第98話

携帯のアラームが耳元で鳴り響く。寝ぼけた頭でアラームを止め、私の腕の中で寝ている芽衣の頭を撫でると、柔らかな髪の毛が気持ちよくてまた目を閉じそうになる。



「芽衣、起きて」


「うぅん…朝?」


「うん、朝だよ」


「眠いよー」



私の胸元で頭をグリグリする芽衣は可愛いけど少しだけ痛い。寝ぼけ顔の芽衣の頬を触ると嬉しそうに微笑むこの子は天使すぎる。

可愛すぎて、朝だけど食べてしまいたい。



「そろそろ、着替えて準備しないとご飯の時間に間に合わないから起きなきゃね」


「うん。あのね、、おはようの・・・」


「(チュ)おはよう」


「おはよう///」



良い朝だ。可愛い芽衣を見れて、おはようのチューもできて幸せだ。

さて、制服に着替えなきゃ。顔も洗わないといけないし髪のセットの時間もあるからあんまりのんびりはしていられない。



「あっ、ごんちゃん起こさないと」


「熟睡してるね」


「昨日、ごんちゃんのいびきにビックリした」


「だね、しばらく眠れなかったもん」



今日もいい天気だ。カーテンを開け、窓越しに空を見ると秋空で見てるだけで気持ちがスッキリする。

今日は色んな所に行って観光したい。嵐山の渡月橋に行きたいんだ。携帯で調べたら紅葉が綺麗で沢山写真を撮りたくなった。



「ごんーちゃん、起きろ!」


「水希、、眠いー…」


「もうすぐ朝食の時間だよ」


「起きる…けど眠い」


「先に行くよ」


「やだー、置いていかないでー!」









うわー、めちゃくちゃ綺麗!こんなにも綺麗な紅葉を見たの初めてだ。秋に京都なんて最高のタイミングだ。

京都は観光で来ている人達が多く、みんな景色や友達同士や家族で写真を撮っている。



「水希ー」


「何〜?」


(パシャ)


「水希の気の抜けた写真を撮れたー」


「ごんちゃん!いきなり撮らないで」


「いい思い出じゃん」


「可愛く撮ってよ」


「可愛い写真を撮るなら芽衣を撮る」


「ぐぬぬ、否定できない」



ごんちゃんはいつも正確なツッコミをする。毎度、心にグサっとくる言葉を言ってくるからその度に私はやっぱり平凡な人間だと改めて思える。

やっぱり私がモテるなんてあり得ない。芽衣と付き合えたことは奇跡なんだよ。



「そろそろ、次の場所に移動しようか。バスに乗らなきゃ。ごんちゃんも芽衣もいい?」


「いいよ、次は金閣寺だー」


「うん、私もいいよ。沢山写真撮れて満足。水希の写真も沢山撮れたし///」


「芽衣、足は痛くない?昨日の疲れは残ってない?」


「大丈夫だよ」


「休憩したかったら言ってね」



昨日、沢山歩いたから芽衣の脚が筋肉痛になってないか気になる。芽衣は元気そうだけどやっぱりマッサージをすれば良かった。



「水希ってさ、芽衣に優しいよねー」


「ごんちゃん、どうした…」


「昨日も思ったけどさ、芽衣に凄く優しいしモテるの少しだけ分かった気がする」


「また、私に甘い物を奢らそうとしてもダメだからね」


「失礼な、褒め言葉は素直に受け取れよー」



私が優しいのは芽衣だからで、恋人を大事にするのは当たり前のことだ。芽衣じゃないとこんなに気を使わない。

愛おしいって気持ちが私を大人にさせるし、芽衣を守りたいと思えるんだ。



「水希は世界一優しいよ」



やっば、、これは照れる///。好きな人に褒められることがやっぱり一番嬉しい。

もっともっと、芽衣を幸せにしないといけないって気持ちになる。



「あっ、そう言えばさ」


「ごんちゃん、何?」


「水希って本当に竹本さんと付き合ってないの?」


「だから、ひかるは友達だって」



何でまたひかることを言ってくるかな。それもいつも芽衣が一緒にいる時ばかり…っていつも私が芽衣といるから仕方のないことだけど勘弁して欲しい。

絶対、芽衣も嫌な気持ちになってると思う。


せめて、ごんちゃんにだけでも芽衣との交際言えたらって思うけど無理かな、、

幾ら仲良しでも関係をあんまりベラベラと話すのはよくないし、もしかしたら心の内では偏見があるかもしれない。他の人にバレたらまずいし難しい。



「ごんちゃん。次に行こうよ…」


「そう言えばさ。昨日、地主神社のおかげ明神でお参りしたけど叶うかな」


「ごんちゃん、好きな人いないって言ってなかった?」


「うん、今はいないけどいつか運命の出会いとかあるかなって」


「まずはちゃんと恋をしようよ…」


「だって、女子校じゃ無理だもん」



懐かしい言葉だ。高校入学して女子校じゃ恋なんて出来ないって嘆いていた私を見てるようだ。ごんちゃん、意外と分からないものだよ。私がそうだったし。



「そう言えば、芽衣の好きな人ってどんな人なの?やっぱりイケメン?」


「うん…カッコよくて、優しくて、笑った顔がめちゃくちゃ好き」


「おお、ベタ惚れだね〜。どんなイケメンなんだろ〜」



芽衣の言葉が嬉しくて照れてしまう。ごんちゃん、時々良い質問するね。本当に時々。



「芽衣は告白しないの〜?」


「それは…」


「ごんちゃん、金閣寺の時間なくなるよ」


「あっ、本当だ!急いで次に行かなきゃ」



冷や汗が出そうで、ごんちゃんの意識を逸らせてよかった。芽衣が困りながら、私をチラッと見るから慌てたけど何とか上手く誤魔化せた。





いつか、芽衣と周りを気にせず手を繋ぎながら外を歩きたい。まだ、この世の中は厳しい世界で昔よりは穏やかになってるけど、厳しい目を持つ人は沢山いる。


【自由があるようで、自由ではない世の中】


そんな不自由があっても人は必ず恋をする。恋をすると人は成長する。

私が芽衣に恋して、思うようになったことがある。恋は本能だ、芽衣だから恋をした。

恋は自由だ。好きな気持ちは止められない。

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