第117話

「水希と竹本さん、仲がいいよね」


「それは友達だから…」



ごんちゃんの言葉に芽衣の目が完全に私を疑っている。私は無実だ!キスはしたけど、、あの状況は無実でいいと思う。

喉が乾いてきた。出来れば、お水が欲しい。甘いココアではなく冷たいお水が飲みたいよ。誰か、この汗を止めてくれ。



「竹本さんと手は繋いだことある?」


「ないよ…」


「キスは?」


「・・・あれは、、」



痛いー!芽衣に思いっきり頬をつねられる。このままだと頬がちぎれる。尋問役のごんちゃんも余りにも私の頬を強くつねる芽衣にオロオロしている。

ごんちゃんのせいだ!尋問したからこうなったし…痛くて涙が出てきそうだ。



「ごめんなさい…でも、あれは、、」


「浮気者…水希の馬鹿、、嫌い」


「違う…芽衣と付き合う前だし、、言い訳になるけど、、違う、、」



何て言えばいいのか分からない。ひかるにいきなりされたって言えばいいの?でも、そんな風に言いたくないし…難しい。

芽衣が泣いちゃった、、どうしよう、ごんちゃんは更にオロオロして、私は心と頬が強烈に痛い。



「水希、帰って…」


「芽衣…誤解だよ」


「でも、キスはしたよね」


「した、、」


「バカ、、大嫌い!!!」



痛い…今度は頬を叩かれた。どうしたらいいのかな、、もう、私には分からない。誤解を解きたいけど芽衣は話を聞いてくれない。

それに説明も難しい。一度、芽衣に落ち着いてもらうしかないのかな。頬が痛すぎて、涙が出そうで辛くなってきた。



「芽衣…帰るね」


「水希、、ちゃんと話し合った方が」


「ごんちゃん、一緒に帰る?」


「うん、、」



私はごんちゃんと一緒に芽衣の部屋から出た。このまま芽衣を1人にしない方がいいと頭によぎったけど何となく疲れてしまった。

今日は早く寝たかった、試験勉強疲れも溜まってたし頭を休めたくて家に帰った。


ベッドの上に横になり、大きく深呼吸をする。ずっと芽衣の泣き顔が頭から離れない。

浮気者…芽衣一筋なんだけどな。難しいよ、どうやったら伝わるの?


もし、私が芽衣の立場だったら…芽衣の気持ちは分かる。私もいくら付き合う前の話だとしても芽衣が他の人とキスをしたと知ったらショックだ。

でも、過去は変えられない。現実を受け入れるしかないんだ…。



「心が痛いよ、、」



口に出して呟くと涙が出てくる。もうすぐ誕生日なのになぜスムーズに誕生日を迎えることができないの?

一難去って一難…疲れる。もっとずっと笑い合える恋愛がしたい。私が子供なのかな、いつも芽衣を泣かせてしまう。


私は結局このまま寝てしまった。親もお姉ちゃんも私が試験勉強疲れで寝ていると思い、起こさず寝かせてくれた。

朝起きたとき驚いた。いつのまにか朝なり、携帯を慌てて見たら芽衣からの着信やLINEもなく…ただ、ひかるからLINEが来ていた。


今日、ガトーショコラを焼いたよって。試験が終わったばかりで疲れているはずのに、ひかるは優しい。

私は〈楽しみにしてる〉とLINEを送り、シャワーを浴びるためにベッドから降りた。頭をスッキリさせたかった。


芽衣にもう一度ちゃんと謝らなきゃいけない。でも、何て言えばいいか分からない。

普通に謝ってもダメなような気がする。土下座は、、流石に変だよね。

どうしよう、何も思いつかない…言葉に詰まりそうだ。そんな考えをグルグルさせながら学校に行くと、HRで先生から芽衣が休みだと知る。



「水希…芽衣と仲直りした?」


「LINEの返事がない」


「ごめん、私のせいで…」


「ごんちゃん、気にしないで。大丈夫だから」



朝、芽衣に送ったLINEが既読にもならない。まだ、寝てるのか…わざと見ないのか、分からないけど多分まだ怒ってるのだろう。

頭が痛いよ、どうやったら芽衣の怒りは治るの?そんなことを考えていたらあっという間に時間は経っていく。


ごんちゃんとお弁当を食べた後、部活に向かう途中ひかるが教室にいるのが見えた。

あんまり他のクラスを見ることないなって思いながらドアからひかるに声を掛けるとクラスメイトといたひかるが振り向き、ドアまで来てくれた。



「水希、今から部活に行くの?」


「うん、ひかるはさわちんを待ってるの?」


「爽子は今日休みだよ。ふふ、試験が終わってホッとしたら熱が出たーってLINEが来て笑っちゃった」


「勉強嫌いのさわちんらしいね」


「あれ、芽衣ちゃんは?」


「芽衣も休み、、」



ひかるの家にガトーショコラを貰いに行った後に芽衣の家に行く予定だけど、一度帰った方がいいだろう。ひかるから貰った物を見られたらまずいし、また怒り出すと思う。



「ひかる、一緒に部活に行こうよ」


「うん、ちょっと待ってて」



ひかると2人で歩きながら、部活に向かうと少しだけ注目を浴びる。

いつも私の隣には芽衣がいたし…ほぼ、初めてじゃないかな。こうやって2人で歩くの。クラスも違うから会う機会が部活しかない。



「あっ、ひかる。今日、一緒に帰ろう」


「うん」


「早くガトーショコラ食べたいな〜」


「美味しく出来たと思う」


「ひかるの作るお菓子、大好き」


「ふふ、ありがとう」



口元を手で隠しながら、笑うひかるは私の理想的な女の子だ。私もこんな風な女の子になりたくて憧れてしまう。

部活を頑張ってお腹を沢山空かそう。あと…もう一度、芽衣にLINEを送ろう。返事がないのが寂しくて、心配にもなる。










私とひかるは身長が近いから私が下を向くことがない。私の隣にはいつも芽衣がいて、下ばかり向いていた。

不思議な感覚だ。当たり前がそこになくて、いつもと違う景色。芽衣と出会ってなかったら、、私の隣にはひかるがいたのかな?

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