダメだ、目を瞑ると眠くなる。少しだけ寝ても良いかな、1時間だけ寝たらスッキリすると思うから少しだけ寝かせて欲しい。










「うぅん…あれ、、今、、何時だろ?」


「あっ、起きた」


「ひかる…ごめん、私どれくらい寝てた?」


「3時間ぐらいかな」


「うわぁ、、結構寝てたね」


「飲み物いる?」


「うん、欲しいな」



結構寝たから体も頭もスッキリした。ボーッとしながら、携帯を触るとお姉ちゃんから着信とLINEが沢山きている。

しまった、お姉ちゃんが帰ってくる前に帰ろうと思ったのに私の方が遅くなってしまった。


お姉ちゃんは部活から帰ってきたら私がいなくて心配したのか、お仕置きのために連絡したのか…絶対お仕置きのためだな。

嫌だ…家に帰りたくない。それにしても、この大量のLINEは何だろう。仕方なく一度、ちゃんと読むためLINEを開くと家に芽衣がいるから早く帰って来いって内容だった。


何で芽衣が…慌てて返信しようと思ったけどお姉ちゃんが芽衣が来てるってLINEしたのは1時間前だった。

流石にもう、帰ってるよね、、思いっきり既読無視してしまったし。でも、何で芽衣は電話やLINEをくれなかったのかな。まだ、、怒ってる証拠だよね。



「水希、飲み物を持ってきたよー」


「ありがとう」


「どうしたの?」


「何でもないよ」



一度、家に帰ったあと急いでシャワー浴びて芽衣の家に行かなくえは。かなり怒っているであろうお姉ちゃんのお仕置きとお説教は明日聞くからと説得するしかない。

飲み物を飲んだ後、家に帰る準備する前に一度深呼吸をする。なぜだか心が重く、体が動かない。まだ、完全に疲れが取れてはない。


あっ、またお姉ちゃんからLINEが来た。やっと既読が付いたから、、えっ?芽衣が私の部屋にいるから早く帰ってこいって…。

待っててくれたの、、帰らなきゃ!早く帰らなきゃ!やっと、体と心が軽くなった。

私は何をやっているんだろう…これではまた芽衣を泣かせてしまう。

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