第106話

私は廊下に正座をさせられている。足が痛い…かれこれ30分(体感1時間)正座をしていて、痺れで涙が出そうだ。

芽衣は私の部屋で待機していて、、でも、お姉ちゃんは芽衣には優しいからさっきジュースを持って行った。


私も喉が乾いた、、足が痛いよ、、頭が痛いよ、、絶対、大きなたんこぶが出来てる!

何でまだ時計は15時半を過ぎたぐらいなのにお姉ちゃんがいるの?部活はどうしたの!サボりか!生徒会長なのにずるい!



「あと、1時間は正座してもらうからね」


「嫌だー、、足が痛い」


「水希が悪いんでしょ!!!約束を守らないから!」


「別に…一緒にお風呂に入ってただけだもん」


「ふーん、向かい合わせで?」



証拠現場を抑えられた私は下を向くしかなかった。浴室のドアを躊躇いもなく開けたお姉ちゃんと目があった時の地獄…あれは一生忘れられないだろう。

私も芽衣も一瞬で血の気が引き、、お姉ちゃんも何とも言えない顔をして固まった。


例えるとしたら何だろ…あっ、あれだ!能面が気持ち悪い感じで笑った顔。美人な顔が総崩れしてた。

い、、痛っー!また叩かれた!何で?何で急に叩かれたの!?たんこぶの上を叩くなんて非情すぎる!横暴な姉だよ。



「ヘラヘラするな!」


「痛い…」


「当たり前でしょ」


「何で今日はこんなにも早く帰ってきたの!」


「はぁ?何、言ってるの。今日は土曜日よ」



しまった!修学旅行の後だから明日が休みだって勘違いしてた。ただ単に明日が日曜日だから休みなのか…ごんちゃんが明日は休みだねーって言うから勝手に勘違いしてしまった(ごんちゃんは悪くないけどね!)


今日は土曜日なのか…修学旅行で曜日感覚がなくなってた。親がいなかったのは偶々外に出掛けていたから。

あのままベッドで芽衣と、、じゃなくて良かった。もし、その現場を見られていたら世にも恐ろしいことになっていた。



「はぁ、心臓が痛い…」


「私は足と頭が痛い…」


「怒るよ」


「すみません…」



これは、私の誕生日まで厳しい監視が付きそうだ。きっと、恭子先輩も参戦し部活中も厳しい監視下の元、芽衣と話すしかない。

最悪だ…ただ、一緒にお風呂に入ってただけなのに、、向かい合わせで。



「水希は手を出すの早すぎ」


「何で!もう付き合って2ヶ月だよ!」


「水希と芽衣ちゃんには早すぎる」


「痛い、痛い…こめかみをグリグリしないで」


「頭を叩かないだけでも感謝しなさい」



虐待だよ、妹が可愛くないの?それに、普通妹がいるかもしれない浴室のドアを躊躇なく開ける?感覚がおかしいよ。

足が限界だよー、板張りに正座なんて拷問すぎる。熱血の学校の先生かと言いたい。



「そろそろ許してよー、芽衣が部屋で1人なの」


「今日…芽衣ちゃん泊まるの?」


「どうだろ?」


「そうなんだ、、」



お姉ちゃん、もしかして…って思っているのかな。流石に隣の部屋にお姉ちゃんがいるのに先に進もうとは思わないよ。

それにさっきから、ため息つきすぎ。幸せが逃げちゃうよ。私は幸せを凍らされたけどね。



「部屋に行っていいよ…私もお風呂に入りたいし」


「やったー」


「でも、変なことしないこと!」


「分かってるよ」



足が動かない、、早く2階に行きたいのに、足が痺れてうずくまるしかなかった。

足がジンジンする、指の感覚がない。何で修学旅行から帰ってきて、こんな羽目に…。

私は痛みと足の感覚があまりないまま、必死に手すり掴まり2階まで上がった。



「芽衣ー…ただいま」


「水希…大丈夫?」


「足が痛いー…ずっと、正座をさせられた」


「ごめんね、、」



やっとベッドの上に転がれた。感覚がなかった足がジンジンと痺れてきた。痺れと痛みのせいで足を1ミリも動かせない。



「足、揉もうか?」


「大丈夫!ほっといたら治るから。それにしてもお姉ちゃん横暴すぎる」


「私達、いつも邪魔が入るね」


「本当だよ…」


「水希の誕生日は、、大丈夫だよ」


「バチが当たったのかな?お姉ちゃんとの約束を破ろうとしたから」


「そうかも」



芽衣が私の頭を撫で、私の横に寝ようとしてくる。大丈夫かな…お姉ちゃん、急に入ってこないよね?

お姉ちゃん、今は芽衣に癒されたいから少し見逃して。我慢の限界を超えたのに、また耐えているからそれぐらい多めに見てほしい。



「水希、、バスで無視してごめんね」


「あれ、かなり凹んだ」


「バイバイって言いたくなかった…本当のバイバイになりそうで怖かったの」


「ごめん、気づけなかった…」



あの時は私も心の余裕がなくて、ただ落ち込むことしかできなくて泣いちゃったけど、芽衣の気持ちを知れて良かった。

こんなにも好きなのに、いつも些細なことですれ違ってしまう。お互いに自信がないのがダメなんだろうな。



「水希の顔、好き」


「急にどうしたの…恥ずかしいよ」


「本当のことだから、、それに、思ったことは口に出すって決めたの」


「そうなんだ、、でも、恥ずかしい///」


「特に笑った顔が好きでね、本当は独り占めしたいの。誰にも見せたくない」


「普通だよー、ごんちゃんに普通の顔って言われたし」



平凡な女子高生だと、私自身が一番理解している。でも、芽衣がそんな風に言ってくれるのは嬉しい。

ただ、よく芽衣以外の人達からも笑顔が良いって言われるけど自分じゃ分からない。笑顔がいいってどんな感じなんだろう。



「世界で一番好きな顔」



好きな人に一番好きな顔って言われるのが最高の賛辞だ。

私は芽衣が世界で一番可愛いって思っている。世界一の美女より、好きな人がこの世で誰よりも輝いているし、世界一綺麗だ。

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